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【短編物語】すっぱいぶどう。

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  • くっしー🐬
  • 2020/07/18 18:49

 

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すっぱいぶどう

 

 

あるところに、黄色いきつねがいました。

黄色いきつねは、ぶどうをみつけました。

ぶどうを取るために、必死にジャンプしますが、黄色いきつねには、どうしても届きません。

何十回、何百回と試したでしょうか。それでも届きません。

すると、黄色いきつねは思いました。

「ちっとも取れやしない。どうせ、すっぱいに決まってる!」

そんなことを思っていると、黄色いきつねより、ずっと背の高い、土色のきつねがやって来ました。

その土色のきつねは、ひょいっ、と、意図も簡単にぶどうを取り、食べました。

「もぐもぐもぐ、ん、ごくり、あぁー、これは甘くておいしいなぁ。」

ぶどうを味わったあと、黄色いきつねが居たことに気づきました。

「こんなところに居たのか!どうだ、食べてみろ、うまいぞ」

すると、黄色いきつねは、ちょっぴり戸惑いながらも、断りました。

 

「どうせ嘘つきのお前が言うんだ!すっぱいに決まってる!」

 

と言うと、土色のきつねが、

「え?そうなのか?ほんとに甘くておいしかったから。すまんかった。」

と、土色のきつねが、ほんとうに申し訳なさそうに謝ったので、許してやりました。

 

にしても、ほんとうに甘いのか?

いやいや、嘘つきの土色のきつねのことだ!あのぶどうはすっぱいに決まってる!

 

黄色いきつねは、懸命にぶどうを取ろうとした苦労も忘れて、満足そうに立ち去りました。

 

 

黄色いきつねは、べつのごちそうを探しに、動物たちが歩いてできた、土の獣道に行き、その道中に見つけた虫の巣穴に手を突っ込んで、虫を取ろうとしました。

 

しかし、なかなか取れません。

 

そこで、黄色いきつねは、こう思いました。

「どうせ、にがいに決まってる!」

にがくない虫なんて聞いたことがない!と、言わんばかりに吐き捨てました。

そうだ、あのぶどうも、すっぱいぶどうだったんだ!

 

すると、黄色いきつねは、こんな気持ちになりました。

「どんなものも、まずいに決まってる!」

 

それから黄色いきつねは何も口にすることなく、たとえ土色のきつねが食べ物を分けに来ても、

「まずいに決まってる!」

と、試しに食べてみようともしません。

 

そして数日がたち、黄色いきつねは、体毛も抜け始め、まるで木の枝のように、げっそりと痩せ細ってしまいました。

それを見かけたへびが、りんごの欠片を咥えて、やって来ました。

「ほら、きつねや。そのままでは死んでしまうぞ」

しかしそれは、助けるためではありませんでした。

いつもは決して食べることができないきつねでも、こんなに弱っていたら、食べられる!

いったいどんな味がするのか、食べてみたい!

いったい、どんな美味なのだろう!

 

へびは考えていました。

「きっとりんごが大好きな黄色いきつねなら、このりんごの欠片でも食べたいはずだ。この毒牙でかんだりんごの欠片を食べさせて、完全に弱りきったところを、じっくり味わってやろう!」

りんごの欠片を見た黄色いきつねは、りんごのほどよい歯応えと、なんとも甘くておいしいということを思い出していました。

「そうだ。りんごなら、そのりんごの欠片なら、きっと甘くておいしいに決まってる。」

そして、痩せ細ったからだを押し上げて、そのりんごの欠片をパクっ

「うっ、にがいじゃないか!りんごなのに!」

なんと、へびの毒牙から、毒がかかってしまい、苦くなっていました。

 

弱りきった黄色いきつねには、毒がはやくまわり、次第に意識ももうろうとして、ついに倒れてしまいました。

 

「や、やったぞ!おい、きつねや!君はいったい、どんなおいしい味がするんだい!!!」

へびは毒牙をしまいこみ、楽しみをたくさん残すために、丸のみではなく、ちょっぴりかじりつきました。

「ん!?こ、これは…!?」

固くて、かじれない!?普段は丸のみだから、かじりつけないのか?そう思っていたら、じつは、それは、かばっていた、土色のきつねの、力強い前足でした!

 

「なにしてる!この、薄汚いへびめ!」

「ひぃ!」

へびは慌てて逃げ出しました。

 

そして、土色のきつねは、黄色いきつねを看病してやりました。

 

すると、なんと黄色いきつねは、目を覚ましたのです!

