日本の民主主義は死んだ。
少子化対策の舵取りの失敗で死んだ。
初見殺しのクソゲーだった。
グローバル化して情報に溢れどこにでも旅行ができ、人生の選択肢が増えた。その勢いが立ち上がるところで、政府が国民に子供を持つ理由を与えられなかった時点で、この問題は詰んでいるのだ。初見でクリアできるわけがない。
すべての日本の社会問題は高齢化から来るので、真面目に議論しても無駄だ。高齢化を魔法のように解決しない限り、表層的に問題を解決しても全ては再び形を変えてぶり返す。
迷惑かけずに安く楽に死ぬ方法を国が勧めたとして、高福祉政策が進む向きはもう変わらない。大局で負け戦のなかの最適化施策に過ぎない。
高齢化した社会は民主的な手続きでは内からは変わらない。
移民を入れまくりつつ、資本主義がデータを収集したがる慣性をそのまま利用して、監視社会化を徹底することで治安の悪化を同時にケアするくらいしか方法はない。
しかし一方で、監視社会で革命が難しいのは香港とウィグルを見れば明らかだ。監視資本主義が向かう先は自由とは対局だ。
さて、これから記すのは日本が高齢化で潰れるまでの20年そこらを、絶望と閉塞感ではなく、希望と開放感で過ごすための念仏だ。
唱え続ければ、日本で連日起こっているタチの悪いコントのような事件も笑ってみていられる。
唱え続ければ、忌々しい衆愚政治を「内側からは解決できない高齢化による衰退の副症状だな」と受け流せる。
唱え続ければ、「暗号通貨を使う人が増えた社会ってめちゃくちゃにならない?」という問いに、言い淀まなくて済む。
本質を見るための念仏だ。
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以下、今後の日本に想定される類型と、その類型に陥ったときに想定されるシナリオ。
A. 移民受け入れでフランス型社会へ
A-1. 産業のAI化で「中産階級の夢」は再現不可
A-2. 文化破壊と治安悪化と排斥運動
B. 移民低調+若年層労働拒否
B-1. 安楽死法案(i.e. 定年死刑)
B-2. 増税、公共財劣化、国外逃亡の増加
B-3. 借金漬け外交による侵略統治
C. 資源技術革命
C-1. 人工肉や安全な遺伝子組み換え食品の充実による生活コスト減
C-2. デザイナーベビーやパワードスーツによる医療福祉コスト減
C-3. 可処分所得の増加による人口ボーナス再開
C-4. 人口増が技術による資源増を上回ると類型Cから外れる
D. 戦争
D-1. 他国から奪い、従え、露骨に搾取することで自国の糧とする
Option. 監視型独裁化
Op-1. 香港型デモ
Op-2. 中共ウィグル型洗脳
類型Aでも類型BでもOptionはいずれかのタイミングで発動しうると考えている。
類型CとDは期待するほど派手には起こらないと想定している。科学で解決できればそれでいいが、人間と科学は相性が悪く、倫理的に気持ちが悪かったり政治的に都合が悪いと普及がストップする点で期待を低くしている。
アメリカは類型A+Optionにすでに進んでいる認識だ。しかも医療費はバカ高い。
中国はこれからとてつもない高齢化が来る、未富先老という。類型B+Optionになるだろうか。倫理観を捨てて類型C+Optionも全然ある。
アフリカもグローバリゼーションの余波で都市の出生率は下がっている。
世界的に人口減に転じるだろう。
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どのシナリオであろうとも、私は構わない。
なぜなら、パブリックブロックチェーン以降の世界では国民の政治に対する選択権(i.e. 普段は徴税できない別の経済圏で労働と消費を行え、税使途と財源が紐付いた納得できる税のみ課税を受け入れる技術)が増したからだ。
あるいは、国を出る、それか作るコストが下がったからだ。
