人とのご縁はとても不思議なものです。
今回は仕事ではなく、プライベートであった、
本当の不思議なご縁のお話を。
あれは自分がまだ塾の講師をしながら音楽活動をしていた
21歳の時です。
当時、塾の講師の仕事が終わると、家に帰って夜中まで
作曲をしていました。
当時住んでいた家は県道のそばだったのですが、ちょうどカーブになっていた所で
そのカーブが逆バンクになっていたためか、自動車事故が
とても多かった場所でした。
そこに住んで3年目だったのですが、その間にも4回も
交通事故の現場に遭い(正確にはぶつかった音を聞いて家を飛び出す)
警察の方々にも顔が知られるくらいになっていましたw
(助けられず、亡くなられた方も何人かいました)
そんなある日…
その日の夜(午前2時くらい)も作曲をしていた所、
外からいきなり
「ドカーン!」
という音が!
(またか!!)
とジャージで外に飛び出してみると、フロントを大破した車が止まっていました。
車に駆け寄ると、中には男性二人、女性二人が。
車の運転は男性、助手席には女性。
後ろの席も男性と女性のコンビ。
あとで分かった事ですが、女性二人は居酒屋の従業員で
男性二人はその居酒屋のお客さん。
4人で別の場所に飲みに行く予定だったそうです。
ちなみに運転していた男性は飲酒運転でした。
助手席の女性が顔に手を当てて、フラフラと車から降りてきたのですが
女性を見てびっくりしました。
顔から大量の血を流しているのです。
しかし女性は痛がる様子もなく、
「何が起きたの?」
としか言いません。
駆け寄り「ちょっと見せてね」とゆっくり女性の手を顔から離すと
女性の額は真横にザクザクに切れ(10センチ以上)
その傷からは鼻の軟骨が見えている状態。
どうもシートベルトを締めておらず
ガードレールにぶつかった際にフロントから顔が出てしまい
衝撃で曲がったボンネットの折れ曲がった
ギザギザの部分に顔をぶつけてしまったと。
もう溢れるように血を吹いていました。
顔面血だらけで、どんな顔かも分からないくらい。
少し遅れて家を飛び出してきた母親に
(母親も夜中に起きているので)
「バスタオル持ってきて!」
と叫び、持ってきたバスタオルを顔に当てると、あっという間に
バスタオルが血まみれに。
当の彼女は、痛みがないので、何度もバスタオルを外して
サイドミラーで自分を顔を確認しようとするのですが
ショックを受けるとまずいと思ったので
「見ちゃだめだよ~」と優しい声をかけて、サイドミラーから離しました。
運転していた男性は左の太ももを骨折していて「痛い!痛い!」と
呻いていました。
ほどなく救急車が来て、女性が救急車に運ばれましたが
その時、手を掴んで「大丈夫だからね」と声をかけていた自分の母親に
「怖いから病院までついてきて!」
と言うのです。
痛みもなく、でも血が出ていている状況が分かりつつ、
どうなっているか自分の顔を見る事ができない。
彼女にとっては恐怖だったと思います。
その後母親は救急車に、自分は後ろから自分の車を運転し
病院に付き添いました。
整形外科の先生は、貼れあがりつつある裂傷部分を
少しずつ縫うのですが、縫うたびに
「痛い!痛い!」と言い始め(頭が戻ってきた)
さらにその度に母親は「あと少しだから。あと少し」と
全然あと少しでは無いのに、何度も励ましていました。
自分は嫌がる彼女をなだめて、実家の連絡先を聞き、
親御さんに連絡。
2時間程でやってきて、親御さんに状況を説明しつつ
「彼女もショックだと思うので、怒らないであげてください」
と伝えました。
何とか応急処置の縫合が終わったのが
朝の7時。
処置室に入ったら、彼女の顔は包帯で覆われて
点滴の影響か?眠っているようでした。
母親と帰ろうと病院の外に出たら
自分達が血だらけなのに気づいて
通学途中の学生さんにビックリされましたw
その後風の噂で、彼女は居酒屋を辞めて
田舎(岐阜県)の鉄道で売り子さんを始めたと
聞きました。
顔は何年かかけて治さないといけないと…。
それから7年後。
ゲーム業界への転職が決まり、東京に行く事になったのですが
引っ越し業者どうしようか?と思っていた時に
母親のお店のお客さんで、たまたま引っ越し屋さんのグループがいまして
その引っ越し屋さん達が
「良かったらウチがやりましょうか?」
と言って頂きました。
母親が「え〜!?お高いんでしょ?」と聞くと
そのグループの1人の女性が
「お安くしまっせ〜w」
と言ってもらったので、そこでお願いする事に。
数日後、そのお安くしまっせ女性とスタッフ2人が家にやってきて、
荷物をあっという間に積んでもらいました。
荷物は他の所のものも一緒に運ぶから安くなると。
所がその時値段を聞いても、引っ越し屋さんは
答えてくれないのです。
(おいおい、大丈夫かいな?)
