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優勝報告とピカソの30秒とイラスト生成AIについて思うこと

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  • クロサワ
  • 2023/10/02 06:46
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はじめまして。マーゴット・ロビーと申します。

 

最初に本題

皆様のお力添えのおかげでこちらのイベントで優勝することが出来ました。

それはもうブッチギリでした。

私は職業が制作屋なんですが、自分が作りたいものなんて久しく作っていなかったところに、ちょこちょこ作品発表をする機会をくれるALISという場と、その都度反応をくださる皆さんのおかげで創作意欲が蘇っておりました。今回優勝を勝ち取れたのはその結果でありますので、この場をかりて皆様に御礼申し上げます。

本題は以上。

 

 

あとはだらだらと日頃思うことを。

 

 

AIイラストについて

イラストコンテストの応募総数は40件。

これはコミュニティの規模に対してものすごい参加率だと思います。その後押しをしたのは、イラスト生成AIの台頭が大きいように思います。

クリスペ界隈では、1年、いや半年前と比べても、これを駆使する方が爆発的に増えたように思います。

 

結論から申し上げると、私はこれを素晴らしいことだと思っています。

いままでなんとなく思い描いているものをカタチにしたくてもできずにいた人たちが気軽にカタチにできるようになったことが悪いことなわけないと思っているからです。

黒板の字を読みたいけど目が悪くて困っている人のためにはメガネがあるし、カナヅチだけど海外旅行をしてみたいと言う人のために船や飛行機があるわけですが、私はメガネも船も飛行機も人類の可能性を広げた素晴らしい発明だと思います。

これと同じく、描きたい絵があるけれど画材や時間がない人のためにイラスト生成AIが生まれたことも、人類の可能性を広げるとても素晴らしいことだと思うわけです。

 

以降もかなり個人的な見解で、趣味嗜好の話ですから特に皆さんから同意を得ようと言う趣旨ではないのですが、

数あるアウトプット手法の中で、筆で書いたか鉛筆で書いたをとやかくいう人はいないのに、世間ではなぜイラスト生成AIを使用した場合のみ批判的な意見が生まれるのだろう?

という疑問があり、その問いのつもりで、私自身はイラスト生成AIをどう考えているかということを少し掘り下げて書いてみようかと思います。

 

 

ピカソの「30年と30秒」という逸話をご存知でしょうか?

 

ある婦人ががたまたま市場で見つけたピカソに声をかけ、大ファンである旨を伝えた上で、何か書いてもらえないかと願い出ます。

ピカソは快諾し、30秒で1枚の絵を書き上げた。

婦人は喜び、この絵をいくらで譲ってもらえるかと尋ねると「100万ドル」とのこと。

たった30秒で書いた絵が100万ドルは高すぎると婦人が言うと、

「いいえ、30秒ではありません。私は、これまでに30年もの研鑽を積んできました。だから、この絵を描くのにかかった時間は、30年と30秒なのです」

 

この逸話は30年の部分が40年だったり100万ドルが5,000フランだったりするバージョンがあるので、単なる寓話的なものかもしれません。

同じような話で、すぎやまこういちがドラゴンクエストの「序曲」を5分で作ったというエピソードが有名ですが、彼はこれに加えて、「これを作ったのが54歳の時だったので、5分+54年。つまり、僕の54年間の人生が無ければ、あの「序曲」は出来なかった」とも語っています。

他にもエンジニアの「5万ドルのチョーク代」なんて話もあります。

 

これらが寓話にせよ、真実にせよ、クリエイターに限らずあらゆる世界のプロにとって納得できる話だと思いませんか?