課税不可能な中心のない商圏が現実にオーバーラップしてくる世界観で、国に依存しない金融システムに蓄財する人々が増えたとき、独立のコストは極めて低くなる。
ロバート・ノージックが著作「アナーキー・国家・ユートピア」で展開した、「最小国家を基盤にしたそれぞれの特徴をもつユートピア群を人々が選べる世界」に類するネオリベラリズム的な選択肢が増えたと解釈できる(※勘違いしやすいが、決して国家を否定するアナーキズムではない)
たとえば、ブロックチェーンフリークたちが好きそうな例でいうと、生活費をミニマムにして、メタバース(VRの世界)に生きることを選ぶ国家があり、それに皆がこぞって移住することも全くもって妄想などではない世界になるだろう。
ちなみに私はこの手のファンタジー寄りのアイデアは「人類のアベレージな倫理観ではそれを受け入れないから」と、普段は好まないが、メタバース国家に関しては実現可能性が高まってきており倫理のクリティカルマスを超えられるのではという気はしている。
「国防費を最小化する技術」が、これから起こる「民主主義の歳差的脱皮現象」に私個人としての納得を与えるパズルの最後のピースに見えている。
ビル・ゲイツが2018年のベストブックに選んだ「無人の軍隊 Army of None」にあるような現行のAI軍事機構を更に安価に高性能にしたものさえあれば、脱皮の難易度は限りなく下がり、歳差の頻度は限りなく上がる。
たとえばメタバースに特化した国は国土もインフラもミニマムでよく、対外的な防衛とスパイ工作にのみコストを投入すればよいので、このシナリオによく馴染むだろう。
国家が終末を迎えても、文化も土地もその場に残るわけで、古い仕組みだけを極めて静かに置き去り(脱皮)にして、パブリックブロックチェーンベースの国家と国際秩序が構築されていくと私は予測する。
脱皮は必ずしも一国全土を置き換えるものではなく、例えばカタルーニャの独立やカリフォルニアの独立のようなものをきっかけにして起こるだろう。公共財を維持できないエリアから都市に人は移り住まざるを得なくなり、手薄となったエリアこそ脱皮が容易な土地だと考えられる。
これが、仕組みが古くなるたびに訪れる(歳差/「コマの回転の減衰で大きくなる軸のブレ」を生む力)。
なるべく長くコマが回るように工夫しながら、同じ土地でコマを回し続ける図をイメージすると良いのではないだろうか。
民主主義も資本主義も終わったわけではなく、一度終わって始まるだけなのではないか。
この、「民主主義は自壊する定めだが、その度にしがらみを洗い流し、よりよい民主主義としてやり直し、その過程で起きる混乱の人々への被害は暗号通貨が守ってくれるであろうと期待する政治志向」を「アニーリング・デモクラシー(焼きなまし民主主義)」と名付けようと思う。
私は、歳差的脱皮の果てに、国家と国際秩序は極めてトラストレスで無駄のないものになるだろうと予想する。
(※脱皮による社会の混乱に対する批判は、今後なされるべきだろう。欧州の戦争は貴重なワインの多くを失わせた。脱皮に際して失業率が増すような杜撰な計画であってはならない。シームレスに経済圏をバーチャルに移すことが好ましい。これからの国家の独立は、ある地域市場規模の拡大維持機構も、ある公的組織の予算使途の意思決定機構も、ある地域の防災国防インフラの維持機構も、稼働させたまま、その地域に司法・立法・行政という国のOSをオンチェーンにデプロイし、音もなく成されるべきだ。)
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この世には「ハマる」という状態がある。
合成の誤謬、囚人のジレンマ、コモンズの悲劇などと名前がついていて、「民主主義における高齢化と若手の絶望(高福祉のジレンマ)」もそれに類される。
民主主義で内側から高福祉のジレンマを解決することは原理的に可能なのだろうか?また、血を流して戦争や革命を行うだけが道なのだろうか?
