日高課長の夕食会を乗り切ったワイン氏
しかしチーム会議で日高課長の悪い噂を聞く。
日高課長は一体何者なのか・・
私は某メーカーさんへ派遣法に基づき派遣されている。
現在は4社目のメーカーへ参画中。
ここでさらっと言うが、上記に書かれていることは派遣労働者への採用合否を決めるため(特定する為)の面接を派遣先は法律で禁止されていると言う事だ。
だが実際は面接ありきで進む事が多い。顔合わせだとか言いながら、後日合否の連絡をすると言われる。
完全に違法であり「労働者派遣法第26条第7項・派遣先指針に違反」で派遣先へ行政指導が入る案件だ。
この行為は今まで当然の様に実施されていた。だがその違法行為を個人として見過ごすのではなくしっかり派遣元へ違法である事を伝えており、そうやって事実を伝える事で今まで幹部に右に習えだった上司も少しずつ考え方を変えてくれた。
少しずつだが、派遣先へのクライアントも理解してくれる様にもなったが、そうも行かない企業も多い。
逆らうと他の契約にも影響があるし、そもそも契約しませんとなる可能性がある。
ちなみに私は4回とも顔合わせという名の合否を判定され合格して今の仕事をしている。
しかし、この派遣法自体が本当に正しいのかも疑問に思っている。雇う方からするとどこの馬の骨かもわからぬ人材を雇い入れ、全く使えなかった場合また新しく人材を迎え入れる。その為のコミュニケーションコストや、教育コスト、機会ロスなど様々なコストが掛かる。
確実な評価基準があれば雇う側も楽だろうし、確実に即戦力を雇えるだろう。
そういった社会問題を解決するベンチャーとかが出てくると面白いと思う。
日高課長の非常識な行動が同行するとわかると言われ、日高課長との同行が来る日をビビりながら待っていた。
しかしその前に、私の担当エリアが間宮さんのエリアを引き継ぐ予定だった様で先に間宮さんの引き継ぎ同行を2週間する事となった。
間宮さんはとても明るい九州の出身の方で後輩の私へもとても気遣いをしてくれ優しい先輩である。
そんな間宮さんと車で同行する事となった。
同行の朝は早い。
私の家の前に6時半に集合。
それから1時間。
医薬品を販売してくれる卸さんに着く。
卸さんはその地域に4社程あり、その4社を朝の7時半〜9時半頃までに訪問し、自分の医薬品の販売状況や各施設の採用状況、シェア、戦略、様々な情報を交換する。またメーカーから販売してくれた卸さんに支払うアローアンスやフィーの話、価格以外の部分での優位性をしっかり伝える説明会の時間を貰ったりと様々な仕事をこなす。
この卸さんを味方につけているMRかどうかで実力がだいたいわかる。
卸さんの営業の方をMSと言うが、MSは医療機関に強いMRと組みたがる。
要はMSが仲のいいMRは医療機関へも強い証拠にもなる。
この卸を訪問するのは30社〜50社はある。都心ならもっと多いだろう。
これらのメーカーからMSさんに組んでもらえる様に勝ち残らないといけない。
勿論、誹謗中傷やありもしない事を吹き込まれたり、騙し合い、足の引っ張り合いが起こる。
人間の汚いもの全てを医薬品業界で見れるのだ。
そこで間宮さんはどうだったかと言うと・・・
ほぼ無視されていた。と言うか私と初めて行ったMSさんから言われた一言はこうだ。
MS「お前、誰?何しにきたん?担当者だったけ?」
いきなり、不穏な空気。相手は当時課長のMSさんで他のMRからも一目置かれる様な存在の人だった。
間宮「すいません。担当が変わることになりまして」
課長MS「あっそ。まあ、新人君よろしく」
ワイン「よろしくお願いします。」
課長MSは冷たい言葉で軽く挨拶された。
一体何があったんだと感じるほどだ。
