先日行ってきた、東京蚤の市では雑貨以外にも古本なんかもたくさん売っていて僕がおーっと思って買った古本があって、それがとてもよかったので紹介したいと思います。その本は岩波書店が1950年代に出版していたテーマ別の雑誌で、僕が買ったのは”自然と心”というものです。500円くらいで買いました。
いいテーマと表紙だなぁと思いました。こんな感じの文章で始まります。
私たちの周りの自然物にはそれぞれの風情がある。春の日に立木に微風があたっているのをみると、さわやかに梢をふっていると感じられるし、同じその木が季節が変わって寒風の中で葉を散らしていれば哀れな木だと思う。文字通り万物は有情で、人間や動物のように心のある生き物だけでなしに、「感情はものにもある」のである。だがなぜ自然物に心があると感じられるのか。本来は不思議なことである。平常気付かぬくらいあたりまえなこの風情というものを心理的に分析すると、私たちは改めて自分の周りを見直すようになるだろう。それから自然の趣というものはいつの世にも変わらぬと思われているが、風情はもともと見る人の心によって生まれる以上、社会の変容によって人間が変わるのとともに、うつろっていくものだと気づかれよう。
ちょっと圧倒されるくらいに、尊い文章。この雑誌が出版された時代は、自然が当たり前のように周りにある田舎暮らしから都会暮らしに生活が変わった人がたくさん出現した時代で、休みになると自然を求めてピクニックに行ったり、ライフスタイルの変革が起きた時代だったと思います。それで、週末くらいにしか自然がみれないんだから、だからこそ自然と風情をもっと楽しもうよ、という提案なんですよね。写真も文章も素晴らしすぎて、昔の日本の出版やメディアの人たちって凄かったんだなと、嬉しいような、切ないような気持になってしまいました。