倫理学のトロッコ問題に近い構造で、レバーは倒されたのに、誰がレバーを倒したか分からず、誰も責められることがないという方法がアニーリング・デモクラシーなのだと考えられないだろうか?
onlyCourt modifierというものを仮定しよう。
これは任意の状態遷移に対して、ある署名の存在がなければ否決するようなフィルター処理だ。
その署名はその国の裁判所の陪審員等による秘密鍵であり、そのmodiferの対象となる状態遷移は、その国に閉じた財産および権利の移転を表すものとする。
法治的な手続きによって修復可能な状態遷移こそが国の基盤になるだろうと予想される。
不完備契約の問題や、ブロックチェーン全域に渡るロールバックの議論に対する回答として妥当だろう。
共産主義と福祉国家は、為政者の視点からすると魅力的かもしれないが、ブロックチェーンエンジニアの視点からするとトラストに頼っている部分が大きい。
フォーク定理を真と仮定できる環境でなければ繰り返しゲームは裏切りに終わる。
その点で資本主義はトラスト最小化と相性が良い仕組みであり、未だ死んでいないし敵視するものでもない「市場原理」という道具だと思う。
市場原理を公理としたパブリックブロックチェーンに人権を扱うことはできるのかという指摘もあろうが、それの上に立つ国家は人権を公理とするため、問題ではない。
あくまでDAOで国を置き換えるのではなく、国をon-chainにするイメージ。
ちなみにフリードマンを援用したノージックの言によれば、夜警国家はより分解できるとのことだ。ブロックチェーンエンジニア的に言うなれば、武力DEXのクーポンを貧しい者から順に再分配的に配ったものが国防である、ということだ。
北斗の拳のラオウが武力を販売しつつ、貧民には優しくするならば、それは国家なのであり、武力の対外的でプロアクティブな利用が軍事であり、武力の対内的でリアクティブな利用が警吏であろう。
(※このノージックの説明の穴をあえてあげるなら、脱税が多いと武力が高価になる。クーポンが足りない人々は法の保護からも侵略からも無防備になる。武力を買えないという個人情報は命と等価になる。)
ブロックチェーンに国を載せられるならば、国は人権を公理とするために、サイファーパンクも人権を扱えると言えないだろうか?
衰退する国家に対して、匿名で蓄財する「匿名の王」が東アジア地域に君臨し、彼が機を見て離島で武力DEXとクーポンを開始するならば、あまつさえ核を持つならば、アニーリング・デモクラシーが示唆するところもより現実味を帯びてくるだろう。
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Facebook初期メンバーで今は米国の政治に関わるクリス・ヒューズが提唱する富豪の寄付によるUBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)については、今のアメリカに限り全員に$500相当のボーナスを毎月出せるが、基本的に持続性がない。
外国人との子にUBI受益権がある限り無限にexploitされることは想像に容易い。
地方は60~70%を東京の税収に依存している。つまり、税収が減る力学になるならば、地方への交付を減額する向きがあってもおかしくはない。アニーリング・デモクラシーの議論が示唆するところは、地方の切り捨てを加速するのではないだろうか。
私が思うに、この世界観では地方での公共サービス(堤防修繕等)は税が取れないのでクラウドファンディング等で本当に必要な箇所にのみ行われるだろうと思う。都市設計だなんてオシャレなものはなく、企業の思惑で街はできる。市場のない土地は不便であり続ける。大学や軍事基地が地方経済をうるわすことはない。市場原理にしたがって、「ある暗号通貨世界の組織にとって、治水をすれば工場の最適立地が手に入るとき」などは運良く治水は行われたりもするだろう。
地方の人々は国から分離独立すれば、オープンソースに置いてあるブロックチェーンベースの政治ツールで国の基盤を再構築できるが、国防や警吏を維持するには5兆円程度の予算が通常必要で、小国として効率よい運営、政治、GDP維持などが求められる。(アイスランドの国防費は10億円らしいし、AI兵器もすでにあるので、やりようはあるだろう。詳細は次回以降の記事で扱うこととする。)
上記の世界観においては、無駄な道路やダムへの公共投資は減り、儲からない土地は放棄され、誰も残れない。人々は自分の地方の経済だけを考えて、経済を拡大していく必要がある。一般に、人間は身近な課題にしか関心を持てないので、そちらのほうが意外と理にかなっているのかもしれない。
いずれにせよ、アニーリング・デモクラシーの流れがなかったとしても、今の世の中でも人々は田舎から都市に移住しえているから、アニーリング・デモクラシーはその傾向を加速させているだけではある。
また、多くの地方が独立したとき、戦国時代のような藩同士の戦が起きないようにしなければならない。
さて、高齢化はどうなる?
