ちょっと古い事件ですが、東京都渋谷区のパティシエが人気アニメ「鬼滅の刃」のキャラクターを描いたケーキを無断で製作・販売し、著作権法違反の疑いで書類送検されたという報道がありましたよね。
このケーキに描かれたイラストは「鬼滅の刃」のキャラクターと同一であるため、著作権侵害が成立する可能性が高いとして摘発されたわけですが、こういったケースは全国、いや全世界のケーキ店で同じようなことやってますし、SNSで宣伝されることもありますよね。これらの行為も「著作権の侵害」ではあるのですが、「それ、犯罪、ダメゼッタイ」っていうほどのものなのでしょうか。
著作権侵害は、著作権者の許可なく著作物をコピーしたり公開する行為を指します。キャラクターケーキの場合、著作権法30条に基づく「私的使用のための複製」に該当しない限り、著作権侵害となります。例えば、お母さんが子供のために作るケーキは私的使用にあたりますが、商業的に販売する場合はそうではないため、著作権侵害となります(もちろん、権利者から許諾を得ている場合は違法ではありません)。
著作権侵害は原則として親告罪です。親告罪というのは、権利者が告発しない限り、刑事訴追されないことを意味します。2018年の法改正で、権利者が告発しなくても、侵害しただけで刑事訴追されるというケースが規定されましたが、これは漫画などをデジタルコピーして原作のままアップロードしたりするという超悪質なやつです。これについては今回は詳説しませんが、参考リンクは載せておきます。
なお、モール型ECサイトなどで違法と思われるキャラクターケーキを扱う場合、プロバイダとしての責任を問われることがあります。
さて、今回のケースはキャラクターケーキに関する著作権侵害ですが、一般的にはこういったケースは黙認されることが多いのに、摘発された理由が気になるところです。
一部のネットニュースでは「見せしめではないか」という論調もみられましたが、私の感覚としては、「やりすぎだよね」ってことかなと思います。今回のケースは、具体的な態様として「ネットショップでの不特定多数への受注販売」と「2年で400万円の売上げ」が摘発の理由として挙げられています。これらは一線を越えたと判断された可能性が高いです。
この事件を受けて、キャラクターケーキ即ち悪、というわけではありません。そもそも、何かしらクリエイティブな活動をしている人であれば、多かれ少なかれ他人の著作物に依拠した作品をつくることはあるはずです。ただ、それはあくまでも「他人のふんどしで相撲をとっている」という意識を忘れないようにすることが肝要です。
権利者から「やめてくれ」という警告があったら、すぐにやめるとか、許諾を得るとか、そういった真摯な対応が求められます。どう対応したらいいかよくわからんな、というときには気軽に専門家の意見を聞いてみる、というのもオススメです。
では、今日はこのへんで。下の絵はAIが考える「未来の世界の猫型ロボット」。