私たちは自分の知らない世界のプロの研鑽を過小評価しすぎているか、そもそも想像がおよんでいないことが非常に多いような気がします。

 

これを踏まえてイラスト生成AIの存在を考えてみると、

私は、一瞬でイラストが書き上がるAIを使用したところで、結局その作品に必要な研鑽を積んでいなければマトモなアウトプットにはならないと思うわけです。

イラスト生成AIは、なんの研鑽も積まずに適当な呪文で半ばランダムに、ほとんど自身の意志を介さずにイラストを生み出すことも可能です。

しかし、私はそれらに対しては作品としての魅力を感じません。

それは、イラスト生成AIが悪いのではなく、単に私がそういう作品が好みでないというだけの話でありまして、

ここでイラスト生成AIを責めることは、水墨画に対して、その作品の良し悪しではなく、墨が悪いと言っているようなものだと感じるわけです。

 

しばしばこの話題で混同されがちな点に関して一旦切り分けておくと、上記で言う「研鑽」とはイラスト生成AIの呪文を上手に描けるかどうかと言う細かい点に対しての話ではなく、「思い描いたものを形にする」というゴールに向かうための研鑽の話をしています。

呪文を上手に描けるかどうかというのは本当に瑣末な話です。

一筆書きで綺麗な正円を描ければ絵が上手いと言えるのか?みたいなレベルの話だと思ってます。

(もちろん、呪文を上手に書く勉強や一筆書きで綺麗な正円を描く研鑽を否定する意図ではなく、それらはその作品を評価するポイントとしては一部でしかないと言うことです)

あらゆるアウトプットは、今までその人が何を見聞きし、どういう行動をとってきたかという積み重ねの結果だと思っているからです。

 

 

魂がこもっているかどうか

私自身の中ではその判断基準をとても明確に持っています。

こだわりを感じられるかどうか」です。

これはなにも最初から頭の中に完璧な設計図が用意できているかどうかという話ではありません。

筆や鉛筆を使うにしても、マウスやペンタブを使うにしても、一般的なイラスト描画の手順として、最初から明確に最終的な成果物を脳内生成した上で作品を完成させることはかなり稀だと思います。

画材に対する練度や日々の研鑽による引き出しの増やし方で、脳内設計図の精度は人によって違うとおもいますが、少なくとも下書きの段階では、ある程度の部分は「描きながら考えている」ことの方が一般的かと思います。

その場の気分にしろ研鑽の過程にしろ「ここはもっとこうした方が」「こうしてみるとどう見えるだろう」という試行錯誤の過程が必ずあるはずで、私はその痕跡を魂と考えています。

これは、筆を使ったか、ペンを使ったか、イラスト生成AIを使ったかに限らず、全ての作品に対して思うことです。

 

試しに、「2girl 1bouquet」という限りなく雑な呪文でひとつイラストを生成してみました。

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骨格がおかしいやろとかそういうのはそもそも作品として成立すらしてない論外だと思いますので、そういうことを例にとりたいわけではないです。

 

これがもし、偶然にもある程度私の狙いに近い絵になってるとして、魂を込めるのであればいくつか手直ししたい点があります。

・シャツの色と花束の包装紙の境界をわかりやすくする(色・質感などで)

・乳房の立体感を表現するために花束をたわませる

・乳房の柔らかさを表現するために抱かれている腕や手を一部沈ませる

・夏に花屋から帰宅したばかりというシチュエーションをよりわかりやすくするやめに少し汗をかかせる

・汗をかいていることを利用し、シャツを体に張り付かせて乳房のシルエットがわかりやすいようにする

おそらくこれらを修正し終えた時点で新たな気づきや不満はいくらでも出てくるでしょうが、ザッと思いつく限りではこのくらいです。

 

これで私の魂を乳房に込めることができるはずです。

 

これは私の魂に言わせると「当然修正が必要な点」であり、方法がなんであれこれらが修正されていない限り作品は未完成。

少なくとも「魂のこもった作品」として世に発表することはないでしょう。

 

私は職業として日々何かしらを作っている人間なので、そうでない人と比べると目的に対する対処の引き出しは多く持っているわけですが、その引き出しがないならないなりに試行錯誤すればいいだけのことです。

私はそれを普段から積み重ねて「職業上必要なスピードを身につけているだけのこと」であり、「こだわりの作品を作ること」を目的とした場合、「スピード」は必ずしも必要な要素ではないはずです。

引き出しというのは技術的なことだけでなく、それよりもはるかに大切なのは、描きたいものに対する日々の興味関心です。今回の例では私の「乳房への興味関心」がなければ現状の問題点をポンポン挙げることはできなかったでしょう。

 

