いつもの飲み会。とは、ちょっぴり違っていた。
みんなの仕事がひと段落し、飲み会を開いていた。会社で受けていた案件が、一度ごたごたに合い、それを社員一同でなんとかいい方向へ向かわせた「自分たちへのご褒美」ということで、同僚と後輩の数名で、打ち上げのようなことをしていた。
「カンパイ!」と、にぎわう居酒屋で、みんな何かしら話しているはずなのに(酒も回っているため意味のある言葉かはともかく)、それが同時に介すと、がやがやしていて、まるで特別なBGMのようになっている空間が、よりいっそう飲みの雰囲気を出している。
飲み会や打ち上げは、気づけば時間が過ぎている。20時に始めたものの、時計の針が後3分進めば、もう23時になろうとしていた。
いつものように、締めのアルコールにカシスオレンジを注文した彼女は、別の部署だが、案件の関係で連れてこられた後輩の彼が、ここに来てビールを頼むのをみて、やっぱり男の子だな、と思っていた。
彼の、暑くて腕まくりした先には、ちょっぴり男らしい産毛とアルコールで浮き出た血管が、店内の橙色の明かりで陰影をつけていた。そして、なんとなく彼の首筋に目をやると、ネクタイと一番上のシャツのボタンは外していて、立てたシャツのえりから少し汗ばんで突き出た鎖骨が見え隠れしていた。
彼はその彼女の視線に気づいていたのだろうか。その真意に関わらず、彼もまた、彼女をときたま見ていた。この後、いつものように、二次会でカラオケだろうから、それには行かず帰ってしまう彼女を、2人きりで「二軒目」に誘いたいと思っていた。彼女を見ては、どのように声をかけようか考えて、それを数回、頭の中でシミュレーションしていた。
2人とも別の部署とはいえ、案件の都合で同じプロジェクトに配属されることも多く、オフィス内でも同じ階で、しかも近いところにあった。そのため、コーヒーを入れに行ったりするときに会うと、軽く会話もすることもあった。仲のいい友人とまでは行かずとも、「相手の趣味を知っている知人の仲」では間違いなくあった。
デザートも食べ終わり、がやついたBGMのボリュームも下がり、隣の客人の会話も、会話として少し聞こえ始めた頃、こちらの打ち上げの手も止まり始め、割り勘計算をする者がいる中、飲み会も締めに入り、おのおのスマホを見たり、二次会のカラオケで歌うための曲を探したり、自分の財布を取り出したりしていた。
会計も済ませ、外へ出る。あたりはもう街頭の灯りがなければ、かなり暗くなっていて、少し向こうでは電車が通っていた。居酒屋を出たところで少し溜まり、左へ行けば自宅、右へ行けば二次会のカラオケで、彼と彼女は左へ、それ以外はなんとなく右へ進んでいた。
「二次会こないの〜?」「お疲れ様ー!」「また来週ねー」「おつかれー」
と、帰り際によくあるあいさつを終えて、それぞれ歩いた。
話は彼女から切り込んだ。「二次会よかったの?行かなくて」というのも無理はなく、歌えば90点は出せる彼だったので、彼女は疑問に思った。さっきの飲み会で彼のその話が出ていたからだ。それに対し「だって1人で夜道は危ないでしょ?ボディーガードですよ」とからかって笑わせてくれたものの、内心、心強かった。
夏場に入ってからは、そういった事件も聞くことがあったので、できれば家まで送って欲しい気持ちもあった。しかも彼、昔は空手をやっていたらしく、県大会もベスト4と、実力もあり、いざというときでも、と思ったりもした。
2人ともアルコールがまわっていて、いつもじゃ出てこない素の自分が、時折、顔を出す。会話が盛り上がる中、彼が、二軒目の話を切り出す。が、彼女は、もう帰るからいいよ。また今度ね。と今回は行かないそぶりだった。そんな時、彼女の靴がマンホールの溝に引っ掛かり、つまずいてしまう。気づけば、転けてはおらず、少し酒と男らしい匂いと、街頭に照らされ袖から見えた空手経験者の力強い手が、彼女の肩を強く握り、「大丈夫?」と彼の低音で響く声が、まるで耳元でささやかれたように感じた。
