※ 1~2分で読めるエッセイです。
20代のころ、小説を書いていると言うと絡まれることがあった。
まず、よく絡んできたのはサラリーマン。
サラリーマンがからんでくるのは理解ができる。彼らは、どこかの組織に所属し、月給をもらう生き方以外は理解できない。理解できないからこそ、組織や月給に縛られない生き方を羨ましく思い、自分達の生き方を否定する存在として恐怖もし、そして憎んでいる。
それから、サラリーマンの次に多かったのは、意外かもしれないがライターだ。
どうしてライター達に絡まれたのかは未だに分からない。
正直に言うと、文章のスキルは上は文学から下は便所の落書きまで、ヒエラルキーがあると思っている。でも、それぞれの階層に専門性があり、面白さがあり、深さがあり、比較するものではないと思っているが、私が出会ったライター達はそう思っていなかったのかもしれない。
京都のバーで一人で飲んでいた時、ある女性が話しかけてきた。彼女は私よりも10歳ぐらい年上で、ある出版社でライターをしていると言った。
私は無邪気にも小説を書いていると言ってしまった。
そう言ってから、彼女の表情は険しくなり、それ以後の言葉の端々にはトゲがあった。とうとう彼女は、私の作品を読んだこともないのに、小説家にはなれないと断言した。まぁ、難しいでしょうと。それから「どっからか物語がやってくるんですか?精霊みたいに?ライターはそういう文章書けないないから~。不思議でね~。」とも言った。
私は「そういうこともあるし…あとは、こういう会話からなら、いくらでも短編を書けますよ」と言った。
彼女は私の言った意味が分かったらしく、ムッとっして、すぐに勘定をすませて出て行った。
京都のグルメ雑誌で働いていたライターさん。覚えていますか?
短編というほどのものではないですが、あなたとの会話を話にしました。
そういえばあの時、あなたに話さなかったことがあります。
私はこんな人達にむかって書いています。
まずは、私と心の共通領域が広い、未知の真の友人へ。
あとは、私が書いたものを決して読まない方達です。
あなたに届くといいなと思って書きました。