(台北のMRT劍潭駅は夜がキレイです。近くに有名な士林夜市があります)
「虛擬貨幣元年」を迎えているという台湾では、いろいろな特徴を持った仮想通貨取引所の開設が相次いでいます。
前回、記事にしましたように、仮想通貨の法整備が少しずつ進んでいる台湾は、これから仮想通貨取引への参入者の増加、取引所の事業拡大が見込まれる市場になっていっているのかもしれません。
そうしたなかで、今年8月に台湾や香港をはじめとする地域に開設された新たな仮想通貨取引所が注目されているというニュースを目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・仮想通貨取引所BitAssetはグローバルな取引所?
・創業者や運営グループは金融経験が豊富?
・グローバルな市場にどんどん打って出ていく?
台湾のテック系ニュースサイトの「TechNews科技新報」が2018年8月16日に掲載した記事によると、新たな仮想通貨取引所である「BitAsset」が台湾、香港、韓国、アメリカにマネージメントグループを配置し、取引所のサービス提供を始めたということです。
記事によれば、サービス開始は2018年8月10日で、開始から1週間足らずでユーザー数は20,000人、累計取引額は4億アメリカドルを超えたと報じられています。
BitAssetの公式サイトには取引額(24時間、7日、30日)がトップに掲載されていますが、2018年11月6日現在の24時間の取引額は約1,760万アメリカドルとなっています。
CoinMarketCapの出来高ランキングにはまだ掲載されていないようですが、取引規模でいうと、ビットフライヤーの100分の1ほどの規模ですね。
公式サイトによれば、取り扱い通貨は、法定通貨の台湾ドルと、ビットコイン、USDT、CNYTを中心に、以下のコインがリストに上がっています。
イーサリアム、イーサリアムクラシック、ビットコインキャッシュ、ライトコイン、DASH、NEO、OmiseGo
メジャーなコインが並んでいますが、目立つのは「CNYT」ではないでしょうか。
これについては情報が少ないのですが、中国の経済情報サイト「金色财经」の記事によれば、中国の人民元と1:1レートを維持するステーブルコインのようで、シンガポールを拠点とする仮想通貨取引所のOEXが発行しているということです。
ステーブルコインについてはいろいろな議論がありますが、こういう形で新たな取引所で上場されることで使用範囲が広がっていくのかなと感じます。
台湾のビジネス系ニュースサイト「數位時代」は、2018年11月6日にBitAssetの共同創業者である胡志龍(Robert Hu)さんのインタビュー記事を掲載しています。
記事にはまず胡志龍さんの経歴について、以下のような説明がされています。
BitAssetの共同創業者であるRobertさんは、ニューヨーク大学で学士号、コロンビア大学で修士号を取得した後、JPモルガンなどの大手金融機関で10年以上勤務し、金融投資計画の豊富な経験があります。
(BitAsset共同創辦人Robert取得紐約大學的學士學位和哥倫比亞大學的碩士學位後,在J.P. Morgan等大型金融機構服務超過10年,有豐富的金融投資規劃經驗。)
また、胡志龍さん以外の経営グループについても、以下のように語られています。
BitAssetの中心的な経営グループのメンバーはブロックチェーンの先端的な技術の専門家だけではなく、JPモルガンやバンク・オブ・アメリカなどの国際的なトップ投資銀行などの出身者もおり、専門的な金融背景を持っている。台湾で初めての金融投資を志向する仮想通貨取引プラットフォームであり、金融取引の関連規定を熟知している。
(BitAsset的核心經營團隊成員不僅有區塊鏈領先技術的專家,更有J.P. Morgan、美國銀行等國際頂尖投資銀行等出身、擁有專業金融背景,是台灣第一個以金融投資導向的虛擬通貨交易平台,熟悉金融交易的相關規定。)
BitAssetはこうした、いわゆる伝統的な金融機関のノウハウを仮想通貨取引に導入するというスタンスを強みとしていることがうかがえますね。
実際に、記事には、以下のような形で伝統的な金融の方法を仮想通貨の取引に導入しているということのようです。
BitAssetは、仮想通貨取引にプライベートバンク式の信託サービスを率先して展開し、先物取引、ETFインデックスファンド、有価証券貸付などの金融デリバティブ商品を続々と開始し、台湾がこの世界の流れに接続させている。
(BitAsset 也率先展開虛擬通貨交易中私人銀行式的理財託管服務,將陸續推出包括期貨、ETF指數基金、融資融券等金融衍生性商品,讓台灣與這股世界潮流接軌。)
こうした金融商品については、2018年11月6日現在で日本からBitAssetの公式サイトにアクセスした限りでは、該当するようなページが見当たらないのですが、トップページには確かに、「仮想通貨ETFインデックス(加密貨幣ETF指數)」や「先物取引およびデリバティブ商品(期貨及其衍生產品)」という表記が見えます。
金融的背景を持った人物が開設した仮想通貨取引所としては、台湾には「BITBITDUO(幣必多)」があります。
ただ、BitAssetのように金融的手法を基にした仮想通貨取引サービスを提供しているプラットフォームは現状、台湾では見当たらないので、この点がBitAssetのセールスポイントになっていることがうかがえます。
伝統的な金融的手法を仮想通貨取引に応用するというのは、ありそうでなかなかない取り組みのように感じるので、これを売りにする取引所がもしかしたら増えていくのかもしれませんね。
「數位時代」の記事によれば、今後、欧米諸国や日本などへ戦略的な事業展開をおこなっていくことを予定しているようです。
また、アメリカ発のブロックチェーン・DApps開発企業として世界的に有名な「ConsenSys」や、トレーディング企業の「Amber AI」、および仮想通貨取引情報を提供する「BitDATA」といった企業と提携し、仮想通貨取引の多元化を目指しているということです。
取引所でと扱われている唯一の法定通貨が台湾元であることなど、台湾の仮想通貨取引市場を中心的な拠点のひとつにしていると同時に、世界的な事業展開を着々と進めていることがわかりますね。
運営グループのメンバーの多くが、JPモルガンなどでグローバルな投資環境に身を置いてきたことも、こうした姿勢に影響しているのかもしれません。
台湾の仮想通貨取引は少しずつ環境整備が整備されてきているとはいえ、多くのバラエティ豊かな取引所が開設され、まさに「百花繚乱」という様相を呈しています。
こうした状況のなかから、どのような取引所が生き残っていくのか…台湾の仮想通貨取引の状況も踏まえて、取引所の動向もコツコツと追いかけていきたいと思います!