「ありがとう。平気。つまづいちゃった。飲み過ぎかな?」
「なんか、さっき話してた、あのドラマみたいっすね。今の。」
ほんとだ!あのシーンじゃん!と、また会話が盛り上がる。兄弟姉妹のように、お酒の力は、2人の距離を、血の繋がりがあるところまで近づけたように感じさせた。
それに彼女の方は、おととい彼氏にふられたところだった。しかもその振られ方が、「半年も付き合ってるのに、なんでずっとメイク濃いんだよ」だった。ほんとうに訳がわからない。何か一気に冷めた気がして、後腐れはあんまりなかった。が、その元彼も、今は、19歳の大学生と付き合ってるらしい。
たしかにモテる人だしカッコ良かったけど、この年齢だし、結婚とかも考えなきゃいけなかったので、こういう人とはむしろ別れて正解だったと思える。もはや、いい経験だった。
だからこそ、彼のように、ここまで気が合って、お酒も入っていたら、二軒目じゃなくて、私の家に来て欲しかったが、流石に自分から言っちゃうと、元彼の埋め合わせだの、気が強過ぎるだの思われると思って、なかなか切り出せなかった。
「じゃあ家まで送らないとだめですね、ボディーガードなんで 笑」とドラマの話をしていたら、いつの間にか家まで送る流れができていた。二軒目に行けないなら、せめて家まで送ってあげようと考えていた。そして、彼女の家に上がるための言葉も考えていた。
会話もほとんど途切れることなく、彼女はずっと笑っぱなし。彼がこんなに話上手で笑わせてくれる人だとは思わなかった。そこで彼が切り出した。
「それだったら一緒に映画見ません?」近くにあったショップもまだ開いてるから、そこで借りて、私の家で一緒に見ようということだった。話も盛り上がったし、映画見るくらいならいいか、と思った。ちょうど話してた映画も見たかったし。せっかくここまで送ってもらったから、じゃあバイバイ、とも言いづらかった。それに、まだ彼と話していたかった。
どうしよ、まさか呼ぶと思ってなかったから、部屋散らかったまんまかも。と気にかかりながらも、ショップに映画を借りに行き、探していた。まるで付き合いたてのカップルみたいで、なんだか不思議な気持ちだった。
彼女はマンションに住んでいて、3階の303号室だった。そこまでエレベーターで上がり、その中は二人きりで、お互いの息遣いも聞こえてくるほどだった。すると彼が囁くような小声で「あの、僕映画、二本借りたんすよ。怖い系って好きですか?」と聞かれ、思わず、えぇ!?と声が出た。いつの間に。しかもホラーは苦手だ。
私の階につき、廊下を私が前を、彼がその後ろを歩く。扉を開け、靴を脱ぐ。彼の、おじゃましまーす、を聞いて、ほんとに家に呼んだという自覚ができた。良かった、部屋は昨日、彼に振られてから少し片付けてたんだ、と思い出し、少し安心したが、彼にどう思われるか不安で、思わず、「どう?綺麗でしょ?」と聞いた。
私はお酒に加えて顔が赤くなった。彼は私をからかって、部屋ではなく、私が綺麗だというようなことを言ってきた。手が綺麗だ、爪が綺麗だ、黒目が大きくて綺麗だ、美人で綺麗だ、お洒落で素敵で綺麗だ、いつも親切で優しいくて、心まで綺麗だ、などと言われてしまい、嬉しいけど、さすがに恥ずかしくなった。
お互いにトイレに行ったりして、私がお茶を入れてる間に、彼に映画を見る準備をお願いした。そしてお茶を持っていくと、彼は電気を消し、部屋を暗くた。「ホラーって、このほうが雰囲気が出るでしょ?」と言われ、私は電気をつけようとしたが、手首をグッと掴まれ私の目をじっと見つめて「ダメ。」と止められてしまった。
ホラーと思ったが、一本目はちゃんと見たい映画で選んできた方だった。まあ確かに電気を消した方が映画っぽくていいのは確かだ。
