糸魚川にあるこの山は、箙岳なんて不思議な名前の山である。箙とは弓矢の矢を入れて背中に背負う筒のことをいう。どこからどう見てそんな名前が付いたのだろう。風吹岳辺りを弓に見立てたのだろうか。
昨年、蒲原山に登った折、箙岳の斜面を見てあの白い大斜面を一度は滑りたいと強く思った。
今年は暖冬で雪不足、しかし糸魚川ICを下りて木地屋に車を走らせるとドンドン雪が増えてきた。さすが新潟県である。
出だしの林道にはスノーモービルと多数のスキー跡が残っていた。これはひょっとして箙岳にも延びているのかなと期待と残念な気持ちが半々だったが、途中スキーはすべて杉ノ平方面に向かっており、スノーモービルもすぐ先ではまってUターンしていた。山頂まで一人ラッセル決定、脛まで沈んだが雪は軽かった。
今日の目的はもう一つ、白池に寄ることだった。純白の池の上を歩いてみたかったのだ。ザックを降ろして身を軽くして恐る恐る進む。
朝日に照らされた白池は静寂に包まれていた。足下はどのくらいの厚さなのだろう、池のほとりの東屋は完全に埋まっていた。
白池まで2時間半かかって予定通りではあるが、昨日の疲れが残っているのか次第に足が重くなってきた。ピークまでは無理かしらと弱気になった。
白池から無名池へと向かう。ここからは赤テープの目印があり、テープを頼りに進んでいけば問題ない。無名池をぐるっと回り込んだら斜面にとりつくことになる。しばらくは斜度もゆるいが、足が重く息が上がりしょっちゅう立ち止まった。
1400mからの北尾根の登りは斜度もありつらかった。ちょっとピークは無理かなと思い、タイムリミットを13時とする。展望もなく辛い登りが続いた。細かくジグを切って登る。次のジグをどこで切るかと集中して登っていると、いつの間にか足の重みを忘れていく。不思議だ。
1600mをすぎるとバックに頸城山塊が現れた。よ〜し、この景色を見たら山頂の景色も見ないわけにはいかんだろう!
最後手前のポコに引っ張られて小さな下りを作ってしまったがピークは近い。右手に後立山連峰がよく見えるようになった。昨日のものと思われる栂池からのツアーコースのトレースが残っていた。
さぁ、山頂に到着するとそこからは今まで見えなかった白馬岳がドーン!
来て良かった、最後まで頑張って良かった、今シーズン最初で最後の激ラッセルだろう。担いできた重い一眼カメラで写真を撮りまくる。すっかり時間を忘れていた。時計を見ると13時を過ぎていた。
さぁ、いつまでもいるわけにいかない。シールを剥いでトレースを戻ったら目的の大斜面を滑ろう。
今シーズン最高の斜面、最高の滑り。しかし、あっという間でした。
大斜面から下の谷滑りも楽しめた。13時を回って雪の状態が心配だったが、北面の谷で気温も上がらなかったからか、パウダーが残っていた。
1400mで登りトレースに合流してからは、雪が徐々に重くなる。単独がひとり細板の滑りで難儀していた。無名池まで下るとべた雪になったが、トレースボブスレーなら大した影響はない。ビュンビュン滑っていく、木地屋まで高速滑走だ。箙岳最高!
2019/2/18月
5:45 670m 木地屋駐車地
8:20 1090m 白池 8:40
10:30 1400m 北尾根取りつき
12:55 1821m 箙岳 13:20
14:20 670m 木地屋
距離 15.8m
高度上昇 1300m