その後間宮さんに問い詰めても、いつもあんな感じの人だからとはぐらかされた。
その後11時頃まで近くの喫茶店やファミレスに入り、内勤業務が始まる。
前日の報告や提出物、調査書類や医療機関との契約がある場合はその処理など
人によって様々な作業をする時間だ。
11時ごろになると1軒目の訪問が始まる。
訪問し、挨拶をするのだが医師の反応が先程の課長MSとあまり変わらないくらい冷たい。
その後そういう冷たい態度の得意先が多く、間宮先輩は一体どんな仕事をしてきたのか疑問が浮かんできた。
そんな引き継ぎ同行1日目が終わり自宅へ送って頂いた際に、日高課長から電話があった。
日高課長「お疲れ様。初日引き継ぎどうだった?」
ワイン「はい、疲れましたが、刺激的な1日でした。」
日高課長「間宮は仕事してたか?怒られてなかったか?」
ワイン「え?まあ、してたかと・・・」
日高課長「まあ、言いにくいよな。仕事してないから怒られたり、冷たい態度取られてなかった?」
ワイン「はい、正直言うと少し怒れてた事はありました。」
日高課長「実は君には伏せてたんやけど、間宮が担当してから競合に大口をどんどん取られて、シェア逆転されてるんだよね。そういう地域だから頼むわな。」
ワイン「え〜〜〜〜????そうなんですか!!!!」
日高課長「だから今回の君のミッションは顧客信頼回復とシェア奪還なのでよろしく。」
ワイン「あ・・・はい・・。」
そんなボコボコにされている地域を任される事になった私だがなぜ新人の私なのだ?と言う疑問が生じた。挽回を目指すなら優秀な人間を送り込めばいいのではないかと考えたのだがそれは甘い考えだった。
この会社で誰もシェアを奪還しようと考えている人はいないのだ。
一度シェアを取られると、奪還するまで信用を蓄積するのに時間がかかり、その間の評価は最悪になる。
そうなると正社員の方はボーナスは下がり、昇格は遅くなり、出世出来にくくなる。
これが大企業病である。
そんな時私の様な外部の人間に任せ、自分たちの評価に関係ない所で上手く行けばラッキーと行った所だろう。
役人の様な考え方は企業にも蔓延している。
日高課長は策士で全て自分の利害で動くのが彼の真実である。
しかしこの時はそんな事を考える余裕もなく、とにかく信頼を回復する事に必死だった。
そして
引き継ぎや同行も終わり、自分一人で仕事を始めた頃、得意先で製品の説明会を取ることが出来た。
説明会はお昼の時間に時間を20分くらいもらい、お昼時間の為こちらでお弁当も用意する。金額は会社にもよるが、当時で3000~5000円くらいまでのお弁当を用意している企業もあった。
完全に世間の感覚からズレているのである。
医師の感覚とはこんな感じで高級弁当が出てきて当然。こういう医師は多かった。
弁当の良し悪しで薬剤を採用するかを決めるとか言う医師も現実にはおり、終わっていると感じたのは言うまでもない。
医師の立場から言うと同じ様な薬を2社、3社とかで出してきやがってと思うのも正直わかる。現在もそうだが、製薬メーカーは1つの薬剤を名前を変えて併売し、シェアを一気に取りに行く。2社以上で売る為コストやリスクを軽減するメリットもある。
その為同じ様な差別化のない情報をひたすら医師へ浴びせる。
そりゃあ、弁当だけで決めるって言われても仕方ない様な気もするが。
少し話を戻すが、説明会の為のお弁当をどこで頼めばいいか。わからない為、当時頼りにしていたMSさんから美味しいハンバーグ屋さんを教えて貰った。
しかしそのハンバーグ屋さんでまさかの展開が・・・
間宮先輩の仕事ぶりと日高課長が策士であることがわかったワイン氏
さらに汚れた医療業界を知る事になる
次回:信頼を取り戻す方法
作者