ソファには座らず、背もたれにしながら、床にクッションを敷いて二人で座り、映画を見ていた。私が座る位置を変えようと手をついた時に、微かに彼の手にあたり、思わず引っ込めようとしたら、彼の方から私の手に優しく触れて、そっと包み込むように手を取り、指と指を重ねてきたので、私もその彼の手を握り返した。
映画も半分は過ぎた頃か、彼が私の肩を抱き寄せて来たので、私もそれに逆らわず、彼にそっと身を預けた。気づけば映画も終わってしまった。短めの映画だったが、なかなか面白かった。ハッピーエンドとも言い切れないちょっともやもやが残る感じが好きだった。その映画で、ヒロインがつまづいた時に主人公がとっさに手を撮ったシーンで、お互いに目を合わせてクスリと笑った。
楽しい時間が過ぎるのは早いなーと思っていたら、次はこれ!と言わんばかりに、ホラーをつけていた。「もうほんとに怖い!」と思い、彼の腕に抱きついていた。男はこのためにホラーを見ると言っても過言ではない。びっくりする私を見て彼は笑っていた。
そして、明らかに怖いシーン。何か出てくるんじゃないの?と怯えて画面を見れず、彼の方を伺ってると、私を抱き寄せて、額にそっとキスをした。「大丈夫、怖くないよ」と言われながら、またさらに彼は抱き寄せた。
そしてまた怖いシーンが来た時、彼が怖がっている私に「ほら、こっちにおいで」と言うと、彼は私を足の間に座らせて、包み込むように、後ろから抱きしめた。「ほら、ちゃんと見てて」と映画を指差した。
映画の音かと思っていたら、外で雨が降り始めていた。「この映画怖いよ。。」と話していたら、私の垂れた前髪をそっと横に流しながら、頬を優しく撫でて、肌に触られた感覚が残りながら、画面の光で映る彼の顔を見て、この二人だけの空間と状況で彼女は彼に包まれていくように感じながら、反応して、子宮のあたりが、くっ、と動いた。
彼の手がゆっくり私のうなじを沿って、首筋のあたりに手をやり、力強く、でも優しく私を引き寄せて、時間が止まった見たいな緊張感と心の高揚が入り混じる中、彼は私の唇にキスをした。
そしてゆっくりと唇から離れ、お互いの額を合わせて、彼の両の手で私の髪を撫で、愛撫するように首筋をさすり、少し感じて息が漏れてしまい、彼は額から離し、私の顔を抱き寄せながら、力強くキスをした。
彼は、私の下唇を噛み、引っ張り、互いの唇は吸いつき合い、少しの唾液が入り混じりながら、感情の昂りと高揚に促されては息は漏れ、愛を貪るように唇が摩擦し合い、触れ合い、脳内麻薬のような何かが脳に溢れ出て、とろとろに溶けてしまうような、熱く、そして次第にキスも激しくなる。
彼は私をソファに倒し込み、手を押さえつける。力強い彼の手が手首を手錠のように握り締め、動いても取れない。柔らかいソファに食い込むように押さえつけられ、上に被さるように跨ってきた。そして下に垂れたシャツの隙間からは、彼の鍛えられた胸が見えた。そして強引で力強いキス。
唇から、私の首筋に、彼が襲う。吸い付くように、這うように、彼の唇や舌が襲い、彼はおさえつけていたのを、両手から片手にかえて、私の両手首を束ねるようにして押さえつけ、彼の右手が両手首を頭の上で縛るように押さえつけながら、あいた片手で首を締め付けるようにしてきた。そして私は思わず喘ぐ声が漏れ、それを塞ぐように彼が唇を奪うようにキスをした。
彼は解いていたネクタイを手に取り、私の両手首に巻き付け、押さえつけた。彼はシャツを脱ぎ、そして私のシャツのボタンを開け、下着とシャツの上から優しく力強く胸を揉み始めた。再び喘ぐ声が漏れてしまうと、彼の手で私の口を押さえ、「俺が出していいって言うまで、声出しちゃだめ」と言い、下着の胸の隙間に手を挿し入れて、再び始めた。
