中国が行おうとしているのは、やさしい独裁です。
従来通り「共産党に逆らうヤツは容赦なく叩く」ということも行われていますが、大人しい一般市民にはやさしく諭すような統制が敷かれていくでしょう。
その統制は「デジタル監視システム」によってなされるのですが、それは国民によって支持される形で進められています。
まず、監視システムの1つとして利用されるのが「信用スコア」
これは、学歴や年収、さらにSNSのフォロワーの数などによって信用度が数値化され、そのスコアが高いほど受けられるサービスのグレードが上がるというものです。
逆にスコアが低いと、最低限のサービスしか受けられなくなります。
例えば、信用度によって融資の上限が決まったり、就職活動での評価につながったりします。
なのでみんなこのスコアを上げようとするのですが、そのためには社会的なルールを守らなければなりません。
お金を借りたら期限内にしっかり返す。税金はきっちり払う。またSNSのフォロワー数も影響するので、誹謗中傷もなくなります。
もちろん犯罪や交通違反なども反映されるので、犯罪や事故も減っていくでしょう。
このように道徳的な監視によって、中国が暮らしやすい国になれば、国民は自ら様々なデータを差し出します。
こうしたデータを基に、更なる監視システムを構築していくのです。
また、監視システムは「監視カメラ」によっても行われます。
中国には2019年の時点で、2億台もの監視カメラがあります。
さらにその中には「天網(スカイネット)」というシステムがあり、これは顔認証とAIによって個人を特定できるものとなっています。
天網にかかれば、誰がいつどこで何をしていたのか、すぐに判明してしまうでしょう。
これもまた、監視されていることを意識させるので、犯罪の減少に役立ちます。
そもそも中国は詐欺や泥棒、マナー違反などが多くいました。
超監視社会は、そういった人を摘発してくれるし、みんなが信用スコアを気にするので誹謗中傷も減って、接客態度も向上します。
監視システムは行動の自由を奪うけど、引き換えに暮らしやす環境を与えてくれる。
だからみんな自らこのシステムに協力して、ほどほどの幸せを手にれるんですね。
なんだかこれは、飼い犬のようです。
ペットの犬は安全な環境で育てられて、エサももらえて幸せかもしれませんが、自由に外出はできません。
外に出るときはリードが必要です。
人間もシステムに従っていれば、スコアをもらえるし、安心・安全が手に入ります。
しかし、どこへ行くにも見張られているので、どこへ行くにも何をするにもカメラやスコアと言うリードが付けられます。
中国による監視システムは、海外にも普及していくでしょう。
治安の悪い国なら受け入れやすいと思いますが、日本はどうでしょう?
意外と、日本のような治安のいい国の方が、デジタル監視社会を望むのかもしれませんね。
治安がよくなればよくなるほど、些細な事件が大きく感じられるので、より高いレベルの安全が求められます。
現に比較的治安のいい日本でも、ドライブレコーダーは普及していますし。
日本もいずれ、安心・安全と引き換えに、首輪が付けられてしまうのかもしれませんね。
参考
幸福な監視国家・中国(梶谷懐・高口健太)1