そう思いつつも、すでにトラックに荷物がつまれているので
何も言えず。
2日後、東京のアパートの前で待っていると
引っ越し屋さんはちゃんと来てくれました。
女性スタッフはおらず、積んでくれた別のスタッフ2名で
これまたあっという間に荷物を降ろしてくれました。
自分が「代金は?」と聞くと、
2人が笑顔で
「1万円です!」
というのです。
なんという安さ!
「え!?良いんですか?」
と自分が言うと「大丈夫ですよ」と。
結局1万円払うと、引っ越し屋さんはあっという間に
帰って行きました。
さらにそれから2年後。
母親から電話がありました。
「あんた、ちょっとビックリしたんだけどさ!」
「え?なに〜?」
実はその電話の数日前、母親がお店を閉める事になり、
かつての常連さんが沢山来てくれました。
その中に、自分の荷物を運んでくれた引っ越し屋さんの
店長さんが来てくれたのですが、母親が
「他のスタッフさんや、女性スタッフさんは?」
と聞いたのです。
店長は「女性スタッフは辞めたよ」と言った後に
「これ彼女から口止めされていたんだけど…」
と、話し始めました。
その「お安くしまっせ」と言った女性スタッフは、
あの時事故に遭って顔を大怪我した女性だったのです。
元々事故の時は彼女は顔が血だらけで、自分も
母親も顔は分からないし、覚えていません。
(9年前のそれも数時間の出来事ですし)
しかし自分も母親も、彼女スタッフの顔の額の部分に
薄っすらと傷跡のようなものは見えましたが
まさか引っ越し屋さんの彼女が、
事故で大怪我をした彼女とは思いもしませんでした。
風の噂でフランケンシュタインみたいな
傷になっていたと聞いていたので。
彼女は何度も治療を重ね、化粧をすれば殆ど
傷跡が消えるくらいまで回復していたのです。
そしてまた名古屋に出てきて、引っ越し屋さんで
働き始めました。
あの時助けてくれた自分達に御礼がしたいと
思っていたそうで、色々事故現場近くの人に
聞いてみたそうですが、実は事故から自分達は
2回引っ越しをしていたので、分からなかったそうです。
で、引っ越し屋さんを始めて1年くらいした時に
店長さんに連れられて、うちの母親のお店に来ました。
彼女、母親の声を聞いて(あれ?この人では?)
と思ったそうです。
縫合の時の励ます母親の声を覚えていたと。
で、店長さんに事情を説明して、別の日に
店長さん1人でお店に来た時に、
さりげに事故の話を振ったら
母親が話したので(この人と息子さんだ!)と確信したそうです。
店長さんに相談した所、多分直球で御礼しても
断られるだろう、と言われ考えていた時に
自分が引っ越すという話になり、
彼女は「ここで恩返しができる!」と思ったそうです。
(店長も同じ事を思ったそう)
しかし「タダで引っ越し」だと怪しまれるので
とりあえず最後に1万円だけ貰おうと。
本当の引っ越し代は彼女が全額払ったそうですが
店長は最後まで本当の引っ越し代を教えてくれませんでした。
そして母親に1万円を出し
「これ息子さんに返してください」
と言われました。
彼女は私達の引っ越しが終わって数ヶ月後に
退社したそうですが、実は岐阜の実家近くの人と
結婚する事になっていて、どちらにしろ辞める事に
なっていたそうです。
彼女は辞める際に
「やっと恩返しが出来て、スッキリした気持ちで結婚できます」
と言っていたそうです。
嘘のような、本当のご縁のお話です。