時計を好きになりたいすべての人のために。
『腕時計ロマンチシズム概論』絶賛公開中!
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■■■コラム「時計×〇〇」論■■■
時計を時計としてだけでなく、他の何かと組み合わせて考えてみましょう。誰かが時計を腕にしようと思わなければ、僕は生まれなかったかもしれないのだから。
アイボはご存知ですよね?日本の誇るSONYのアレね!これまで触れたこともなかったし、正直見くびってました。電気と機械がペットって!ははっ!って!
でもカフェで触れ合った新型アイボ、文字通り「新感覚」でした。本物の犬に寄せる技術者の努力とかを感じることも忘れるほど。僕はAIのすごさを改めて考えさせられました。これから人間はどこへいくんだろうと。
伝統への立脚と永続性へ価値の厳選を見出すのみでは立ち行かなくなるのでしょうか?製造の中にはもちろん、ブランディングやマーケティングへの介在は既に始まっていますし、販売においてもAI等のテクノロジーを駆使した形があります。(いつか紹介します。)そして時計という存在自体のガジェット化はますます進み、スマートウォッチという脅威は現実のものとなっています。
ただその流れが加速する…AIによって、効率的で革新的なロボットやその先の何かによって古いものが置き換わる… そんな単線の回路で考えて良いのでしょうか?そして、AIの存在意義とはなんでしょうか?
…僕は、人間に寄り添って人間では生み出せない価値を生んでくれることかなと思います。あくまで一例ですけど。
その意味で考えると、「今ある伝統的な機械式腕時計は、もしかして、AIの価値に真っ向から負けてはいないんじゃない?」と思うのです。どういうことか。
このアイボというロボットの性質は、以下のようなものがあるそうです。(新型の特徴も含めて。)でも、でも、あれ?時計もそれ、満たしてるよね?っていうツッコミを入れながら紹介します。
…確かに色んなものに反応してくれます。でも大切なのは、ロボットが好奇心を持つことではなくて、それによって人間の感性を揺り動かすことのはず。その点、時計なんてめちゃくちゃ好奇心を高めてくれますからね。はい合格。
…あごとか頭とかを撫でてやると喜ぶんです。すごい。けど、時計なんて四六時中ふれあえますからね。手首を通してその日のご機嫌とかコミュニケーションしあってるようなもんですからね。はい大丈夫。
…例えばアイボってピンク好きなんですって。人間味?があっていいですよね。けど、時計だって好き嫌いありますよね!磁気とか湿気とか嫌いだし、柔らかい布で拭いてやるのとか好きだし!喜んでるし!!ギリセーフ!
…アイボの視点から写真撮ってくれるんですって。これは面白いよね。すごいですよね。さすがに時計にはこれはできない。だけど、できることがある。それは、いつもどんなときも僕らと一緒にいて、様々な思い出のシーンに写りこんでくれること。卒業の日、結婚の日、就職の日、昇進の日、退職の日……思い出をともに歩むのは間違いありません。勝ち。
…これはルンバ等と同じ機能ですね。さすがに時計は自分で勝手に充電ポートまでいくことはないけれど、自動巻きを想定すれば、着用しているだけで勝手にゼンマイが巻かれますからね。余裕で自己充電できるようなもんですね。
…AIのすごい所はやはりこちらでしょう。ロボットという個体における学習を、そのシステム全体の糧にすることができる。これにより加速度的な進化が見込めます。機械式時計はどうでしょうか。もちろん、中には電池やコンデンサー、ICチップも入っていないわけで、電子的なデータは存在しえません。ただそこにあるのは、機械的な行為の結果の積み重ねです。ですが、これは例えばオーバーホールのタイミングでメーカーがその積み重ね・状況を観察し分析することで、今後のより良い商品開発に活かされていると言ってもいいのではないでしょうか?僕らの今日つけた小傷は、ただこの時計の痛みとしてだけではなく、明日の、来年の、10年後のより良い時計につながっているのです。
機械式時計はただの金属の塊だから、それ自体に心なんて、感情なんてないという人がいます。いや、事実そうかもしれません。けど、イメージしてみてください。
自分がつらい時ふと時計を見ると時計の針が下がり気味だったり、まるで泣いているような時がありませんか。
逆に楽しいことがあると、時計は自分の存在なんてすっかり消して楽しむことに目一杯集中させてくれる、そして僕らに嫉妬するみたいに大急ぎで時を運んでいってしまったりする。
帰り道、ちょっと寂しい気持ちで時計を見た時には、確かにそこに存在した、楽しかった時間のことを「今」とのつながりの中で僕らに教えてくれる。
そう考えたら、AIとは程遠いシーラカンスみたいな金属の塊である機械式時計は、実はすでに僕らの心に寄り添ってくれて、僕らでは生み出せないものを僕らに沢山くれているのではないでしょうか。
アイボからそんなことを教えられた僕でした。ありがとうございました。