クリスマスの昼過ぎ、わたしはプラハのカフェバーみたいな店でパソコンを触りながらビールを飲んでいた。
ちょうどよいかんじに酔ってきた15時くらいに、店員が「閉店だ、早く会計済ませてくれ」と伝票を持ってきた。
「まあ、そういう店もあるんだな」と思って、店を後にして一度宿に戻った。
しばらくダラダラしてから「晩飯でも食いに行くか」と外に出た。
しかしなんだか街の様子がおかしい。
人があまりおらず、店も軒並み閉まっている。
アパレルショップ、薬局、レストラン、スーパーマーケット、いかにも年中無休そうなケバブ屋ですら閉まっている。
「これは意図しない断食パターンあるな」と歩き回っていると、クリスマスマーケットに人だかりができていた。
屋台はいくつか開いていたのだ。
「よかった、これで食糧にありつける」と、普段は絶対に並ばないであろう長く伸びた列の最後尾に陣取る。
しかし、会計を済ませずに列から脱落していく人がちょくちょくいる。
品切れを恐れつつ自分の番が近づいてきたが、大鍋を見る限りまだまだ料理は残っている。
ポークステーキと焼き野菜を頼む。
どうやら量り売りのようだ。
「こんなもんか?」というジェスチャーに「ハイハイ」と答えて会計をしようと思ったが、言われた金額にびっくりした。
「20ユーロね」
「え?なんて?」
「だから20ユーロよ、払わないなら後ろつかえてるから早くどいて」
なるほど、脱落者が出ていた理由がわかった気がする。
チェコの物価は基本的に安いので、20ユーロというのが法外な値段に聞こえる。
まさか屋台のしょぼい飯に2500円も払うことになるとは思わなかった。
言わずもがな味は大したことなく、焼き野菜の重量の大半は無駄に盛られた汁だった。
良い商売してるねえ。
「需要と供給」が価格を形成するのがよくわかった瞬間であった。
そういうわけで「ヨーロッパで過ごすクリスマスって素敵だわ」的なお花畑ちゃんはくれぐれも事前の下調べを行い、食事付きのホテルを予約するなどして挑んでほしい。