ブロックチェーンの導入を検討している企業にとって、技術開発やシステム移行にかかるコストは大きなハードルになっているようです。
既存のシステムに適合するような形で、技術開発からシステム構築、サービス開始までをゼロから自社のみで実現していくことは、現実的ではないと思います。
そうした企業のブロックチェーン導入をサポートするような技術・サービスの開発をおこなっている企業も世界各国で多く生まれています。
今回は、台湾で「パブリックサイドチェーン」によって、そうした事業を展開している企業の動向が目に留まったので、少し書き留めておきたいと思います。
・「TokenBacon」は近日中に新たな技術について発表予定!?
・「パブリックサイドチェーン」でブロックチェーンを結びつける!?
・TokenBaconはただのホワイトペーパーではない?
・ブロックチェーン導入のハードルを下げることの意味
台湾のビジネスニュースサイト「數位時代」の記事によると、台湾のスタートアップである「TokenBacon」は2018年7月17日にシンガポールで開催される「世界區塊鏈大會(World Blockchain Conference)」の檀上で、新たな技術について発表する予定であることを明らかにしたそうです。
その技術の内容について、TokenBaconの創業者でCEOの來智行(Michael Lai)さん(上の記事の写真の方です)は、以下のように述べたようです。
培根鏈是世界上第一個跨區塊鏈的雲服務,能免費的把網路服務與區塊鏈結合起來,協助每個企業都能打造自己的區塊鏈生態系,建立交易私有交易鍊,追蹤實體世界的資產所有權,或是發行自己的加密數位貨幣。
(ベーコンチェーンは世界で初めてのブロックチェーンを架橋したクラウドサービスで、無料でネットサービスとブロックチェーンを結びつけていくことができ、それぞれの企業がみずからのブロックチェーンエコシステムを形成し、プライベートチェーンの取引を構築し、現実世界のアセットの所有権を記録し、自ら暗号デジタル通貨を発行することを手助けする)
「跨區塊鏈的雲服務」、つまり異なるブロックチェーン同士を結びつけることを実現するクラウドサービスの提供、ということがTokenBaconの中心的な事業であるということのようですね。
このほかにも記事のなかでは、「公共側鏈(パブリックサイドチェーン)」や「API雲(APIクラウド)」という言葉が登場していました。
こうした点を見る限り、TokenBaconはブロックチェーン技術とクラウドサービスの提供を通じて、企業のブロックチェーン導入をバックアップすることを事業の中心とするスタートアップであることがうかがえますね。
TokenBaconの公式ウェブサイトを見ると、トップページには「BaconChain/跨區塊鏈雲」(クロスブロックチェーンクラウド)というキャッチコピーが掲げられています。
ちなみに、公式サイトには繁体字中国語版のほかに、英語版と日本語版(!)が用意されています。
英語版のキャッチコピーは「BaconChain/Public Sidechain + API Cloud」となっていて、日本語版のキャッチコピーは「BaconChain/ブロックチェーンのクラウドサービス」です。
事業内容を的確に示しているなと感じるのは、英語版のキャッチコピーでしょうか。日本語版のサイトは全体的に、意味がわかるようなわからないような…
ホワイトペーパーも繁体字版、英語版、日本語版に加えて、簡体字版も公開されていますが、僕の記事では繁体字版をベースに、英語版を参照しながら内容を見ていきます。
まず、ウェブサイトにはTokenBaconの事業について、以下のように説明されています。
TokenBacon提供跨區塊鏈雲服務平台,結合公共側鏈,培根鏈和API雲,提供雙向跨鏈、代幣沙盒以及多幣種錢包服務。
(TokenBaconはクロスブロックチェーンクラウドサービスプラットフォームを提供し、パブリックサイドブロックチェーン、ベーコンチェーン、APIクラウドをつないで、双方向クロスチェーン、トークンサンドボックス、多数の通貨をサポートしたウォレットサービスを提供する)
この部分、英語版ではよりシンプルに、「TokenBacon is an asset distribution platform include 3 parts: Public Sidechain, Bacon Chain, and API Cloud.」となっています。
繁体字版のほうは技術的な側面を丁寧に説明する一方で、英語版では資産流通というサービス面を押し出した説明になっていることがうかがえます。
それぞれのターゲットがどのような側面を意識しているのかが表れているようなきがしますね。
まず、「公共側鏈(パブリックサイドチェーン)」ですが、その強みについては以下のように説明されています。
TokenBacon公共側鏈的創新是多個公共區塊鏈共享一個培根鏈側鏈,所有的公共鏈和培根鏈私有鏈跨鏈交叉操作。
(TokenBaconのパブリックサイドチェーンの新しさは、多くのパブリックブロックチェーンをひとつのベーコンチェーンというサイドチェーンでシェアし、すべてのパブリックチェーンとベーコンチェーンのプライベートチェーンとのあいだで互いにコントロールすることができるということである)
サイドチェーンについては日本語でいろいろな解説が出ています。たとえば、ビットコインバーゲン店長さんのこのページの説明がわかりやすかったです。
