フクロウさんの記事が、善意のALISerのみなさんの通報によって吊るされ削除されました。とてもよい記事でした。悲しいことです。民意が、民意が暴走しています。ALISはフクロウを失いました。
複数人の通報によってノールック記事削除が可能ということは、ムカつくやつの記事には徒党を組んで削除させることが可能ということです。
インターネットは小学校の学級会で吊るされた社会不適合陰キャの最後の楽園だと思ってましたか?ざんねーん!まちがいです。ALISの運営の顔見てみろよォ!!!!リクあがりの陽キャばっかじゃねえか!!!信じてやがんだよォ!!!多数決の正義ってやつをよォ!!!!!!!!人間と人間がお手手つないでわかり合えると思ってやがるからゆっるいレギュレーションで遊ばせるんだろォ!?!??
無事復活したっぽいですが、フクロウのこちらの記事をうろおぼえでリミックスしたものになります。
フクロウ。昼間は高島屋デパート1Fの美容部員として真の美を追求しつつ、夜は探偵をやっていた。ひと口に探偵といってもたくさんのバーティカルに分かれている。ビューティ探偵、アフィリエイト探偵、レディコミ探偵、そして暗号通貨探偵。フクロウ。まだ組織に属していた時はアフィリエイト探偵を名乗っていた。
アフィリエイト探偵の仕事は単純そのもの。インターネット上に無数に溢れているアフィリエイト広告、それをクリックすると報酬としてトークンが支払われる。フクロウが稼業をはじめてすぐの頃は、ワンクリックわずか0.08615326 JPY。プレゼンスをあげるにつれ、徐々に単価が増えていった。すべては順調。しかし足りなかった。
フクロウの欲求は底なし沼のようだった。ある日フクロウは、思い立って奴隷を雇うことにした。奴隷のショッピングサイトでたまたま目に留まった、フクロウと同い年の華奢でじっとりと湿った眼を2つ持った男。フクロウは42歳になるまで、神様だの天国だの、清廉で取り澄ましたものが好きにはなれなかった。
「何でもします、あなたの望むことならば」
奴隷市のバナー広告に書かれた簡素なキャッチコピーには幾分も心を動かされなかったが、奴隷のオーナーへの暗号資産の国際送金と、規約事項への同意と、そのあと幾つかのクリックで購入処理を済ませている間じゅう、フクロウの頭の中ではそのフレーズが何度も何度も繰り返された。
「何でもします、あなたの望むことならば」
フクロウは42歳になるまで神様だの天国だの、清廉で取り澄ましたものが好きではなかった。自分が地獄から生まれたことについて、考えを巡らせたことがなかった。
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クリック奴隷を幾人も増やし、探偵稼業での”収益”は雪だるま式に増えていった。その裏で、美容部員の顔を捨てることもなかった。いつものように、クラランスの新作美容液を顧客の顔に塗りたくる傍ら、奴隷たちの指先の稼働率を監視する。毎日が退屈で、雪だるま式にキャッシュフローが肥えていく。それはいつしか1人の人間の”稼業”を超えて、まるでビジネス自体が何かおぞましい意思を持ってうごめく”生き物”のようだとフクロウは感じていた。
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”奴隷帝国”の崩壊は多重に張り巡らせていたフクロウの想定と対策をすり抜け、足音もなく訪れた。口火を切ったのは最初の奴隷。頭部から脳幹に直収していたコンソールを引きちぎり、年季の入ったマウスを放り投げ、とろんとした目、雇い主、探偵、男、フクロウに訴えた。
断片的な奴隷の悲鳴を繋ぎ合わせると、おそらくこんなことを言っていた。
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奴隷契約を切りたい、これからは時間を金に換えるんじゃない、自分の記事を評価してもらう、革新的なアルゴリズム、広告モデルは終わりを迎える、良質な記事を推薦、信頼できる記事を抜粋、自分で商品を作る、トークンエコノミー、トークンエコノミー?不労所得、資金調達、まだ探偵稼業で消耗している?まったく新しいソーシャルメディア。ステルスマーケティングの排除。ブロックチェーンビジネス?
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フクロウは思った。近頃ネット上に溢れている、ボンクラの若者向けにありもしない働き方の幻想をいただかせるタイプの広告を使った薄い麻薬。それらの煽り文句のありふれたクリシェだった。奴隷たちの脳幹を並列に繋いだネットワークセグメントの深奥に構えていた4つ目のファイアウォールを迂回して、ワードを媒介とするマルウェアだか何かが、奴隷の大脳野に着弾・感染・展開したらしい。フクロウは暴走した奴隷のキルスイッチを手早く切ったあと、ネットワークから隔離すべく、つい先ほどまで奴隷に繋がっていたコンソールのモニタを覗き込んだ。点滅するモニタ。奴隷が最期に開いていたブラウザにはまるで奇妙なサイトが表示されていた。アクセスを許可したドメインではない。alis.to。
フクロウは42歳になるまで神様だの天国だの、清廉で取り澄ましたものが好きではなかった。そして、自分が地獄から生まれたことについては考えを巡らせたことがなかった。