「おお!よかった!本当によかった!何日も、何も食べないから、僕は君が大好きだったりんごを取りに行っていたんだ!りんごなら、君も食べてくれると思ってね。ほんと、すごく遠くだったんだよ!」

そう言って、かごいっぱいにつめたりんごを取り出しました。

きっとへびは、その土色のきつねが、道中落としてしまったりんごを拾ったのでしょう。

 

もう、黄色いきつねは、弱りきっていました。長くはありません。

 

でも、もし、りんごを食べれば...

 

しかし、黄色いきつねは、その大好きなりんごも、食べようとしません。

 

黄色いきつねは、へびからもらったりんごの欠片を思い出しながら言いました。

「きっと、そのりんごも、にがいにきまってる。」

「何を言うんだい!君が大好きなりんごじゃないか!」

 

「もう大好きじゃない!りんごなんて、にがいに決まってる!それに、君も君だ!僕がどれだけがんばっても取れなかったぶどうを、あんなに簡単に取ったじゃないか!」

 

「そんなこと言ったら、君だって、ぼくじゃ通れないところを通れるじゃないか!僕じゃ渡れない細い橋も渡れるじゃないか!」

 

「でも僕はぶどうを取れなかった!」

「だったら僕が取ってあげるじゃないか!」

「でも君はうそつきじゃないか!」

「これはうそじゃないよ!」

「そんなの、うそに決まってる!!!」

「なんだって!?もう勝手にしろ!!!」

土色のきつねは、せっかく看病までしたのにひどい言われ方をしたので、心から怒ってしまい、黄色いきつねの元を、駆けながら離れて行きました。

 

黄色いきつねは叫び疲れて、ぐったりしていました。

 

そこへ、あのへびがやって来ました。

 

そして今度は、まるで忍者の早業のように、黄色いきつねを丸のみにしてしまいました。

 

そして、黄色いきつねは死んでしまいました。

 

 

すっぱいぶどうを取ることができれば、何か変わったのでしょうか。

すっぱいぶどうを貰っていれば、何か変わったのでしょうか。

すっぱいぶどうは、本当にすっぱいぶどうだったのでしょうか。

それを知っているのは、いまや、嘘つきの土色のきつねだけ。

 

 

 

 

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あとがき

 

ここまで読んでくださってありがとうございます!

 

ラジオですっぱいぶどうの話が出てきて、好きなテーマだったので物語にして自分なりに作ってみました。

なんでそんな選択すんねん!とむかつくとこもありながら、だからこそ、そこらへんが擬人化されてて人間らしいと言うか。

まず、ぶどうくれるって言ってるんやからもらっとけよとか、じゃあ今まで遠くにしかないりんごだけで他のもの食ったことないんか?とか、土色のきつねが無理やりりんご食わせればええやんとか 笑

突っ込めそうなとこはそりゃ叩けば叩くほど出てくるし、だから創作ってどんどん面白くなってどんどん作り込まれていく。

「すっぱいぶどう」って、「セルフハンディキャップ」っていう心理に似てて、自分を守るためというか、もしそのぶどうが甘かったとしたら、取れなかった自分は残念やけど、もしすっぱかったのなら、取れなかった自分を守ってあげる事ができる。

これって意外とあって、自分はダメなやつだから、できなくても仕方ない、とかも似てて、できると思っててできないより、できないと思っててできた方が自分のメンタルを守れるから。他にも、運命じゃなかったから、とか、時間がなかったから、とか。言い訳にも近い感じなんかな。

ほんで、最後はもうバッドエンドで、しょーじき書きながら最後の最後までどっちにしよか悩んだ。でもハッピーエンドにはできなかった。

もしハッピーエンドなら、すっぱいぶどうじゃなくなる。

もしハッピーエンドなら、「きつねたちによる、青春の甘酸っぱい武道」とかになってしまってたw もはやギャグw

登場キャラクターが、きつね二匹とヘビっていう、なんとなくネガティブなキャラというか。しかも土色のきつねが、全然ウソつかへんっていうw むしろ助けてあげたりぶどうくれようとしたり、りんご取ってきてくれたり、めっちゃええやつw

あとがきかいてて、星の王子様が好きなのもあって、きつねとヘビなのかもって思ったりした。

てか、すっぱいぶどうって、ことわざとかやと思ってたけど、イソップ寓話やったん?w

 

ってなわけで、

TODAY IS A GOOD DAY FOR YOU!

 

 

 

 

 

 

 

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