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ビットコインを超えてーーマネーを私たちの手に取り戻すために

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  • タカハシシンサク
  • 2020/02/17 00:10
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今から20年ほど前、日本を含む世界中で地域通貨ブームが突然勃興しました。現在の社会問題の根本には貨幣システムの矛盾があるーーそのことに気づいた大勢の人々が旧来の貨幣による支配から逃れるため、自分たちのためのマネーを作ろうと世界各地でさまざまな模索をはじめたのです。

2009年、大きな衝撃とともに登場したビットコインもそうした地域通貨ブームの余波の中から生まれたものでした。けれど、ビットコインとそれに続いて誕生した多くの仮想通貨は、地域通貨と同じ貨幣権力の民主化という衣をまといながらもその根本的な思想において地域通貨が掲げた理想とはほど遠いものでした。

そのため、登場直後は地域通貨関係者をふくむ貨幣改革論者にもそれなりの期待感をもって迎えられたものの、しばらくするとそれらの多くは化けの皮がはがれ、やがてただの投機対象と化してしまいました。そうして貨幣権力の民主化を促進するどころか、かえって貨幣権力の強化に貢献するだけという皮肉な結果に終わってしまったのです。

しかし、たとえそうであったとしても貨幣の民主化という地域通貨が掲げた理想はいまもなお色あせてはいません。むしろ真の貨幣改革は、仮想通貨をめぐる狂騒がひと段落した今、そして欲の皮が突っ張った者たちがそこを去りつつあるこれからが正念場といえるでしょう。

そんな今だからこそ、原点を振り返ってみるのも大切なのではーー。そんな思いを込めて当時、私が構想した地域通貨システムをここに紹介したいと思います。

これは2000年頃、東北地方の某町の街づくり研究会に参加した私がその成果としてプロジェクトチームに提案したものです。

基本的な仕組みは江戸時代の藩札にも似た財担保型のそれであり、中央集権的なLETSと非中央集権的なWAT、それぞれのいいとこ取りをした折衷型のシステムです。さらにちょっと誇大妄想的なことをいわせてもらえば、戦後の国際貨幣システムのあり方を討議したブレトンウッズ会議で葬り去られたケインズのバンコール案にも似ているかも、と個人的に考えております。もちろん開発当初からそれを意識していたわけではなく、結果的にたまたま似てしまったというだけの話ですが‥。

締め切りに間に合うようほぼ徹夜で仕上げたものなので、今読み返してみると表現がこなれていない部分が多々あります。あまり読みやすい文章ではありませんが、とりあえずそのまま掲載いたします。

どうぞご笑覧ください。そしてこれをヒントに新しいアイディアが生まれ、そしてその結果、もしかしてこの社会をよりよいものにするサービスや仕組みが世界のどこかに誕生するのであれば、それは望外の喜びというものです。

アイディアの断片をSNSに投げかける。それは誰かの目に留まり、やがていくつもの化学反応を引き起こす。そうしていつか世界のどこかに新しいサービスが大輪の花を咲かせる。誰が蒔いたタネなのかはもはやどうでもいい。その分、世界が豊かになったのだから。 by 自分
 

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地域通貨とは?

地域通貨とは、ある一定地域でのみ流通する法定通貨以外の「貨幣」をさす。現在、世界で約2000以上、日本でもおよそ150以上の地域通貨運営グループがあるという。

基本原理は多角間の物々交換

地域通貨の基本原理は、多角間バーター取引である。要するに、物々交換の発展形だ。代表的なのは、カナダのマイケル・リントンが1980年代にはじめたLETS(Local Exchange Trading System)である。このシステムの最大の特徴は、どんなに取引が活発化しても、全体の貸し借りの総和は常にプラスマイナスゼロになることだ。なぜなら、このシステムにおいては、利子はつかないし、そのため、物財と貨幣の量は常に対称性を保っているからである。

歴史

地域通貨の歴史は少なくともイギリスのオーエンの労働証明書やフランスのプルードンの交換銀行にまでさかのぼる。一般の人々の関心を集めるようになったのは、世界大恐慌後の1930年代である。当時、景気対策の一環として、ドイツやオーストリアの一部で地域通貨が導入されたのを皮切りに、やがてアメリカやカナダなどにも導入されるようになった。それらの試みは、一定の成果をあげたものの、貨幣発行の独占権を主張する中央政府によってほどなくして禁止されてしまった。

現代の「結い」

日本にもかつて「結い」と呼ばれる地域通貨に似た仕組みがあった。「結い」は農繁期における相互扶助の仕組みとして発達した日本独自のシステムであり、戦前まで全国各地の農村で普通にみられるものであった。

一方、現在はIT技術の進歩を背景にワークスタイルが大きく変化しつつある。象徴的なのは、大企業における巨大組織の歯車として働くのではなく、小規模な事業所で身の丈に合った働き方を模索する人がふえていることだ。だが、こうした小規模事業所にももちろん弱点はある。なかでも最大のそれは組織力の弱さである。すなわち、それぞれが独立した存在であるため、協業(コラボレーション)が困難であること、そのためみすみす目の前のビジネスチャンスを逃してしまうことだ。

