ブロックチェーンや仮想通貨が社会のなかに普及・発展していくためには、さまざまなところでいろんな人々が前向きに検討を進めて、実践していく必要がありますよね。
例えば、さまざまなスタートアップによるさまざまな技術・サービスの開発は、ブロックチェーンの社会実装に大切な役割を果たしていると思います。
こうした各企業の動きと並行して、行政や立法、あるいは各種の社会団体の動向というものも、技術の普及と発展には欠かすことができないと思っています。
今回はそうした動きのひとつとして、台湾の経済団体がブロックチェーンに関する研究所を立ち上げたというニュースを目にしたので、台湾のブロックチェーン活用事例も少し加えて、書き留めておきたいと思います。
(文中の日本語訳はざっくりとした粗訳です。参考までにとどめてご覧ください(^_^;)
・「中華民國全國商業總會」が研究所を開設⁉︎
・台湾のブロックチェーンアプリの開発状況は?
・自発的な技術開発を公的な団体がバックアップ?
台湾のニュースサイト「ETtoday新聞雲」が報じた記事によると、2018年8月2日に「中華民國全國商業總會」が「區塊鏈應用及發展研究所(ブロックチェーンアプリケーション・発展研究所」を開設したことを明らかにしたとのことです。
今回の研究所立ち上げの意味について、研究所立ち上げの共同発起人で名誉所長(榮譽所長)に着任した立法委員の余宛如さんは、以下のように述べたそうです。
區塊鏈並不等同於加密貨幣炒作,而是一種打造「信任」機制的數位技術。她相當重視區塊鏈的底層技術如何加速成熟,且在效率、隱私、擴充規模(Scale)及安全性等層面,在台灣落地應用。(ブロックチェーンは暗号通貨投機と同義ではなく、一種の「信任」アルゴリズムのデジタル技術である。彼女はブロックチェーンの基層技術がいかにスピーディに成熟するか、かつ効率性、プライバシー保護、スケール拡大、安全性などの諸点、台湾でのアプリケーション化といったことを相当重視している)
余宛如さんは、立法委員として仮想通貨・ブロックチェーンを積極的に推進してこうとしている許毓仁さんと同様に、関連の公聴会などに出席して頻繁に意見表明をされている方ですね。
また、中華民國全國商業總會は、英語では「General chamber of commerce of the Republic of China」となっていますから、日本でいう商工会議所の全国的組織のようなイメージになるでしょうか。
商業總會の理事長である賴正鎰は、今回の研究所設置について、以下のように説明しています。
未來商總將全力支持區塊鏈技術與業界自律;且將由商總帶頭,作為區塊鏈與各政府部門間溝通的橋樑,引領台灣業者應用區塊鏈技術,以提升商務發展。(将来、商業總會がブロックチェーン技術と業界の自律を全力でサポートしていく。そして、商業總會のリードによって、ブロックチェーンと各政府機関とのあいだのコミュニケーションの架け橋となり、台湾業者のアプリケーションブロックチェーン技術を引っ張ることで、商業の発展を向上させていく)
研究所設置を通じて、政官財のタッグによる諸産業へのブロックチェーン導入を推進していこうという姿勢をうかがうことができますね。
今回の研究所開設の記者会見は、「區塊鏈應用及發展研究所成立大會暨應用發表會(ブロックチェーンアプリケーション・発展研究所成立大会とアプリケーション発表会)」と名付けられています。
つまり、研究所の開設発表に加えて、台湾におけるブロックチェーンアプリの実例が、実際に開発やサービス普及を担っている企業がプレゼンテーションが組み込まれていたようです。
商業總會の公式ウェブサイトに掲載されているプログラムには、登壇企業として「綠界科技」、「京侖科技」、「沃田珈琲」、「度度客」の4社が挙げられています。
「綠界科技」は「TWDT」という台湾元との1:1ペッグのトークンを発行している「CryptoDT」を運営する企業として、以下の記事にまとめました。
また、この記事のなかで「京侖科技」が運営する仮想通貨取引所「KTrade」についても言及しました。
加えて、「沃田珈琲」についても、台湾で初めての実店舗によるICO事案として注目されていることを以下の記事にまとめました。
残る「度度客(dodoker)」は、公式ウェブサイトによれば、「區塊鏈群眾募資平台(ブロックチェーンクラウドファンディングプラットフォーム)」と説明されています。
台湾のデジタル系ニュースサイト「iThome」の記事によれば、2015年9月に試験運用を開始したのち、2016年末から公的研究機関である工業技術研究院(工研院)と提携する形でブロックチェーンの導入を進め、2017年3月からブロックチェーンへの連結を始めたということです。
ウェブサイトを見ると、社会福祉団体や教育団体を中心にプロジェクトが掲げられていて、専用ページから募金ができるようです。
しかも、台湾元だけではなくビットコインとイーサリアムでも募金可能になっているところが特色かなと思います。
目標額はプロジェクトによって50万台湾元(約180万円)という規模のものもありますが、5,000台湾元(約18,000円)というものもあり、比較的少額の、社会福祉に関わるクラウドファンディングに適したプラットフォームとなっているようです。
この「度度客」も含め、多様なブロックチェーン活用の事例が紹介されたようで、台湾のブロックチェーン・仮想通貨をめぐる可能性が示されたことがうかがえますね。
商業總會による研究所設置と台湾のブロックチェーン活用事例が同時に発表・紹介されたことには、大きな意味があるように感じました。
それは、研究所の開設が単なる「看板」にとどまるものではなく、具体的に展開されているブロックチェーン・仮想通貨関連の技術やサービスを前提に、それらをより一層後押ししていくという姿勢をはっきり示したということにあるのかな、と。
現実には僕もこれまで記事に書いてきたように、もっと多様な技術開発・事業展開がおこなわれている真っ最中ですから、こうした姿勢を持つ商業總會と研究所が果たすべき役割は大きいだろうと思います。
「政官財」「産官学」のスクラムで、方向性を共有しながら進んでいくことができれば、ブロックチェーン・仮想通貨をめぐる技術の開発と普及は速やかに進んでいくはずです。
もちろん、さまざまな議論のなかでスムーズにいかないところも多々出てくるとは思いますが、積極的な姿勢を各所の人々が崩さなければ超えていけることもあるだろうと感じます。
この記事に挙げた団体や企業の取り組みがこれからどのように展開していくのかに注目しながら、台湾でのブロックチェーン・仮想通貨をめぐる動きを引き続きコツコツと追いかけていきたいと思います!
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