(おつまみ的なものが食べられる屋台です。真ん中のプルンとしたのは豚の耳だったような…プルプルで美味しいですよ)
ブロックチェーンの特性を活用した業務の効率化は、さまざまな分野でその必要性が認識されて技術開発が展開されていますね。
国際送金の効率化はブロックチェーンによって大幅に改善しうる課題として取り組まれていますが、同じような課題として、貿易業務の効率化にブロックチェーンを導入する動きもいろいろと現れてきています。
台湾でも海運大手の陽明海運が中信商銀や奇美実業と提携して、貿易業務にブロックチェーンを導入する動きが出てきています。
今回は台湾の政府関連企業がシンガポールの企業と提携して、ブロックチェーンを活用した貿易業務の効率化を目指す動きが目に留まり、少し情報を探ってみると興味深いことが垣間見えたので、少し書き留めておきたいと思います。
・台湾の關貿網路とシンガポールのGeTSが提携
・GeTSのOTBって?
・中国の「一帯一路」、「デジタルシルクロード」との関係も?
・貿易業務の効率化…の向こう側
台湾の大手紙「聯合報」のウェブサイト「聯合新聞網」が報じた記事によると、2018年7月18日に台湾の「關貿網路」とシンガポールの「GeTS」が、「跨國貿易區塊鏈(国際貿易ブロックチェーン)」に関する提携に調印したということです。
調印式では關貿網路の董事長(代表取締役)である許建隆さんが臨み、今回の提携によって貿易物流が新たな段階に入ったと表明したようです。
記事には、今回の提携ではGeTSが構築した「開放式貿易區塊鏈(Open Trade Blockchain、OTB)」を活用することで、貿易に関する諸書類、たとえば原産地証明やインボイスなどのやり取りを効率的におこなうことができるとあります。
台湾の關貿網路は、公式ウェブサイトによれば、1990年に行政院内に設置された「貨物通關自動化規劃推行小組」を前身としています。
業務内容は貿易業務や税関業務の効率化・ICT化の促進が中心となっていて、1996年に民営化されて以降、現在に至るまで、行政院財政部が一定の株式を保有する半官企業だといえます。
今回の提携は、台湾政府のバックアップを受けた企業が貿易業務におけるブロックチェーンの活用を目指していくという点で、注目される動きかなあと感じます。
GeTSは公式ウェブサイトによれば、「Global e-Trade Services」の略称で、「CrimsonLogic」の子会社であり、企業グループの主要な成長エンジンと位置づけられています。
親会社である「CrimsonLogic」は、公式ウェブサイトには以下のように企業理念が掲げられています。
We help governments design and run innovative & sustainable services to collaborate more seamlessly with their citizens and ecosystem.
(私たちは、政府が市民やエコシステムとよりシームレスにコラボレートするために、イノベーティブで持続可能なサービスをデザインし、実行するのを支援します)
いわゆる「電子政府」の実現を支える技術を提供している企業として、シンガポールに創業して30年の実績が全面に掲げられています。
そうした企業のもとで、GeTSは特に国際貿易の効率化に向けたさまざまなソリューションを提供しているということのようです。
今回のOTBは、GeTSの主要なソリューションの一環として構築・提供されたプラットフォームであるといえます。
今回のニュースだけを見ると、シンプルな企業間の提携のように見えますが、政府機関とのかかわりが強い企業同士の提携の向こうに、各地域の「電子政府」実現に向けた動きのなかで、ブロックチェーンが活用されようとしている動きと位置づけることもできそうですね。
実はこのプラットフォームについては既に、「VentureTimes」で下記のとおり日本語で読める記事になっていますので、アウトラインはこちらから理解できると思います。
また、今回の台湾の關貿網路との提携についてはGeTSからプレスリリースが出されています。
このプレスリリースには、今回のOTBについて、以下のようなビジョンが示されています。
Open Trade Blockchain is also the region’s first crossborder blockchain platform that is aligned with China’s Belt Road Initiative (BRI) and the Southern Transport Corridor.
(OTBはまた、中国の一帯一路イニシアティブや南方輸送回廊と提携する、地域内で初めてのクロスボーダーブロックチェーンプラットフォームである)
中国が提示する経済圏を明確に視野に入れたプロジェクトであることがわかりますが、そのことを示すように、プレスリリースには今回の提携先として、以下の企業が挙げられています。
China-ASEAN Information Harbor Co.(中国)
Suzhou Cross-E-commerce Co. Ltd.(中国、「Suzhou」は「蘇州」)
Commodities Intelligence Centre(シンガポール企業ですが、親会社は中国・武漢)
Korea Trade Network(韓国)
PT-EDI Indonesia(インドネシア)
TIFFA EDI Services Company Limited(タイ)
Trade-Van Information Services Co.(關貿網路)
提携先は中国企業を中心に、東南アジア諸国へと広がっていることがわかります。
中国が提案している「一帯一路イニシアティブ」や「デジタルシルクロード」が、実際に多様な企業の事業展開に関連付けられながら、その内実を獲得している様子が垣間見えますね。
はじめに挙げた陽明海運による貿易業務へのブロックチェーンの活用は、膨大な事務作業を効率化させるためのひとつの解決策として技術開発がおこなわれています。
今回のGeTSによるプラットフォーム構築と、台湾の關貿網路などとの提携は、そうした解決策の具体的な動きとして注目が集まっていると思います。
ただ、このプラットフォーム構築が注目されているのは、そうした具体的なソリューションであるということだけにとどまらないように感じます。
それはたとえば、關貿網路を含め、今回のプラットフォームの提携企業の多くは行政機関とのかかわりがうかがえる、ということであったり、
あるいは、中国が提示する「一帯一路イニシアティブ」や「デジタルシルクロード」とのかかわりを視野に入れたプロジェクトでもあるというところに、注目される大きな要因があるように思います。
ブロックチェーンが解決する直接的な課題は「貿易業務の効率化」ですが、その先に見据えられているのは、グローバルにつながる経済圏の構築だということがうかがえます。
ブロックチェーンが具体的にどのようなサービスへと発展していくのかというところと合わせて、ブロックチェーンの活用によって構築される世界がどのようなものか…
こうしたところにも注目をして、これからも動きを追っていきたいと思います!
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