(ヴォエのある風景in 台湾。なお、文中にヴォエは出てきません。念のため(^_^;)
ブロックチェーンの技術的な特性を活かして、さまざまな業界を活性化させていこうという動きは、世界中で展開されていますね。
そうした動きは銀行・証券・保険など、金融分野への応用が主ですけれど、そのほかにも、たとえばエンターテインメント業界にブロックチェーンを導入しようという動きも見られます。
ALISの記事でも、NAOTTAさんがアメリカのSF映画業界から生まれた「Cellarius」というプロジェクトについて紹介されていました。
さすがハリウッド!という雰囲気ですけれど、映画製作が盛んにおこなわれている台湾でも、映画産業の問題を解決するためにブロックチェーンを活用しようという動きが現れているようです。
知る人ぞ知る香港映画の有名人も関わっているというこのプロジェクトについて、少し書き留めておきたいと思います。
(文中の日本語訳はざっくりとした粗訳です。参考までに留めてご覧ください(^_^;)
・ブロックチェーンが映画産業に革命を起こす?
・「SELF TOKEN」の発行?
・若い映画人が映画産業を変えるためには、有名人とコミュニティ?
台湾のビジネスニュースサイト「數位時代」は、2018年8月6日付で「用區塊鏈革命電影產業,徐嘉凱透過虛擬貨幣邀請觀眾加入劇情(ブロックチェーンで映画産業に革命を起こす、徐嘉凱は仮想通貨で観衆にストーリーへの参加を呼びかけていますよ)」というタイトルの記事を掲載しました。
(この記事の写真の男性が、徐嘉凱さんです)
徐嘉凱さんはSELFPICK PRODUCTIONという映画制作会社の創設者であり、映画監督として、主にネットムービーを製作・公開していると紹介されています。
とりわけ、これから公開される予定の、徐嘉凱さんがシナリオを書いた「聖人大盜」という映画が、ブロックチェーンをテーマに取り入れた映画として注目されているようです。
ですが、徐嘉凱さん・SELFPICKとブロックチェーンとのつながりは、ただ単に映画のテーマにブロックチェーンを選んだというだけでは、もちろんありません。
徐嘉凱さんは、以下に挙げたような台湾の映画産業が抱える2つの課題を、ブロックチェーンによって解決することができると考えているようです。
從電影製作方來說,目前要拍國片的唯一方法,是先拿到政府輔導金,才有較高機會獲得銀行和投資人的投資,已經變成名符其實的「輔導金產業」;另一個問題是,台灣電影產業很多票房不公開透明,利潤無法回饋到產業本身。(映画の製作者の立場から言えば、目下のところ台湾映画を撮るための唯一の方法は、まず政府の補助金を受けること。そうすると銀行や投資家からの投資を獲得するチャンスが比較的高くなるので、映画産業は名実ともに「補助金産業」となっています。そして、もうひとつの問題は、台湾の映画産業の興行会社の多くがオープンでも透明性を持っているでもなく、利益を業界そのものに還元できていないということです)
具体的には、「電影票代幣化(映画チケットのトークン化)」から始めて、映画産業にかかわるさまざまな事業展開に、観衆がトークンを介して参加できるようなエコシステムをイメージしているそうです。
その具体的な事例として徐嘉凱さんが挙げているのが、ディズニー映画の事業展開です。
ディズニーは映画を観客が見にいくだけではなく、ディズニーランドやグッズ販売などを通じて、トータルとして映画産業が支えられている…
徐嘉凱さんはこうしたビジネスモデルを「沈浸式娛樂」(没入型エンターテインメント)と呼び、これをブロックチェーン・仮想通貨を活用することによって実現するというビジョンを語っています。
徐嘉凱さん・SELFPICKはこうしたビジョンを実現するため、実際に「SELF TOKEN」の発行を目指しているようです。
SELF TOKENの専用ウェブサイトには、「鏈接虛擬與現實的沈浸式娛樂(バーチャルとリアルを結ぶ没入型エンターテインメント)」というキャッチコピーがメインページに掲げられています。
このトークンによって何ができるか…ということについては、まず、「聖人大盗」というこれから公開予定の映画との連携で、以下の点が注目されます。
透過以太坊智能合約所創建的代幣,同時也是開啟「沉浸式娛樂」體驗的關鍵鑰匙,將在電影《聖人大盜》與現實世界同步發行,邀請群眾跟我們共同創造一個打破現實、虛擬疆界的新世界。
