「2018 Asia Blockchain Summit」Part2：「政府」がどう動くのか…BinanceのCZが台湾に期待すること

台湾・台北で2018年7月2日・3日に開催された、「2018 Asia Blockchain Summit（亞洲區塊鏈高峰會）」には、ブロックチェーン・仮想通貨に関する「産官学」のステークホルダーが多数登壇しました。

そのなかには、世界的な仮想通貨取引所であるBinanceを創業した趙長鵬さん（Chanpeng Zhao、CZ）も含まれています！

ここでは、趙長鵬さんが語った台湾のブロックチェーン・仮想通貨への視点に加えて、その視点の中で重要な要素として触れられていた「政府」の役割に関するパネルディスカッションについて、ポイントを絞って書き留めておきたいと思います。

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もくじ

・本題に入る前に…

・趙長鵬さんは台湾をどのように見ているか？

・台湾の行政官もブロックチェーンの発展に前向き!?

・産業育成のための環境整備を！

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本題に入る前に…

「2018 Asia Blockchain Summit」の公式ウェブサイトはこちらです。（英語）

また、Part1の記事に、サミットに関する情報ソースなどをまとめています。合わせてご覧いただければ、会場の雰囲気をイメージしやすいかなと思います。

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趙長鵬さんは台湾をどのように見ているか？

台湾の経済紙「經濟日報」が報じた記事によると、7月2日の午前に登壇したBinance（幣安）の創業者・CEOの趙長鵬さんは、冒頭、台湾は仮想通貨への警戒感からブロックチェーンに対する議論を始めるのがやや遅かったことを指摘したそうです。

ただ、台湾にはブロックチェーンをリードしていくための「強み」がいくつもあると説明されたようです。

たとえば、台湾は良質なマイニング機器を生み出しているし、著名なケータイ・スマホブランド・メーカーが多く存在していることもあり、スマホウォレットの開発に強みを発揮することができるといった点が挙げられています。

このあたりは、台湾がこれまでに世界の情報機器製造を担ってきた経験と実績への素直な信頼感が感じられます。

また、ITビジネス系ニュースサイト「數位時代」の記事によれば、台湾には「小島」としての強みがあると述べていたようです。

「小島」としての強みとは、たとえばみんながお互いに知り合いであることで、詐欺や悪事が起こりにくいこと、さらには「小島」だからこそ何かを改めていくスピードが速いということが指摘されていたようです。

こうした利点を活かして、実際にブロックチェーン関連企業と政府機関との意思疎通も多様に行われていると趙長鵬さんは見ているようです。

その具体的な例として、先日立法院で開催された「ブロックチェーン×金融」に関する公聴会の開催や、許毓仁さんたちが中心になって結成が呼びかけられたブロックチェーン業界のSRO（業界自主組織）が挙げられていました。

（公聴会の開催とSROの結成については、それぞれ以下の記事に書きました）

仮想通貨の取引所を運営してきた立場から、政府との対話の重要性、協働の必要性を強く認識しているという印象を持ちました。

実際に、「Knowing新聞」のサイトに掲載された記事のなかでも、ブロックチェーンの発展における「政府」の役割に趙長鵬さんが言及していた点がクローズアップされています。

具体的には、「台灣的主管機關十分開放，像是金管會也採取開放態度，能讓彼此間容易交流互動（台湾の所管機関は十分に開放的であって、たとえば金融監督管理委員会は開放的な態度を採っていて、相互交流しやすい形になっている）」と指摘したようです。

このあたりは、許毓仁さんをはじめとする立法委員や、次に述べる行政官などの存在を意識した発言ということも言えますが、自らの経営的観点から、政府・行政機関をブロックチェーン発展のための重要なステークホルダーであると認識しているように感じました。

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台湾の行政官もブロックチェーンの発展に前向き!?

趙長鵬さんに重要な役割を果たすだろうと指摘された台湾の政府・行政機関からは、経済部、科技部、金融監督管理委員会（金管會）、国家発展委員会（國發會）といったブロックチェーン・仮想通貨産業に関連する行政機関の要職に就いている人々が参加・登壇していたようです。

「Asia Blockchain Summit」と銘打たれているとはいえ、政府主催ではないイベントに行政機関の主要メンバーが勢ぞろいしたというのは、それだけで政府の人々のブロックチェーンへの「本気度」をうかがうことができますね。

なかでも、國發會のトップである主任委員の陳美伶さんの発言は、台湾のブロックチェーン・仮想通貨に対する政府の見方として重要だと感じました。

ブロックチェーンをめぐっては、以下の4つの課題があると指摘されたようです。（以下、中央通訊社の記事の内容を要約したうえで、日本語訳しました）

1.各種産業のブロックチェーンへの参入を促し、ブロックチェーンのスタートアップを育てていくために、政府は積極的にサポートしていく。そのためには財政的な支援やスタートアップへの投資環境の整備に加えて、オープンデータを実現しうる環境を整えていく

2.管理監督に関する法整備を進めていく。それは原則として、ブロックチェーン産業の自主精神と起業家精神を大いに発揮できるような環境を整備する方向で考えていく。

3.国際的な個人資料保護の動きに連結していく。とりわけ、EUで締結された「GDPR（General Data Protection Regulation）」を意識し、國發會のなかに個人資料保護に関する専門事務室を設置し、ブロックチェーンとGDPRとのあいだに生じる問題点を整理し、解決の方途を探る。

4.ブロックチェーンをパブリックガバナンス（公共治理）に導入していく。この点についても欧米諸国の取り組みを参考にするため、たとえば台北で「台歐盟數位經濟論壇（台湾・ヨーロッパデジタルエコノミーフォーラム）」を政府主催で開催する方法を模索するなど、取り組みを進めていく。

産業育成、法整備、国際的な動向を意識したブロックチェーンの多様な発展方法の模索といった形で、政府としても積極的かつ適切な形でブロックチェーン・仮想通貨産業を発展させていこうという意図を感じることができます。

そのほか、先に挙げた「數位時代」の記事では、金管會のトップである顧立雄さんもブロックチェーン技術への金融機関の積極的なかかわりを呼びかけており、行政機関が足並みをそろえる形でブロックチェーンの健全な発展を目指そうとしていることが伝わってきますね。

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産業育成のための環境整備を！

記事をまとめてみると、仮想通貨取引所を経営する立場にある趙長鵬さんから発せられた、「政府」の役割に対する注目とある種の「期待」に応えるように、台湾の行政官たちは台湾における産業育成の環境整備を進めていく…と宣言したように見えました。

もちろん、こうした見方は僕の「妄想」に近い見方ではありますけれど、両者の意見が直接的に影響した・つながったということではなく、同じ空間で語られたことによって、ある種の「共鳴」もしくは「共振」をしていたのではないのかな…と想像します。

同じ空間で、ひとつのテーマをめぐって、異なる立場から発せられた多様な意見や見解は、同じ空間に参加していた共通の課題を持った人々のあいだに、きっとそれぞれの形で「響いた」のではないかと感じます。

世界的な仮想通貨取引所運営業者と台湾の行政機関の人々が、ある種のつながりをもって発言し、議論されたことは、きっとこれからさまざまな形で実現されていくことなのだろうと思います。

ここでの提言や議論を頭に置いたうえで、これからの台湾における法整備や、Binanceの動きに注目していきたいと思います！

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