(世界的な会計事務所のデロイテが入っている台北のビルは、なかなかの高層ビルでした)
ブロックチェーンが仮想通貨に応用されていることが象徴しているように、ブロックチェーンは「フィンテック」のひとつとして金融分野への導入が積極的に進められていますね。
こうした取り組みは金融機関がそれぞれ単体でおこなっていることもありますし、業界団体や官民連動で導入を進めていくこともあるようです。
今回は、台湾の金融機関や官民共同組織がブロックチェーンの導入を積極的に進めている様子が目に留まりましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・財金公司のブロックチェーンシステムの導入が進む?
・合作金庫銀行がブロックチェーンの導入を推進?
・伝統的な金融機関への導入は広がるか?
台湾の経済紙である「工商時報」が2018年12月28日に掲載した記事によると、財金公司が開発した「金融ブロックチェーン外部確認システム(金融區塊鏈函證)」の導入を、会計制度の発展を期して結成された財団法人である「会計研究発展基金会(會計研究發展基金會)」が推進していくことになったそうです。
特に、基金会は財金公司が開発したシステムの以下のような部分を積極的に推し進めていくことにしたということです。
基金会は会計士に対して「金融ブロックチェーン外部確認」の運用を積極的に推進し、特に、財金公司が開発したQRコード機能を推薦している。この技術は「スマホ支払い」の概念を応用し、スマホでQRコードを読み取るだけで、外部確認の内容や修正の有無といったことを一目で把握することができる。
(基金會並大力向會計師推廣「金融區塊鏈函證」的運用,特別推薦財金公司所研發的函證掃碼QR Code功能,該技術引用了「行動支付」概念,只要用手機一掃QR Code,包括函證內容以及有無修改,即一覽無遺。)
財金公司が進めてきた「金融ブロックチェーン外部確認システム」については、以下の記事に書き留めましたが、2018年7月から台湾の20の銀行と大手会計事務所によって試験運用が始まっていて、12月から商用化されています。
財金公司は台湾の財務行政を担っている「財政部」と金融機関が共同で創設した官民協働組織ですが、ここに会計事務所の業界団体である「会計研究発展基金会」が加わり、システムの導入を積極的に進めていくことになったということですね。
ここからどれだけ、実務的な形でブロックチェーンの活用が進んでいくかどうかが注目です。
財金公司のブロックチェーンを活用したシステムにはいくつかの金融機関が試験導入時から参画していることからもわかるとおり、台湾の金融機関はブロックチェーンの導入を着々と進めています。
そうした動きは、これまでブロックチェーンの活用をあまり積極的に公言してこなかった金融機関にも意識されているようで、少しずつ導入・活用を明言する企業も出てきています。
「工商時報」が2018年12月31日に報じた記事によると、台湾の大手金融機関である「合作金庫銀行」を有する「合庫ホールディングス(合庫金控)」が、財金公司の「金融區塊鏈函證」への参加を目指すと同時に、ブロックチェーンを活用した独自サービスの開発を進めていくということのようです。
記事によれば、合庫ホールディングスの董事長である雷仲達さんが語ったところによれば、グループ内で以下のような方針のもとでブロックチェーンの導入を進めるそうです。
合庫がネットバンクに参加していないことは合庫のフィンテックへの取り組みが遅いということを意味するわけではない。合庫はすでにモバイルバンキングやネットバンキングサービスの継続的な改善を積極的に進めており、金融ブロックチェーン外部認証のネットワークに加入するとともに、「資産転換アクセラレーター」の新技術を今まさに開発している。
(合庫不加入純網銀並不表示合庫發展Fintech的腳步較慢,合庫已在積極進行包括行動網銀、網路銀行的服務持續優化,加入金融函證區塊鏈陣容,亦正在開發「資產轉換加速器」的新技術。)
文中にある「ネットバンク(純網銀)」は、台湾の金融行政を統括する「金融監督管理委員會」がネット専用銀行の営業許可を開放したことを指していて、2018年6月に開催された第1回の公聴会では、楽天やLINEなどが参加したということで知られています。
こうした動きへの対応も含めて、合庫グループは確かにこれまで、ブロックチェーンやフィンテックの導入についてはそれほど目立った動きはなかったようです。
ただ、以下の記事で少し触れたように、国際的なブロックチェーンコンソーシアムであるR3の協力パートナーであり、フィンテックの開発を進めている「普鴻資訊」の顧客として知られています。
実は着実にフィンテックの開発を進めている、その成果のひとつとして、今回公表された「資産転換アクセラレーター(資產轉換加速器)」が位置づけられているようですね。
この「資産転換アクセラレーター」は記事によれば、顧客の資産の移動を安全かつ速やかにおこなうためのプラットフォームというイメージのサービスだということです。
今のところはグループ内の銀行・証券会社・投資会社での導入が想定されているようですが、グループ外の証券会社などにも参加を働きかけているということで、これからの展開が楽しみです。
僕の記事ではこれまでにも、台湾の金融機関がそれぞれにブロックチェーンの導入と活用を進めている動きを書き留めてきました。
金融機関によるこうした動きを、今回の記事で取り上げた財金公司のような公的機関や、金融監督管理委員會に代表される行政機関も積極的にバックアップする姿勢を見せています。
こうした形で、台湾の伝統的な金融機関へのブロックチェーンの活用はフィンテックの開発・導入の一環として、着々と進められているように感じます。
もちろん、こうした表向きな動きとは別に、ブロックチェーンの導入に慎重な金融機関も少なくはないのかもしれません。
ただ、官民挙げてブロックチェーン活用の可能性が多方面で模索されていることを考えれば、合庫ホールディングスのように一見すると動きが遅いように感じる金融機関も、今後着々と新技術の導入を進めていく、あるいはもうすでに進めている可能性もあります。
こうした金融機関の動きはブロックチェーン活用のフロントラインとして重要だと思いますので、これからもコツコツと情報を追いかけていきたいと思います!