少し前に読んだ本です。
タイトルと表紙が最高に好みだったので衝動買いしました。
タイトルの『ロマンティックあげない』がドラゴンボールのアニメのエンディングテーマ『ロマンティックあげるよ』のパロディであることは明らかですね。
中身のエッセイもフェミニズムについて言及しているものが比較的多めで、「女性は、男性の欲しがるものを与えるばかりの存在ではない」といったメッセージ性が『ロマンティックあげない』というフレーズに表れていると言えます。
登場人物に白いワンピースを着せる人たちに「あなたは、一瞬でも生理について考えたことがあるか」と問う『白いワンピースに色を塗れ!』、日常の性差別体験を投稿する「Everyday Sexism」プロジェクトと日常のセクハラ問題に触れている『時代は特に変わっていない』、あみんの『待つわ』(私待つわ いつまでも待つわ たとえあなたが振り向いてくれなくても)や、都はるみの『北の宿から』(着てはもらえぬセーターを 寒さこらえて編んでます)などの過度に男に都合のいい女を描いた曲を非フェミ曲とし、「待つな!」「編むな!」と自立した強い女を歌うフェミ曲を紹介する『フェミ曲ミックス vol.1』、以前話題になったマットレスを常に担いで大学生活を過ごすことで自身のレイプ被害を訴えたコロンビア大学の女子生徒に触れた『マットレスを担いだ女の子』などなど、女性差別問題についてわかりやすく直感的な文体で触れているエッセイが多く収録されています。
……という風に書くと、社会問題をテーマにした重たい本なのかな、と思われる方もいるかもしれませんが、実際は非常に読みやすい本です。『ロマンティックあげない』というタイトルにも表れているとおり、ユーモアに富んだ文章センスで描写されていますし、日常の些細なおもしろエピソードの方が多い本です。
映画館の座席指定で受付の人が「真ん中の席が空いています」とか言うが、そんなことより前の席の人がお団子頭じゃありませんよとか、隣の人はバリバリ音を立ててせんべい食う奴じゃありませんよとかいうことを知りたい……とか、
『崖の上のポニョ』が海外で公開されたとき、グランマーレの「ポニョ、いい名前をもらったのね」というセリフがそのまんま「Ponyo, what a lovely name.」と訳されたことに対して、「これでは海の向こうではPonyoは日本人にとってのいい名前だと全員が思っていることだろう。」なんて心配をするような本です。
私が一番好きなのは、フィギュアスケートの全日本選手権の時にだけ現れる男性アナウンサーが「いつもの笑顔が出ません」とかやたら笑顔にこだわったり、実況という名の謎ポエムを連発するという話です。
「28歳 はじめての頂点 最後の舞台 ここで本当の涙が流れていく 鈴木明子。スケートに巡りあってよかった 挫折しても あきらめないで 夢を繋いで だからこそ 最年長28歳になっても そして最後の日本選手権とはいえ まだ次に大きな舞台に繋げてみせました 鈴木明子です」
わかるwww脳内再生余裕wwwww
文章で読んだらほんまテレパシーやんけってなるwwwww
フィギュアスケートがわかる人は今の内容で察したかと思いますが、2014~15年頃の連載をまとめたちょっと古い話題の本です。が、このセンスが刺さる方にはぜひ!おすすめです!