乳輪を弧を描くように指が這い、先端に触れるのを焦らされる。口からては離されていたが、次は肩を力強く押さえつけられていた。私が欲しいような顔をしていると、先端を指で弾くようにした。思わず大きく声が漏れた。ここが欲しいの?そう言うと再び弾いた。そして次第に硬くなっていく先端を、彼は親指で、乳輪と胸の中に押し込み、円を描きながら動かした。
両手首を縛っていたネクタイをほどき、ソファに座らせて、目隠しのように巻いた。おもむろにそばから離れていくのを感じると、冷凍庫の扉が開く音がした。そして近づいてくる足音が聞こえ、耳元で彼の吐息がして、次は背中に吐息が這うように当たると、冷たい氷が、背中を寄せた時にできる筋に沿ってゆっくりとそっと流れた。
私は背中が反り返り、彼は抱きしめて押さえる。そして再び氷が這う。背後から抱きしめながら、うなじをかけて首筋へ彼の舌が襲い、彼の両手は私の両の胸と、その突起を襲った。
彼はソファから私を抱き抱えてベットに向かい、押し倒した。
気づいたら目が覚め、朝はもう過ぎていた。互いに裸のまま抱き合ってベットで寝ていた。あんなに激しく高揚した夜はいつぶりだろう。もったいないとすれば、酔っていてあまり覚えていないことくらいだろうか。彼の寝顔がこんな近くにある。彼の筋肉が盛りでた腕枕に心地よく包まれながら、祝日の朝、もう少し寝ていたいと思った。
あとがき
思ったよりも書くのに時間を費やしてたw
男がAVを見るのに対して、女性は官能小説とかを見てるんじゃないか、そんな気がして書いてみました。
出会いの場って、コロナでだいぶ制限されたなーと思ってたから、「じゃあ作っちゃえばいいか」と思って、テーマは飲み会になり、そこから発展する男女を書いて行った。やっぱり鬼門は、家に上がるところかな。お酒と映画と別れの力をお借りしました。笑
女性って前戯が大事と聞くけれど、これだとやっぱ早過ぎる感じするよな。ていうかその様子を書くのがなかなか難しかった。カップルではないところからやと余計に。
みんなって恋愛関係とかどんな風に発展していくんかな?基本的には相手の家に行くか自分の家に呼ぶかしたらかなり進展してたり恋愛関係度高かったり。
みんなを呼んでるけど、みんな寝静まって、二人きりになったり、とかあるよな。
あれほんまずるい。
言っとくが、あれってみんな寝静まってるんじゃなくて、空気読んで寝たふりしてるだけやからなw
しかも起きてしまうっていうドキドキ感も相まってええんやろうな。ほんま。
くっしー何があってん、ってなるけどそれは置いといてw
そっちのテーマもおもろそうやな。
「みんなで遊んでて、みんなが寝静まった二人きりのよる」
やって。やばいやん。そんなん絶対始まるやん。
ほんで、全然関係ないけど、ワンピースの麦わらの一味って、それぞれ何かの感情を代表してるよな。ルフィなら食欲、ゾロなら睡眠、サンジなら性欲、ウソップは臆病、ナミは金欲、チョッパーは純粋、フランキーは創作意欲、ロビンは歴史、ブルックは老後(パンツ見せてもらってもよろしいでしょうか?)…
どっかの骨ボーンのせいで、それは違うとわかったんやけど、作者の意図のない合致とか表現も、主観的な解釈があれば取り入れれたりする。(エースの帽子と漫画のコマの笑顔のやつの対比は意図してなかったらしい!)
たとえば作品つくるとき、7つくらい用意して、七つの大罪を表現したり、3つ用意して3大欲求を表現したり。
あえて書く時に名前とか詳細なところとか無くして、抽象的にしてみました。
表現してるとこ伝わってるかな。描き過ぎてもあかんし、でも書かなわからんし、短調になってもあかんし。
やっぱり性のテーマは大人になるにつれて深くなりまする。
こどものころは、ちんちんとおしりで十分やったのにな。w
ってなわけで、
TODAY IS A GOOG DAY FOR YOU!