ブロックチェーンの普及・浸透には、産官学それぞれの動きが大切になってきますよね。
ブロックチェーン産業の発展はもちろんですが、政治・行政を通じた環境整備や大学をはじめとする研究機関での基礎研究の進展も大事だなあと感じます。
台湾でも産官学それぞれの分野での動きが活発に展開されていると同時に、各分野の協働・連動の動きも積極的に進められています。
今回は、産官学のなかでも「学」の動きが目に留まりましたので、記事にしておきたいと思います。
・ブロックチェーンコミュニティを持つ大学が提携
・台湾のキープレイヤーが集結?
・さらなる大きな提携に向けて…
台湾の経済紙「經濟日報」が2019年5月31日に報じた記事によると、ブロックチェーンコミュニティを持つ台湾の大学15校が提携した「台湾ブロックチェーンアカデミア(台灣區塊鏈大學聯盟、Taiwan Blockchain Academia,、TBA)の成立が同日、公表されたそうです。
記事によれば、今回の大学連盟に加入した大学は、以下の15校です。
台湾大学、清華大学、交通大学、成功大学、政治大学、台湾科技大学、台北科技大学、台湾師範大学、彰化師範大学、淡江大学、長庚大学、輔仁大学、東呉大学、高雄科技大学、中国医薬大学
このなかには今回の大学連盟結成に合わせてブロックチェーンコミュニティが成立した大学(東呉大学)もありますが、多くの大学はすでにブロックチェーンへの積極的な関わりを展開しています。
台湾の内政・産業行政を担う国家発展委員会(國發會)の産業発展処の処長である詹方冠さんは、今回の大学連盟の目的について、以下のように述べたそうです。
ブロックチェーンの人材育成と企業とのマッチングに万全を期し、政府・産業界・学界のあいだを結んでいく。
(完善區塊鏈的人才培育和企業媒合,作為政府、業者和學界之間的連結。)
ブロックチェーンの研究開発に積極的な大学による連合体ですが、産官学を結びつけていくプラットフォームとしての役割を期待されていることがうかがえますね。
今回結成された台湾ブロックチェーンアカデミアは、公式Facebookページを開設し、今回の結成大会の様子などがアップされています。
この公式ページに掲載されている「成立宗旨」は、以下のとおりとなっています。
台湾ブロックチェーンアカデミア(TBA)は台湾のブロックチェーンの学術組織やコミュニティグループを結びつけ、明確な特性としての大学の特徴を堅持し、自主共生に基づくブロックチェーンの成長を目指す。暗号通貨からはじめて各分野の科学技術と結びつき、科学技術の精神によってその現代社会への影響とインパクトを探求し、変化の大きな文明の結晶に深く入り込み、本来の学術的な知能を発揮し、大学が宇宙に貢献するという精神を固く信じる。
(台灣區塊鏈大學聯盟(Taiwan Blockchain Academia, TBA)旨在結合台灣區塊鏈之學術組織、社團及社群,秉持大學之道在,以自主共享的區塊鏈落地成長,自密碼貨幣(Cryptocurrency)開始,鏈結各領域科技,以科際整合之精神探究其對當代社會之影響與衝擊,沉澱上善若水的文明結晶,發揮正本清源的學術智能,信守貢獻大學于宇宙的精神。)
中国語的な表現が並んでいて勉強になりますが、ブロックチェーンの発展のために、大学内部・大学間の結束を強めるとともに、外部に対する社会貢献を進めていくことが目指されているようです。
実際に、今回の結成イベントに登壇した顔ぶれを見てみると、まず、前行政院長の張善政さんや台北市長の柯文哲さんが登壇しています。
(記事の写真の左側が柯文哲さん、右側が張善政さんです)
また、大学連盟の公式Facebookページに掲載されているプログラムには、台湾初のブロックチェーンムービー「聖人大盗」を製作している徐嘉凱さん、「連続起業家」として著名で、ブロックチェーン技術を開発している「POSEIDON NETWORK」のCEOである林弘全さん、「アジアブロックチェーンアクセラレーター(ABA)」総経理の潘奕彰さんも登壇したようです。
彼らの活動については以下の記事にそれぞれ書き留めていますが、彼らは全員、台湾のブロックチェーン業界をリードするキープレイヤーです。
また、立法委員として台湾のブロックチェーン法制の整備に尽力している、民進党の余宛如さんや国民党の許毓仁さんは、今回の大学連盟の「政府顧問」に就任したそうです。
分野を超えた提携の動きというのはなかなか難しいことも多いのですが、今回の「台湾ブロックチェーンアカデミア」の結成は、まさに産官学を超えた大きな動きになっていきそうですね。
冒頭に挙げた「經濟日報」の記事には、台湾の国家発展委員会が2019年7月に「ブロックチェーン産業大連盟(區塊鏈產業大聯盟)」を結成する予定だと報じられています。
この産業界の提携について、国家発展委員会の詹方冠さんは「企業の政策意見へのアクセスルートとして、法律修正の調整の機会を提供する(將作為企業對於政策意見的溝通管道,提供法規修正的調適)」と語ったそうです。
今回の大学間の提携の動きは、ブロックチェーンをめぐる産業界と政治・行政の大きな動きにつながっていくものとして位置づけられているんですね。
台湾では暗号通貨の取り扱いをめぐる法整備が進められるなど、暗号通貨・ブロックチェーンをめぐる環境整備が活発に議論されています。
今回の「学」の動きは、ブロックチェーンをめぐるこれからの大きな動きにつながっていくかもしれません。
こうした動きにも注目しながら、台湾のブロックチェーンに関する動向をコツコツと追いかけていきたいと思います!