2019年の後半は、中国のブロックチェーンに対する動きがにわかに注目を集めましたね。
以下の記事で触れていますが、2019年10月に全人代の常務委員会を通過した「暗号法(密码法)」が2020年1月1日の施行を控えていたり、中央銀行による「デジタル貨幣」の発行が取り沙汰されたりと、2020年の動きが楽しみですね。
この年末も、これらの動きと連動するような動向が現れてきているようですので、少し記事として書き留めておきたいと思います。
・深圳証券取引所がブロックチェーンインデックスを上場
・新たなインデックス上場の意図は?
・これからの展望は?
台湾の大衆紙「旺報」のニュースサイトに2019年12月25日に掲載された記事によると、中国の三大証券取引所のひとつである「深圳証券取引所(深圳证券交易所)」が、「ブロックチェーン50インデックス(区块链50指数)」の取引を2019年12月24日から開始したということです。
これについては、深圳証券取引所の公式サイトにもリリースが出されています。
(リリースへのリンクはこちら。)
このリリースによると、インデックスの内容は以下のとおりとなっています。
深圳証券取引所ブロックチェーン50インデックスは取引所に上場している企業のうち、業務内容がブロックチェーン産業の上流・中流・下流にかかわる企業を選び出し、直近の半年間の1日平均時価総額を高い順に並べ、上位50位の株式によって本商品を構成している。
(深证区块链50指数以深交所上市公司中,业务领域涉及区块链产业上中下游的公司为选样空间,按近半年日均总市值从高到低排序,筛选排名前50名的股票构成样本股。)
以下のページにまとめられていますように、深圳証券取引所ではさまざまなインデックスを取り扱っており、今回のブロックチェーン50インデックスは「テーマインデックス(主题指数)」のひとつとして新たに設けられたということのようです。
また、以下のページにはこのインデックスの詳しい構成内容などが公表されています。
この記事を書いている2019年12月30日現在で、インデックスを構成している株式の上位10銘柄は、以下のとおりとなっています。
平安銀行(平安银行)、東方財富(东方财富)、美的集団(美的集团)、順豊控股(顺丰控股)、蘇寧易購(苏宁易购)、同花順(同花顺)、光環新網(光环新网)、東華軟件(东华软件)、華宇軟件(华宇软件)、偉士通(卫士通)
このうち、トップに名前が挙がっている平安銀行については、以下の記事でも触れたようにグループ全体でブロックチェーンの技術開発と提供を幅広く展開している企業として知られています。
また、以下の記事にまとめたように、中国銀行業協会によるブロックチェーンを活用した銀行間取引プラットフォームの構築にも関わっています。
上位10銘柄のうち、同花順以下の銘柄はすべて技術開発に直接関わる企業が並んでいますが、平安銀行をはじめとする金融機関のほか、「SUNING」で知られる蘇寧易購のような小売大手も組み込まれていて、上記の構成内容のとおり、幅広い企業が組み込まれていることがわかりますね。
2019年末のタイミングで、ブロックチェーン関連企業によるインデックスを上場した意図はどのようなものでしょうか?
冒頭に挙げた「旺報」の記事には、中国の情報行政を担う「国家信息中心(SIC,The State Information Center)」の「中国経済網管理センター(中經網管理中心)」の副主任である朱幼平さんのコメントが、以下のとおり掲載されています。
ブロックチェーン50インデックスはモデルケースとしての役割を持っている。ブロックチェーンは実体経済を強化し、デジタル化の転換を加速し、工業時代の成長モデルからデジタル時代の拡大モデルへの転換を実現し、新たな経済拡大の道を開く。大きな意義があることは疑いなく、新たな経済拡大とデジタル化への転換に有利なテーマインデックスである。
(區塊鏈50指數有指示燈作用。區塊鏈賦能實體經濟,對加速數位化轉型,實現工業時代成長模式轉換為數位時代增長模式,開啟新的經濟增長,無疑有重大意義,將有利新經濟增長和數位化轉型概念股。)
このコメントからは、中国のこれからの経済成長におけるブロックチェーンの位置づけがうかがい知れますね。
また、同じ記事には証券アナリストのコメントとして、朱幼平さんのコメントを補強するような以下の内容も掲載されています。
今のところ、ブロックチェーンはゲーム、医療、IoT、物流、身分証明などの分野ですでに多くの試験的な活用事例が出てきている。2020年にはブロックチェーンの応用が集中的に展開される一年になるはずであり、コンソーシアム型ブロックチェーンはその中心的な方法になるだろう。
(目前區塊鏈在遊戲、醫療、物聯網、物流、身分認證等領域都已經出現了許多試驗性質的應用案例,預計2020年將成為區塊鏈應用集中落地的一年,聯盟鏈將是主要落地方式。)
以下の阿悉さんの記事で触れられていますように、中国で活用されるブロックチェーンとしてはコンソーシアム型が適合的ではないかという意見があります。
上記のアナリストのコメントは、こうした観測を裏付ける見方だと言えそうですね。
同時に、中国でここ半年のうちに集中的に展開されているブロックチェーンへの国際的な発信は、2020年に入ってからの本格的な活用を想定しているようにも思えます。
今回上場されたブロックチェーン50インデックスは、こうした動きを先取りするものとして注目されますね。
冒頭に挙げた「旺報」の記事によれば、中国では2019年12月現在で15,000を超えるブロックチェーン関連企業があると触れられています。
このうち、2019年に生まれた企業が6,000超ということで、中国におけるブロックチェーン業界の急速な発展を垣間見ることができます。
政治的なブロックチェーン産業振興の動きと、急激な市場の拡大のなかで、今回上場された新たなインデックスがどのような展開になっていくか…
中国だけではなく世界的な展開も含めて、2020年もコツコツと情報を追いかけていきたいと思います!