(イーサリアムのスマートコントラクトを通じて発行されたトークンは、同時に「没入型エンターテインメント」の体験へとつながる鍵でもある。トークンは、映画「聖人大盗」と現実世界で同時に発行されるようになり、観衆がわたしたちとともに現実を打ち破り、バーチャル空間の新世界へと誘われていく)
映画のストーリーのなかで発行されたトークンが、そのままリアルでも発行されるということは、その使い道もリンクするような形で提示されるのでしょうか…
この点については、以下のような計画が参考になるかもしれません。
除了將支持 100 SELF = 1 張台灣、香港可流通之電影票外,我們將以食、衣、住、行、育、樂六大面向簽訂知名的合作品牌,並設立由 SELFPICK、SELF TOKEN 所共同控股之沉浸式娛樂場域,預計將在2020年拓展經營五間不同性質之場域,包含但並不限於酒吧、咖啡廳、共同工作空間、民宿、複合性商場。
(100SELF=台湾・香港で発行される映画チケット1枚ということをサポートする以外に、わたしたちは食・衣・住・行・育・楽の6分野で著名な協力ブランドと提携し、SELFPICK・SELF TOKENが共同で管理する没入型エンターテインメント施設を設立し、2020年にはバー、カフェ、共同作業空間、民宿、ショッピングモールなど、5つの異なる領域を開拓していく予定である)
つまり、まさにディズニー映画が実現しているように、映画の世界で描かれる空間をリアルの世界で再現し、映画とリアルをつないでいく…そうした経験を担保するものとしてSELF TOKENが位置づけられているようですね。
SELF TOKENのサイトには、メールアドレスを登録することで取得できるホワイトペーパーが公開されています。
(アドレス登録が必要なので、リンクは貼りません。興味のある方はご自身の責任のもとで、上に挙げたサイトにアクセスしてください)
ホワイトペーパーによれば、トークンについてはERC20とERC223ベースで発行され、発行総量は10億枚、発行の第一段階として2018年8月から9月にかけて9千万枚をプライベートセールにて発行する予定で、レート1ETH=6,000SELF(ただし、1ETH=15,000台湾元として、1SELF=2.5台湾元を目安とする)となっています。
ブロックチェーンの基礎的な技術は、香港のTuring Chainが提供しているとなっています。
Turing Chainがどういった企業なのか、いまいち情報が出てきませんが、以下のページによると2018年5月に創設されたスタートアップであるようです。
ホワイトペーパーには、提携企業として著名な映画館だけではなく、有名な外食産業の名前も複数挙げられていますので、先に触れた「没入型エンターテインメント」の実現に向けた提携が着々とおこなわれているように感じました。
SELFPICKのこうした取り組みが注目された要因として、もちろんプロジェクトの先進性や、ブロックチェーンへの注目が集まっていること、映画作品が多くの人の目に届いていることなどを挙げることができますが…
もうひとつ、著名な俳優との連携が実現したことも大切な要素だと思います。
それは、上に挙げた「聖人大盗」のメガホンを執ったのが、香港映画好きなら知らない人はいない香港の名優、曾志偉(Eric Tsang)さんだということです。
台湾のオピニオン雑誌「遠見雑誌」のウェブサイト「遠見」に掲載された記事によれば、徐嘉凱さんは曾志偉さんを口説き落とすのに1年かかったそうです。
香港のベテラン俳優が若い映画人に口説き落とされるというエピソードは、このプロジェクトを単なる若者の「夢」では片付けられない重みを与えていると思います。
また、SELFPICKが映画を通じて、製作者と観衆との経験の共有を挙げていることも注目される要因のひとつかもしれません。
このあたりは、トークン発行によって観衆を、SELFPICKのコミュニティの一員に誘っていく(まさに「没入」させていく)という志向が垣間見えるように思います。
こうした取り組みが本当に台湾の映画産業のありかたを変えていくのか…ICOの実施によって続報も出てくるはずですので、これからもコツコツと追いかけていきたいと思います!
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