(台北駅の地下にある「台北地下街」。ある一角はアニメやゲームのショップが集まる「オタクの聖地」になっています)
ブロックチェーンに関する技術やサービスの開発に、スタートアップの成長は欠かすことができませんね。
スタートアップの育成には台湾の行政も関心を寄せていて、たとえば新北市は「ブロックチェーン特区」の開設を目指した「ブロックチェーン推進室」を設置し、ブロックチェーンスタートアップのバックアップを始めています。
また、スタートアップの育成プログラムであるアクセラレーターの動きも世界中で活発になっていますね。
台湾ではAppWorksが、2010年からスタートアップ支援を活発に展開していて、ブロックチェーン関連の企業も生まれています。
今回は、台湾で初めての「ブロックチェーンアクセラレーター」が創設されたというニュースを目にしましたので、書き留めておきたいと思います。
・台湾初の「ブロックチェーンアクセラレーター」がスタート
・取引所やファンドとエコシステムの構築を目指す⁉︎
・事業展開は台湾から世界へ?
台湾のビジネスニュースサイト「數位時代」が2018年10月25日に掲載した記事によると、台湾で初めてのブロックチェーンスタートアップ専門のアクセラレーター(加速器)として「Asia Blockchain Accelerator(ABA)」が開設されたそうです。
ABAのCEOである潘奕彰さんによると、以下のようなサービスを提供する場としてABAは開設されたと説明されています。
ABA可提供企業加速、投資基金、行銷資源、商業模式輔導等一條龍服務,希望在台打造區塊鏈生態系,加快區塊鏈產業化。
(ABAは企業向けアクセラレーター、投資資金、マーケティングリソース、ビジネスモデルガイダンスなどのワンストップサービスを提供し、台湾にブロックチェーンエコシステムを構築し、ブロックチェーンの産業化を加速したい)
記事によれば、ABAによるアクセラレータープログラムは、1グループあたり3か月から6か月で実施され、すでに韓国、オーストラリア、台湾から5つのグループが加入しているということです。
また、プログラムの講師として、デジタルコンテンツへの投げ銭サービス「GIFTO」の創業者である田行智さん、台湾の著名な掲示板サイト「無名小站」、クラウドファンディングプラットフォーム「FlyingV」、ブロックチェーン開発を進める「BiiLabs」などを創業した林弘全さん、「台灣天使投資協會」秘書長(事務局長)の蘇拾忠さんの名前が挙げられています。
このうち、GIFTOとBiiLabsについては、以下の記事に書き留めています。
ABAのCEOである潘奕彰さんも、世界的な会計事務所である「KPMG」(の台湾法人?)のスタートアップサポート部門でCOO(營運長)を務めていた人物ということで、台湾のスタートアップ・ブロックチェーンに関わりを持つキーパーソンが集まっている点で注目されていることがうかがえますね。
また、ABAはアクセラレータープログラムによるブロックチェーンスタートアップの育成を有効に展開するために、取引所やファンドと提携することで、ブロックチェーン産業育成のエコシステム(生態系)構築を目指していくそうです。
具体的には、2018年末から2019年度第一四半期を目処に、台湾の仮想通貨取引所である「ACE Exchange」と、ブロックチェーン・仮想通貨専門ファンドの「ACE Blockchain Fund(ABF)」との提携によって、「完整生態系(完全なエコシステム)」の構築を目指すようです。
潘奕彰さんの説明によれば、具体的には以下のようなイメージを考えているということです。
如果加速器中有適合的項目,他們也會透過基金投資,並協助上架交易所,「帶動區塊鏈產業正向循環」。
(もしアクセラレーターで適切なプログラムがあれば、ファンドからの投資を受けたり、取引所への上場サポートを受けることで、「ブロックチェーン産業にプラスのサイクルを生み出す」)
上のほうで引用したように、ABAが目指すブロックチェーンスタートアップ育成のためのワンストップサービスを、ファンドと取引所という具体的な資金調達の場を設定することで、より現実的な支援を実現していこうと考えられていることがわかりますね。
なお、ACE Exchangeの公式ウェブサイトを見ると、ABAのCEOである潘奕彰さんはACEの「總經理(統括責任者)」ですし、アドバイザーにはABAの講師として名前が挙がっている田行智さん、林弘全さん、蘇拾忠さんが名を連ねています。
ABAの創設は、こうした企業グループによる中心的事業としてブロックチェーンスタートアップの育成を進めていくための拠点づくりであることがわかりますね。
「數位時代」の記事には、ABAのこれからの目標として、毎年10以上のスタートアップを育成して送り出し、2年で100億台湾ドル(約370億円)の経済価値を生み出すようにしていきたいと書かれています。
また、こうした台湾でのスタートアップ育成だけではなく、世界的な事業展開も考えているということで、中華圏を中心に、世界各地に拠点を置いている著名なアクセラレーターである「Longhash」や「BitTemple」と提携したことが報じられています。
記事では特に、Longhashがキエフ、ドバイ、東京、香港、シンガポール、上海、ベルリン、そして、「密矽谷(Crypto Valley)」と呼ばれているスイスのツークに拠点を置いていることが言及されていて、ABAがこうした地域への進出を目指していることが示唆されています。
ちなみに、東京にも拠点があるLonghashには、日本語の公式サイトもあります。
台湾のブロックチェーン・仮想通貨に関するキーパーソンが集まっているABAの取り組みが世界へと広がっていくかどうかは、これから輩出されるスタートアップの成功にかかっていると思います。
ここからどんなスタートアップが羽ばたいていくかということも含めて、これからの動きをコツコツと追いかけていきたいと思います!