僕は小出美里さんというアーティストが好きだ。
彼女との出会いは約一年前。そうあの日、仕事で川崎に行かなければ彼女の声と歌に出会うことはなかったのである。
その日は僕が複数年取材を担当しているアーティストのバレンタインイベントが開催された日だった。
イベントが終わり「どう記事に残していこうかな?」と考えながら駅までの道を歩いていると、突然耳を塞いでいたイヤホンを超えて歌声が聞こえてきた。
楽曲は中島美嘉さんのデビュー曲である「Stars」。
そろそろ20年以上前の曲。元々その曲に好意を持っていただけに、路上で歌っている方がいるのは嬉しい。
「久しぶりにApple Musicで聴くか」
はじめはたしかにそう思った。中島美嘉さんの曲を聴きながら電車に乗って帰ろうと。
だが、人生で初めて路上ライブを聞いて足を止めた。
正確には一度通り過ぎた。残っている原稿を仕上げれなくてはいけないし、構成も組まなくてはならないためだ。
だが、僕は戻った。あの女性の歌をもっと聴きたいと思った。
それほどまでに路上ライブをやっている女性の声の歌はスペシャルだった。
ポップを見て彼女の名前を知る。小出美里さんというらしい。
彼女は歌い終わると丁寧にお辞儀をして、ファンの方とコミュニケーションを取っている。
僕の方を見た。後々に分かったことだが、一度過ぎ去った僕が戻ってきたことが嬉しかったようだ。
それからは路上ライブだけでなく、YouTubeなどでも彼女の歌を聴くようになった。
クールで繊細。その内側に秘めた情熱を細やかなテクニックで表現するのが彼女の歌である。
歌謡曲を彼女の圧倒的な表現でカバーするライブ配信も時折見ていた。
僕にとって音楽は好きなものを目の前に並べる感覚に近い。
その時一番好きな曲をずっとリピートする。彼女の歌を聴く機会は当然増えた。
STARS / 中島美嘉(フル)【歌詞付き】Covered by GBG
僕はついさっき知ったのだが、小出美里さんがいやな事件に巻き込まれたらしい。
路上ライブ中にCDの目の前で踏まれたというのだ。
その模様がインターネットに動画で拡散され、炎上。彼女についても様々な声が挙がったという。
ここからは僕の賛否両論あると思うがストレートに書く。
まずは、CDを割った方へ思うこと。次に小出美里さんについて
である。
路上ライブについてだが警察の許可がなく、開催していたことは褒められたことではない。通報だってあるだろう。
そこに自警団的な発想でしゃしゃり出てくる理由とは何なのだろうか。
物事には必ず裏があるきっと過去に何か嫌な出来事があったに違いない。ただし、それを他人に押し付ける権利は誰にもないのである。
課題の分離が出来ていない。路上ライブをやっているのが許せないからCDを目の前で割った。
明らかに発想がぶっ飛んでいる。
自分が許せないからといって、彼女が努力して作ったものを壊していいのは道徳として間違っていると思う。
例えば、今回の方が好意を持っている相手にブランド(何でもいい)の小物を渡したとしよう。その結果、そのブランドが嫌いだからという理由で、目の前で壊されたらどんな気分になるか。
決していい気分はしないだろう。
ちなみにネットがここまで進化しなければ、CDを割るというパフォーマンスには出なかったように思う。動画を上げるが前提に来た発想自体は別に悪くないのだが、あまりに品がないとは思う。
今回の一件に関しては、小出美里さんにとって不幸なエピソードだったと思う。
怖い、怒り、悲しみ。
色々な感情が浮かんできたと思う。ただ、小出美里さんはアーティストだ。
そのあなただけの経験を曲にして欲しい。恨みを歌うわけではない。どうすれば皆んなが平和で楽しく生きることができるのか。
ラブ&ピースを歌に込めて欲しいのである。
小出美里さんの歌にはそのパワーがある。路上でのパフォーマンスを続けるほどにはじめは少なかったツイッターのフォロワーも1万人を超えるほどに成長した。
彼女の歌には力がある。僕はそう信じている。
そして、彼女を応援する人はこれからもっともっと増えるはずだ。
だって、仕事に追われてセカセカしていた僕が、人生で初めて耳で恋をした女性シンガーなのだがら。