問題解決の方法としては、

・ドンピシャのものが生まれるまでランダム生成を繰り返す

・呪文を少しずつ直す

・他の加工ツールを使う

・プリントアウトして手書きで修正する

等々いくらでも考えられると思いますが、どの方法で努力するか(またはしてきたか)はどうでもいいと思っていて、とにかく私の中の「魂のこもった作品であるか否かの判断基準」は、こういった「こだわりを感じられるかどうか」という点に尽き、方法は重視していないということです。

例に出したイラストは例に出しただけなので仕上げるつもりはないですが、もし魂を注いだ作品がイラスト生成AIを使ったものだからという理由で否定されてしまったらとても悲しい気持ちになると思います。

 

 

さておき、創作活動は多くの人がラフに楽めばいいと思いますので、必ずしも全ての作品に100%の情熱を注ぐ必要はなく、多くの人がそれを楽しみやすくなったというだけで喜ばしいことだと思います。

手書きの場合も、まだ魂を込める前段階のラフを見せあって意見交換することはいくらでもありますし、なにかの情報伝達状の目的が達せられていればそれでいいシーンもありますし、要は好きに楽しんだり活用したりすればいいと思うのです。

これだけ世にイラスト生成AIが溢れ出したということは、みんなそれだけ創作活動をしたかったんだということに思えるので、仲間が増えたような気がしてとても嬉しいです。

 

 

イラストレーターという職業

最後に、たまに、イラスト生成AIによってイラストレーターという職業が脅かされるという意見も見ますが、それは半分ありえる気がしているのでそのことについて。

 

イラストレーターの仕事には「深いこだわりを必要としない仕事」も多いですから、これからもっともっとイラスト生成AIが普及し、アップデートされていけばそういった仕事はどんどん減っていくでしょう。

技術の進歩によってそういった事務的な仕事が新しい技術に置き換わっていくことはイラストレーターに限らず全ての職業にありえることです。

 

例えば、

全ての職業カメラマンは、今まで使ってきたフィルム関連の機材を全て捨て去ることを余儀なくされたタイミングがあります。

デジタル化です。

「アート」という価値計測がほとんど不能な領域でもない限り、デジタルの方があらゆる点で優れていることは誰の目にも明らかです。

特に「仕事」においてはスピードは重要な評価項目のひとつなので、ここが段違いに加速したのは大きいでしょう。

いままで培ってきた機材ではそのスピードに全く追いつけず、そこで引退したカメラマンも多いと聞きます。

さらに、スマホカメラでも充分な「深いこだわりを必要としない仕事」は今なお減り続けていることは確かです。

しかし、あの時機材を持ち替えて、その活用術をあらためて習得しなおした「フィルム時代を知るカメラマン」たちの中には「これまで培ってきたこだわり」を武器に、未だ一線級で働いている方々も多くおられます。

畢竟、「仕事」の上では道具などというモノの差は大した問題ではないわけです。

「機材への愛着」など無用の長物です。

※カメラの場合は機材費がべらぼうなので、金銭的な理由で乗り換えられなかった人も相当数居るのですが

 

話をイラストレーターという「職業」の話に戻します。

確実に「深いこだわりを必要としない仕事」のパイは減っていくでしょう。

なので「仕事」を続けるにはAIを使ってみるにしろそれ以外にしろやり方を考える必要が生じる時は遠からず来るはずですが、どんなやり方に変えるしろ今までの研鑽は必ず活きるはずです。

「アーティスト」でありたいなら、もとより食えるかどうかは水物なのでAIかどうかなんて全く関係ないでしょう。(むしろ世の中に発せられる「作品」と称するものの数が増えれば増えるほど世間の審美眼は育っていき「ホンモノのこだわり」はより際立つのではないかとすら思います)

 

 

最後にやや暗めな話を持ってきてしまいましたが

・ありがとうALIS!ありがとうALIS!!

・みんなも創作したかったんだね!俺とっても嬉しいよ!

・俺は乳房に魂を込めたい

・俺は「いい作品」「好きな作品」の評価にAIかどうかなんて関係ないと思う

・「職業」のこと考えるなら新しい技術には負の側面も当然あるよね

でした。

 

 

よかったらみなさんの考えも聞いてみたいです。

本日はこんなところで。ひとつよしなに

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