初め、私たちは今回の北海道では、知床に向かうつもりでした。
しかし、天気予報を見ながら、この時期に唯一、晴れていた北の果てへと雨を回避していたのです。
利尻から稚内に戻ったら、宗谷本線を急いで旭川へ引き返し、知床に向かうつもりでいました。
ところが、ちょうど知床に辿り着いた頃には、知床は何日か雨に見舞われると、週間天気予報は予想していました。
それに、ここまで、気ままに行き先変更しながら旅してきた私たちは、急いで目的地に向かうという旅のやり方が、いかに自分たちに似合わないかを、改めて痛感していました。
彼も私も仕事の都合でいったん帰らなければならない期限も迫っていました。
広大な北海道のすべてを訪れることは、もともと無理です。
そこで私たちは、今回は宗谷本線沿線、即ち、稚内から旭川の間を各駅停車でゆっくりと舐め尽くそうと話し合いました。
利尻島から戻ると私たちは稚内の駅に向かいました。
各駅停車幌延行きに乗るつもりでした。
稚内駅は夕方になると無人駅になっていました。
私たちは切符を買うこともできず、ホームで、列車を待っていました。
その間に色々とスマホで調べごとをしました。
それで分かつたことは、各地の国立公園、キャンプ場、湿原、その他の観光施設は、緊急事態宣言のために、ことごとく閉鎖しているということでした。
トナカイ牧場などの、人の作った観光施設に人が集まらないようにするのは意味がわかりました。
しかし、私が疑問に思ったのは、ただ北海道の自然の中にいたいと思っても、
そこにはビジターセンターがあり、ビジターセンターが閉鎖すると入れない所が多いことです。
利尻島などは、やや例外的な場所だったのです。
北海道の観光地は閉まってるので北海道に来ないでくださいというのも、意味はわかります。
しかし、私たちは緊急事態宣言決定前に北海道入りしていたのです。
どこも閉まってるから帰るというのが、逆に不要不急の移動となります。
私たちは、ただ北海道の自然の中に二人でいたいだけなのに、そこに入ることがてきないなんて。
大自然は誰のものなのでしょうか?
なんだか、世の中の仕組が納得できない気持ちも正直ありました。
すると、何やら放送があり、駅が騒然とし始めました。
やがてホームにJR職員が現われました。
「列車が線路上にいた鹿を巻き込みました。列車の復旧には時間がかかります。タクシーで代送します」
北海道ではよくあることだそうです。
さっきまで無人駅だった稚内駅にどこからともなく何名ものJR職員が現れ、タクシーも集まってきました。
私たちは、幌延までタクシーで代送していただくことになりました。