ここに地域通貨のもうひとつの意義がある。それは、地域通貨が小規模事業者同士の協業を促進する手段として有効だということである。その意味で、地域通貨はいわばIT時代の「結い」、現代版「結い」といえるかもしれない。

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地域通貨の必要性

いまなぜ地域通貨が必要とされるのだろうか。そこには現代社会が抱えるさまざまな問題がからんでいる。それらを整理したのが、この図式である。地域通貨の全体像をとらえるには、われわれはすくなくともこれら三つのレベルからアプローチしなければならないだろう。

ひとつはグローバルなレベルである。ここには、南北問題をはじめ環境問題や人権問題、そして戦争といった地球レベルでの問題が存在する。これらの原因をさぐっていくと、最終的には利子経済へと行き着く。そして現在の利子経済というシステムを変更しない限り、これらの問題は解決不可能、というのが地域通貨の考え方である。

もうひとつはローカルレベルの問題がある。ここには、おもに地域の問題が含まれる。地域はいま経済的不況にあえいでいる。また都市化の進展とともに昔ながらのコミュニティが崩壊の危機にひんしている。これらの問題もまたその根底には利子経済が原因としてあるというのが、地域通貨の考え方である。

またこれまであまり注目されなかったことだが、地域通貨には事業レベルでの効用もある。それは、地域通貨がもつ組織化機能によるものである。組織化機能が、顧客に働きかければ、それはマーケティングでいう「囲い込み」になるし、取引先に働きかければ、それはコラボレーション(協業)促進策となる。

このように地域通貨が対象としているのはなにも地球レベルの問題ばかりではない。それは地域レベルの問題に対しても一定の解決策を提示しうるものだし、さらに応用次第では企業の販売促進や組織活性化の手段としても使えるものなのだ。

 

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利子経済は成長を強制する

私たちは、利子を当然のものとして受け入れている。だが、それが社会にどのような影響をおよぼすかを十分に理解している人はそう多くない。利子経済がもたらす問題。その最大のものは、それが成長を強制するシステムであるということだ。具体的に説明しよう。


Aさんが銀行から事業資金として100万円を借りたとしよう。年利は5%である。1年後には105万円にして返済しなければならない。そのためAさんは1年間、懸命に働いた。そのかいあって、翌年には金利分をあわせて105万円を銀行に返済することができた。

だが、この5万円はいったいどこから出てきたのだろうか。はじめAさんの手元には100万円しかなかった。ということは、他の人のところからもってきたものに違いない。ならば、その他の人はいったいどこからその5万円を手に入れたのか?

こうやって考えていくと、最終的にたどりつくのが、経済成長の問題である。それはどういうことかといえば、利子を返済するためには、社会全体が利子率以上に成長しなければならない、ということである。Aさんの例でいえば、Aさんが属する市場全体が年間5%以上の経済成長を達成できないかぎり、Aさんが借りた5万円は絶対に返済不可能だということである。仮に経済成長率が5%以下の場合、この5万円に関しては誰かが再びどこかから借金するか、あるいは誰かが破産の憂き目にあわない限り、全体としての帳尻が合わなくなってしまうからだ。それは単純な算数の問題である。つまり、利子経済というのは、金利以上の経済成長を続けない限り、崩壊してしまうシステムなのである。

利子経済がもたらすもの

だが、その一方、無理な経済成長は環境破壊をまねく。これについては、あらためて説明するまでもないだろう。また利子経済とは、つまりお金がお金を生むシステムである。そうしたシステムは必然的に貧富の格差を拡大する方向に働く。しかも、貧富の格差が開くことはたんなる倫理的な問題にとどまるものではない。貧富の格差が拡大すると、市場全体の有効需要が縮小する。有効需要の縮小は過剰生産を生み出し、やがて恐慌の到来を招く。そして恐慌の到来は、戦争の危機を高めることになろう。こうして、貧富の格差拡大は、企業活動にとっても、また私たちの日常生活にとっても重大な影響を与えることになるのだ。

お金が減価するという考え方

だが、利子のない貨幣システムなど実現可能なのだろうか? 利子そのものを完全になくすことは少なくとも現時点ではほぼ不可能だ。だが、それがもたらす弊害を軽減する方法はある。それが、ドイツの生まれの思想家、シルビオ・ゲゼルが提唱した「減価する貨幣」である。といってもそれはけっして社会主義の復活を意味するものではない。それはあくまでも市場にもとづいた市場経済システムである。むしろいま以上に市場主義的な市場経済システムであるといってもよい。20世紀を代表する著明な経済学者ケインズは、かつてこう語っている。「後世の人はマルクスよりもゲゼルからより多くを学ぶであろう」。
 

(続く)

※長いのでいくつかに分けます。好評であれば早めに続編をアップしますが、そうでなければそれなりに(笑)

※続編を含めた資料はスライドシェア上にすでにアップしてあります。ご関心のある方はそちらをご参照ください。

https://www.slideshare.net/shinichiroutakahashi12/edit_my_uploads

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