前回の【遊技機衰退の原因(その1:メーカーの新入社員の採用ミス)】で
出来ない人だけが残った…というお話をしましたが、
では、そもそも開発のスキルとはなんでしょう?
まずは開発の企画、ディレクター、プロデューサーのスキルを説明する必要が
あります。
人や会社によって様々かもしれませんが、自分なりの見解は…
「スキル」
・ゲーム性(演出面)のアイデア出し。
・構想書にまとめる力(デザイン性含む)
・企画書に落とし込む
・どんな演出にするか?字コンテを作成し、また絵コンテ作業者にイメージを伝える
・全体的な信頼度の当りを付ける
・仕様書に落とし込む
・仕様バグが発生した場合に代案を早急かつ的確に出す
・演出コマンドの作成
・ロム容量の計算
・演出バランス、予告複合・禁則等の振り分け(これは試打によって決める事も)
・協力会社から上がってきたデータのチェック(ディレクターと共に)
「スキル」
・スケジュールの作成
・スケジュール進捗管理
・上がってきたデータのチェック(プランナーと一緒に)
・メーカー(開発会社)との折衝
・仕様変更、追加があった場合の調整(プランナー、プロデューサーと)
※ただしベースとしてはプランナースキルを持っていた上で。
「スキル」
・予算管理
・クオリティチェック
・メーカー(開発会社)との折衝(全体予算等)
・スケジュールのチェック
※ただし、ベースとしてはプランナー、ディレクタースキルを持っていた上で。
上記のようにとらえています。
一見プロデューサーの仕事が少ないと思われますが、責任が非常に重いです。
またプロデューサーは2~3のプロジェクトを同時に管理する必要があります。
またプランナーは自分で仕様を切る為、その内容を仕様書を見なくても
すぐに「どんな演出なのか?」すぐに答えなければならないと思っています。
※ただここ数年は演出ボリュームが増えた事と、ミスを無くすために
仕様書を見て確認、という事にしています。
少なくとも開発会社のスタッフはこんな感じで、スキルを持っています。
(会社によっては持っていない人もいるかもしれませんが…w)
さて、メーカーの開発の人達は、この上記のスキルを持っているでしょうか?
全く持っていないとは言いませんが、
このうちのほんの少しだけしか持っていません。
例えばこれは最近(ここ2~3年)の話ですが、メーカーでは「社内内製」を
上層部が提唱しています。
外部の人間に仕事を振るなら、社内の企画開発部門に仕様書作成を
やらせた方が、コスト削減に繋がる。
そう考えています。
これは経営的には正しい判断かと思います。
が、問題なのはここ10年近くメーカーの開発の自称企画、ディレクターと呼ばれる
人達は、上記のスキル、作業をほぼ協力会社に投げていました。
そして、メーカーの上層部も、その事(開発スキルの無さ)を
あまり理解していないように見受けられます。
メーカーの開発社員のスキルをざっくり書きますと…
「スキル」
・ゲーム性(演出面)のアイデア出し。
・演出バランスの振り分け(これも協力会社に振る事も多い)
・協力会社から上がってきたデータのチェック。
これだけです。
「アイデアは出す」
「しかしゲーム性は自分の好きな機種のリスペクト」
「仕様書の書き方が分からない」
「本当の字コンテもかけないし、絵コンテを見ても理解できないので、無駄な作業な
Vコン(ビデオコンテ)、または酷い時は絵コンテの絵コンテなんて言う事もw」
ようは「自分の作りたいもの」をゴリ押ししてくるのに、それを伝える力
「仕様書」や「企画書」を自分で考えてデザインし、相手に伝える能力が
欠如しているのです。
開発の人間が、開発会社にさえちゃんと伝えられないのに、どうやって
ユーザーに楽しさを伝えられるでしょうか?
また独りよがりの企画提案、それも自分が好きな他機種演出を入れてきて
新しさがあるでしょうか?