TokenBaconのサイトには、Bitcoin、Ripple、TRON、EthereumとBaconChainが結びつけられている図が示されていました。
つまり、サイドチェーン上に構築されているBaconChainというシステムを通じて、ブロックチェーン・仮想通貨相互の双方向性が実現されるんだということですね。
また、このBaconChainは単純にブロックチェーン・仮想通貨を架橋するだけではなく、企業のアプリ開発をこのシステムと接続させることで、企業がブロックチェーン上にアプリを構築することをサポートすると同時に、そのアプリの安全性と信頼性を担保するということを実現するものであるようです。
こうしたシステムをサービスとして提供するのが、「API雲(APIクラウド)」ということになるようです。
サイト上に例示されているAPIは、「KYC API」、「Circulation API」、「Excahnge(P2P)API」、「Settlement API」の4つで、こうしたサービスについては、以下のように説明されています。
TokenBacon API的好處是巨大的。公司通過培根鏈直接獲得理想的靈活性,不需要投入大量資源來創建自己的區塊鏈協議。
(TokenBacon APIのメリットは巨大だということである。企業はベーコンチェーンを通じて理想的なフレキシビリティを直接得ることができ、大量の資源を投じて自らのブロックチェーンプロトコルを構築する必要がない)
TokenBaconの事業の軸は、クラウドサービスを利用したブロックチェーンシステムの提供という部分にあることがわかると同時に、「APIクラウド」というところに新しさがあるということのようですね。
公式サイトに掲載されているロードマップによれば、TokenBaconは2017年2月にビジネスモデルの開発とマーケット分析を開始し、2017年7月にコアとなる技術とプラットフォームの構築を果たしているようです。
台湾のニュースサイト「ETToday」に掲載された記事によれば、CEOの來智行さんはTokenBaconの現状について、以下のように語ったそうです。
TokenBacon不是單純的白皮書概念,是已經實際運作,證實可行的商業模式。為了將TokenBacon的服務推展到全世界,不排除將在2018年中開始Bacon Coin的ICO計畫。
(TokenBaconは単なるホワイトペーパーの概念ではなく、すでに実際に動いているものであり、実施が検証されているビジネスモデルです。TokenBaconのサービスをこれから全世界へと推し進めていくために、2018年のうちにBaconCoinのICO計画を始めることを否定しない)
このコメントが掲載された記事には、プロジェクトが既に実際に運用されていることについて、コアとなる技術の開発完了からわずか3か月のうちに、この技術を利用して運用するという提携を結んだ資産の総資産額は300億アメリカドルにのぼると報じられています。
また、ICOについても2018年7月26日の実施が既に予定されていて、公式ウェブサイトのトップに、ICO開始までのカウントダウンが表示されています。
台湾のブロックチェーンニュースサイト「區塊客blockcast.it」の記事によれば、2018年6月の時点で台湾以外に、日本とアメリカに事業グループを結成して活動を開始していると書かれています。
技術的な裏付けとサービスの提供を基本に、スピード感をもってグローバルな事業展開を既に始めていることが台湾メディアの注目を集めている要因のひとつだと思います。
公式ウェブサイトには具体的な提携事例が示されていないので実際のところはわかりませんが、実績のあるスタートアップとしての位置づけを獲得しつつあるといえるかもしれませんね。
(ちなみに、「區塊客」の記事ではブロックチェーン技術を使って有効期限が過ぎたポイントカードを有効活用する、ということにフォーカスされていました。
ただ。それがポイントカードの有効期限をなくすということなのか、現存する期限切れポイントカードを活用していくということなのか、イマイチわかりませんでした…トピックは興味深いように感じたのですが(^^;)
前回、記事として書き留めたスタートアップアクセラレーターのように、これから事業展開をしようというスタートアップを育成していくことは、ブロックチェーン・仮想通貨に関する技術が発展・普及していくためには、大切な動きのひとつであると思います。
同時に、既存の企業がブロックチェーンを導入していくためのハードルを出来る限り下げるために、導入サポートを行っていく技術やサービスが提供されることもまた、技術の発展・普及には大切な動きだろうと感じています。
とりわけ、ブロックチェーンの社会実装を速やかに実現していくためには、既存の社会システムと結びついて、それらをバージョンアップしていくことが重要だろうと思っています。
そうすることで、エンドユーザーが基盤技術であるブロックチェーンの存在に気づかないまま、より良いサービスを知らず知らずのうちに利用することができるという世界を実現することができるような気がします。
多くの人々が知らないあいだに新たな技術のメリットを享受して社会生活の質を挙げていくということが大切だろうと思いますし、そのためにも既存のシステムがブロックチェーンを導入するハードルを下げていく取り組みは大切だろうと思います。
これからもこうした動きに注目しながら、コツコツとブロックチェーンに関する事業展開を追いかけていきたいと思います!
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