より直接的には、数十年後の私と家族の扱いはどうなる?
おそらくアメリカのような社会保障が薄い社会で、自助努力で生きていくことになる。
2000万貯めとけという話だ。
あれ、どこかで聞いたことあるような…?
放っておいても自助の世界、ブロックチェーンが流行っても自助の世界なら、ブロックチェーンだけ批判される言われもなさそうですね。
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1. ジェームズ・ブキャナンの「赤字の民主主義」にある、「官僚機構はパイを広げるために赤字国債発行(通過発行)で肥大化する」のくだりがあるが、アニーリング・デモクラシーにおける「一度死んだ民主主義国家が再建したもの」という対象について、「通貨発行権を持たない国家として再建する」という条件を加えると、ブキャナンの言うようには赤字国債で肥大化しないと棄却できないか?
→ 確かにそれなら肥大化はしなさそう
2. 通貨発行権を持たず、税収も乏しい自治体が、必要最低限の軍事力を維持できるのか?
→ AI兵器の3Dプリンティングが安価だろうと思われる。米国では銃規制の議論があるが、残念ながら藩、企業、ギャングなどのレベルで、武力を持つようになり、互いに牽制しあったり、より大きな武力の安保圏に入ったり、宗教や言葉の違う武力に対しては共闘したりするのではなかろうか。
3. 匿名の王(Amazon規模)がメキシコのカルテル的な立ち位置のハイテク軍備を持つことは想定できないか?
→ AI兵器の大量生産でヤバいことになる。ほうぼうと安保条約を結んでみかじめ料を取り、自分の推し通貨の流通を強制する。
4. 民主主義が一度死ぬときに、貯蓄のない非生産人口を見捨てるということになるが、あまりにネオリベラリズムすぎないか?
→ アメリカも、「2000万円貯めとけ」の日本も一緒。
5. クラウドファンディング型のテロライブ配信が流行るのでは?(例: 「このアドレスにお金くれたら、3DプリンターでAIコントロールの銃搭載ドローンを作れるだけ作って霞が関に撒きま〜すw」のような匿名の輩)
→ この業界に入った初期からずっと対策を考えている。ブロックチェーンにまつわる現象は政治思想ではなく自然現象なので、私個人がそれに否定や肯定を示しても本質的解決ではない。防災活動に近い心構えが必要である
6. クラウドファンディングで匿名の王に勝てるのか?
→ 悪意の塊が匿名の王の武力なら、善意の塊がクラウドファンディングによる軍や警察であり、それは正しく動き邪悪を継続的に封じ込めなければならない。
7. 「善意の軍」がクーデターを起こしたら?
→ 例えば、匿名の王に対抗するために組織した「善意の軍」の、徳の高い指揮官が匿名軍に暗殺され、次官が人間性に難があり、他の管理者た結託してクーデター起こし資金を奪い、彼らが匿名の王になったとしたら… 善意で投資した我々に余力はないかもしれない。
高齢化も、監視社会も、暗号通貨の浸透も、長期で見て止まらない流れであろう。
止まらない流れどうしの組み合わせとif分岐を何度も考えた結果、上記のパターンが残った。
批判は歓迎で、面白い角度から殴られるのを楽しみにしている。