(台湾大学の「ヤシの実ロード(椰林大道)」。台湾は南国だなぁと再確認する景色です)
台湾では、銀行をはじめとする金融機関で、「フィンテック(金融科技)」のひとつとしてブロックチェーンの導入や活用が着々と進められています。
僕の記事でも最近、大手銀行の合作金庫銀行によるブロックチェーンの導入や、フィンテック導入を推進している官民協働組織である財金公司によるブロックチェーンを活用したシステムの開発について記事にしました。
あまり同じようなテーマの話が続くのもどうかな…と思いましたが、「銀行×ブロックチェーン」で気になるニュースを目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・第一銀行がブロックチェーン関連の特許を取得予定⁉︎
・「Bank4.0」って、なに?
・特許獲得競争は激しさを増すのでしょうか?
台湾の中央報道機関である「中央通訊社」のニュースサイトに2019年1月9日に掲載された記事によると、台湾の大手銀行である「第一銀行(First Bank)」が近々、ブロックチェーンのトランザクションスピードを高める技術の特許を取得予定だということです。
中央通訊社の記事の表現では、以下のように報じられています。
第一銀行は近々、ブロックチェーントランザクションスピードを加速しうる特許を取得するが、これは世界で初めて「クロスチェーンマッチング」を進めうるブロックチェーンのイノベーティブな特許である。
(第一銀行近期取得可加速區塊鏈交易速度的發明專利,是全球首創能進行「跨鏈整合」的區塊鏈創新專利。)
同様の情報は台湾の経済紙「工商時報」や経済系ニュースサイト「鉅亨網」にも掲載されています。
ただ、残念なことに、具体的にどのような形でトランザクションスピードを上げるのかということについては、詳細な記述が見られません。
中央通訊社の記事によれば、上に引用した文中にある「クロスチェーンマッチング(跨鏈整合)」ということに関して、ブロックチェーンの規格の多様さからクロスチェーントランザクションの実現が難しい状況にあるという課題に対して、解決策を提示するような技術であるということが報じられています。
こうした技術を基にして、第一銀行は以下のようなシステムの実現を目指しているようです。
これからの金融界は「マルチノード、マルチセンター、クロスチェーンコラボ」による地域的な金融機関の提携によって成立し、「金融サービスはいつもあなたのそばに」といったBank4.0モデルを実現する。今回のブロックチェーン特許の取得は、第一銀行に将来的なデジタル金融シーンにおいて大きな基礎インフラとなるだろう。
(未來金融世界將由「多節點、多元中心、跨鏈協作」的場域金融所組合而成,成為「金融服務常在身邊」的Bank4.0模式,這次區塊鏈發明專利的取得,將成為一銀佈局未來數位金融願景的重大基礎建設。)
今回の特許の具体的な内容はまだよくわかりませんが、大きなビジョンが語られている様子から、金融業務に大きく活かすことができるような技術であることがうかがえますね。
ここで語られている「Bank4.0」という表現、台湾のフィンテック関連のニュースを見ていると時折目にするのですが、金融分野では当たり前の概念なのでしょうか?
このあたり不勉強だったので、少しネット上のニュースを見ていると、台湾の経済紙「工商時報」のニュースサイトに掲載されていた以下の記事が参考になりました。
この記事によると…
Bank2.0:電信送金やATMサービスの実現によって、「銀行」という特定の場所でしか金融サービスを受けることができないという制限を解消した
Bank3.0:伝統的な銀行がネットバンキングサービスを提供することによって、銀行に行かなくても、パソコンやスマホであらゆる金融サービスを活用できる環境を実現した
という段階を経て、
Bank4.0:「AI、IoT、ブロックチェーンなどの新たな技術や機能(人工智慧AI、物聯網IoT以及區塊鏈等全新科技功能)」によって、まったく新しいユーザーエクスペリエンスが実現され、人々が伝統的な銀行サービスを放棄する段階に至る
ということを指しているようです。
上の記事にあった「金融サービスはいつもあなたのそばに(金融服務常在身邊)」というフレーズは、Bank4.0によって実現されるまったく新しいユーザーエクスペリエンスのことを示しているといえます。
今回、第一銀行が取得したという特許の内容が、どのような形でBank4.0を実現するものであるのか、楽しみが増しますね。
第一銀行による特許取得のニュースが注目されているのは、ブロックチェーンに対する注目度が高まっていることを示していると同時に、こうした技術が商用に向けて大きく動き出していることをうかがわせるものだろうと思います。
また、台湾の特許システムのなかでブロックチェーンに関する技術やシステムが特許を取得したということになれば、今後、同様の特許出願が増えるのかもしれないなという感じもします。
ブロックチェーンに関する特許は、以下のコインテレグラフ日本語版の記事でも触れられていますように、世界的にも競争が生じているフィールドでもあるようです。
台湾でも行政機関のバックアップも受けながら、様々な企業やスタートアップが技術やサービスの開発を進めています。
台湾内外のこうした動きから、台湾でも特許取得に関する競争が激しくなっていくのか、第一銀行の特許取得はその口火を着ることになるのか…
こうした点にも注目しながら、これからの動きをコツコツと追いかけていきたいと思います!