例えばこんな話があります。
メーカーの企画開発メンバーが自分が作りたい予告演出の部分で
「仕様書作ります!」と言ってきました。
開発会社が「本当に作れるんですか?」と聞くと、キレて
「作れるに決まってるでしょ!」
「僕はパチンコ作って6年ですよ!」
と言っていたので、任せてみました。
そして1週間後上がってきたエクセルデータを見たら、
タイムフローもアニメシーンの抜き出しのタイムコードも
演出振り分けもなく
エクセルの真ん中に、謎のURLが…
クリックしてみると、YouTubeで、当時ヒットした某人気機種の予告演出の
映像でした。
そしてメールには…
「この演出が好きなので、こんな感じでお願いします」
と。
開発会社はポカーンw
あの啖呵を切ったのは何だったのでしょうか?
というか6年間何をしていたのでしょうか?(汗)
ディレクターは…
・上がってきたデータのチェック(プランナーと一緒に)
・メーカー(開発会社)との折衝
・仕様変更、追加があった場合の調整(プランナー、プロデューサーと)
スケジュール管理も曖昧ですし、引く事さえできません。
特にスケジュールに関しては開発会社から上がってきたものを見ますが
細かい所はほとんど見ていません。
開発会社から進捗報告が無い限り、自分達からチェックはあまりしていません。
なので、開発途中での問題(メーカー社内での仕様追加等)があっても
スケジュールを把握していないため、スケジュールが押す事が多い。
プロデューサーは…
・予算管理(ただしいつも部長と折衝)
・クオリティチェック(社内開発メンバーの意見を聞いて)
・スケジュールのチェック(なんとなく)
という感じです。
実際今のメーカーでプロデューサー職というのはあまり見受けられないですね。
ほぼ会社組織でいう次長や部長クラスがやっています。
このようなスキルであるがゆえに協力会社も仕事を頂いているわけですがw
問題なのは、このスキルで…
という事です。
・自分たちの作りたいものはある。
・ただそれを具現化できるスキル(仕様書作成、絵コンテ理解等)がない。
・CGやオーサリングに対する知識が希薄(開発の中身を理解していない社員も多い)
・開発会社から上がってきたデータには意見を言える(というかここは張り切る)。
・違っていた場合も的確な指示ができない(ダメだけど代案出してください)
そしてこのスキルの低さをメーカーの上層部も理解していないにも関わらず
開発コストの面から、簡単に「内製で」なんて言ってしまっています。
ちなみにこれは開発会社が作る仕様書のイメージですが…
(某機種の演出仕様書をイメージとして作ってみました)
これは全て開発会社のプランナーが作成しています。
・スケジュール
・演出コマンド
・予告複合表
・演出仕様書(字コンテ、絵コンテ指示&チェック、Vコン作成)
・タイムフロー(オーサリングイメージ)
・全体の演出フロー
・CG、オーサリングの制作過程や方法
メーカー内でも一部デザインスキルのある人は、上記の一部ができますし、
演出コマンドや予告複合表は作れますが、これを1人のスタッフが作る能力は
今のメーカー開発社員にはほとんどありません。
さらにこれに拍車をかけて、今問題なのは「演出過多」です。
これはまた後日お話します。
前回お話しましたが、結局メーカー社内の内製に対して
社員のスキルが低い&演出過多の為、今のメーカーの内製は
1機種に対して、企画開発の社員が5~10人で当たります。
ただデータ納品後には、自分で「OK」を出す事ができません。
それは個々に「イメージ力」と「決断力」がないから。
今のメーカーの開発は「クリエイターもどき」であって本質は
サラリーマンです。
なので「自分が〇〇の考えで、こう決めました。これでOKです」と言える
開発者は極わずかです。
※いないとは言いません。出来る方もいますが、社内会議で潰されています。
あとメーカーの人達の業務的スキルのお話をしましたが、
他に
・師弟関係崩壊
・演出過多というエゴ(恐怖心)
・クリエイターとしてのメーカー社内のパチンコ離れ
・サラリーマン気質
等があります。
これは今度お話したいと思います。