〇アメリカ滞在経験のある50代の英検1級講師が「京大二次試験」を受けてみた〇
私は三重県の最北端にある「いなべ市」に生まれ育ちました。小さい頃の外出先は、名古屋市。近くにある国立大学は三重大学ではなく、名古屋大学だったのです。それで、名古屋大学「教育学部」に進学して名古屋の予備校や塾で勤務することになりました。
すると、当然ながら東大、京大、阪大などの受験生を指導するハメに陥るわけですね。そして、
「先生は名大卒ですよね。京大英語でボーダー超えられるんですか?」
との厳しい言葉を浴びせられたりしたわけです。
その時点で、私はアメリカのユタ州ローガン中学校の勤務から帰国して英検1級に合格していたので大規模予備校でも旧帝や国立大医学部受験生の英語クラスを担当させられていたのですよ。
「そうだなぁ。確かに京大の英作文で自分の英語がどう評価されるか分からんなぁ・・・」
というのが正直な気持ちでした。英検1級と京大二次の最高点(8割ほど)とどちらが上か分からない。帰国子女が誰でも京大に合格できるわけでもない。
「やってみるしかないか」
という結論に達したのが50代の頃でした。
そのころ、自分の塾に京大受験生が多く集まってきたからです。中京地区では名古屋大学の知名度と英検1級の知名度を合わせ持てば最強の英語講師という評価を受けるんです。だから、50代まで余り実験してみる必要性を感じませんでした。
ところが、50代の頃になると京大医学部医学科の受験生が通信生を中心に毎年複数の添削依頼が舞い込み始めたのです。京大医学部医学科というと、ボーダーというか目標が8割正解なんですね。
すると、
「英検1級と京大二次8割得点とどちらが上か」
これに、決着をつけないと生徒の方や保護者の方に納得してもらえなくなりました。東大、阪大は英作文の配点が高くないのですが京都大学だけは配点が極めて高い特殊ケースなんですね。
どうせ受けるなら徹底的に調査してみようと思い、京都大学の二次試験を7回受けてみました。予備校や塾で教えている「受験英語」、ECCのような英会話学校で教えている「資格英語」、私がアメリカで使っていた「ネイティブ英語」のスタイルで書き分けてみて高評価を受けるのはどれか知りたかったのです。
その結果は、以下のようになりました。
平成18年、20年(文学部) 正解率の平均 66%(受験英語)
平成21年、22年(教育学部) 正解率の平均 76%(資格英語)
平成24年、25年(総合人間) 正解率の平均 79%(ネイティブ英語)
最高で81%だったので、塾生の方たちも私のレベルが京大医学部に合格できるレベルだと知って安心したようでした。そして、京大受験生の方たちは「河合塾」「駿台」「東進」などの模範解答について私に尋ねるようになってきました。
たとえば、2022年度の京大英語の3番の英作文の冒頭の文。
「数ある旅の楽しみのなかで、車窓からの眺めというのもまた捨てがたい」
この一文だけに限ってみても3つの予備校の解答は以下のようにバラバラです。
(河合塾)
Among the many pleasures of travel, the view from the window of a bus or train is enjyoable on its own.
旅の楽しみはいろいろありますが、バスや電車の窓から見える景色は、それだけで楽しいものです。
(駿台)
One of the greatest pleasures which I have while traveling is enjyoing the scenery from a train window.
旅先での大きな楽しみのひとつは、車窓からの景色を楽しむことです。
(東進)
The view from a train window is what comes to mind as one of the many kinds of pleasure and enjoyment travel gives.
車窓からの風景は、旅行が与えてくれるさまざまな喜びや楽しみの一つとして思い浮かぶものです。
この3つの予備校の模範解答を書いたら本番で何点もらえると思いますか。最高点は8割程度と分かっています。当たり前ですが、同点にはなりません。必ず優劣がつきます。私は営業妨害になると思うので、ここで評価は書きませんが100点ということはあり得ません。
私は「京大英語」の添削を専門にしています。10年連続京大の合格者を出していて(うち医学部医学科4名)合格後に成績開示を見せてくれる人が多いです。自分の7回受けて得た情報と生徒の方たちの情報を総合すると、どういうスタイルの英語が最も合格しやすいのかハッキリ分かりました。
英検1級や、京大卒程度の英語では京大医学部医学科を受験する生徒の指導はできません。なのに、高校の教師で英検準1級以上の英語力のある方は、半数ほど。また、京大のボーダーは65%程度です。ですから、京大卒の教師や講師でも80%を狙う医学部医学科の生徒の指導はできません。
だから、私のような田舎の小さな個人塾の講師が「私の京大合格作戦」(エール出版)の2020年から2022年まで3年連続で漫画化されて掲載されたのです。
最近は「TOEIC満点」をウリにしている講師が多いですが、TOEICはリスニングと選択問題で構成されています。京大二次試験はリスニングが無いし、客観テストもほとんどありません。
私は、自分の経験と見解をこうしてSNSで発信していますが耳を傾けてくれる人はほんの少数でしかありません。なぜなら、世の中の大多数の人は
「合格に導いてくれる講師は、駅前にビルがありマスコミで活躍している人」
と考えるからです。
私はそういう人の指導はしたくありません。合格の見込みが非常に少ないからです。予備校や英会話教室で教える「受験英語」「資格英語」は現在使われていない表現方法が多い。これは、原稿を作る先生がお年寄りでネィテイブ英語に10年は遅れている。それを校正して製本して評価を得るまで、また10年。
そんなテキストなのに、クソも味噌も同じに見える生徒では指導する気がなくなる。野球だって、サッカーだってコーチは見込みのある生徒を集めて強化選手にする。格付けチェックでも「一流」と「アマチュア」の区別がつかない映す価値がない芸能人は相手にしないでしょ?