以前にもご紹介した、世界鬼学会の会誌に投稿するための原稿として書いた、「香取本『大江山絵詞』の「平野山」と「近江国かが山」: 比叡山延暦寺による土地領有権説話としての酒呑童子譚」という題名の論文についての、補足情報を紹介したいとおもいます。(その論文の内容は、下記のリンクでご覧いただけます。)
その補足情報というのは、比良明神(白鬚明神)の伝承がつたわっている、下記の3つの神社・仏閣にある、比良明神が座していたという3つの釣垂岩(つりたれいわ)についての情報です。
下記の3つの神社・仏閣には、それぞれに、比良明神が座していたという釣垂岩が、いまも残っています(「いまも残っている」ということになっています)。
下記の1~3で紹介するのは、これらの3つの神社・仏閣にある釣垂岩です。
比良山地のふもとである、滋賀県高島市鵜川の湖岸沿いにある白鬚神社の釣垂岩については、『比良山系における山岳宗教調査報告書』という本のなかに掲載されている、『白鬚大明神縁起絵巻』の詞書のなかに、下記のような文章があります。
又、いつの時にか現形し給ひけん。比叡山横川にも、明神釣垂岩とてあり。亦、もとより社の前にも巨石ありて、其釣垂し時、坐し給ふ跡とて、今にのこれり。
(出典: 「白鬚大明神縁起絵巻」上巻 詞書 第七段, 『比良山系における山岳宗教調査報告書』, 149ページ1段目.)
このように、『白鬚大明神縁起絵巻』では、「(白鬚神社の)お社の前に、巨石(釣垂岩)がある」とされています。
この「白鬚神社の釣垂岩」の、現在の所在地については、あいまいな情報になってしまうのですが、たしか、以前に、どこかで、「白鬚神社の釣垂岩は、白鬚神社のお社や、白鬚神社の湖中大鳥居のすぐそば(東北東のあたりの湖岸)にある岩のことだ」というような情報を、目にした記憶があります。
自分がこれまでにメモしてきたもののなかから、その情報の出どころを探してみたのですが、どうにも、その情報の出どころを見つけることができませんでした(汗)。ですので、もしかすると、この情報は、ぼくのかんちがいであり、間違った情報であるかもしれません(汗)。
ただ、一応、ここでは、仮の情報として、ぼくがメモしていた、「白鬚神社の釣垂岩」(仮)の、現在の所在地をおつたえしたいとおもいます。
ぼくの記憶によると、「白鬚神社の釣垂岩」(仮)は、白鬚神社のお社や、白鬚神社の湖中大鳥居から、東北東の方角へ100メートルほど離れたところの湖岸のあたりにある岩のことである、とされていたと記憶しています。(ただ、さきほどもお話したとおり、その情報出どころは不明です(汗)。)
その「白鬚神社の釣垂岩」(仮)の場所は、緯度経度で表現すると、「緯度経度: 35.274881,136.012529」のあたりの湖岸です。
参考: Googleマップ上の「緯度経度 35.274881, 136.012529」の地点の地図のURL
https://goo.gl/maps/qUwKH7bcTKXnnmST9
(前掲の写真は、その「緯度経度: 35.274881, 136.012529」のあたりから、白鬚神社の湖中大鳥居の方向を撮影した写真です。この写真は、夜に撮影した写真なので、暗くて見えなくなってしまっているのですが、おそらく、位置的に言って、この写真に写っているガードレールのすぐ下あたりに、「白鬚神社の釣垂岩」があるはずだとおもいます。)
(ちなみに、Googleストリートビューをつかって、「緯度経度: 35.274881, 136.012529」の地点から東北東へすこし行ったあたりの湖岸沿いの道路から、白鬚神社のまえにある湖中の鳥居の方角を向くと、「白鬚神社の釣垂岩」らしき岩が見えます。)
参考: Googleストリートビュー上に写っている「白鬚神社の釣垂岩」らしき岩の写真のURL
https://goo.gl/maps/jpiB2GpsPd5m9JfG8
ただ、さきほどもお話したように、この情報は、いまのところ、不確かな情報です。ですので、もし、「白鬚神社の釣垂岩」の正確な位置をご存知であれば、教えていただけるとうれしいです。
m(_ _)m
比叡山延暦寺の、西塔地区と横川地区をむすんでいる峰道と呼ばれる山道の途中に、釣垂岩と呼ばれるおおきな岩があります。(この上の写真と、この下の写真が、その「比叡山延暦寺の峰道の釣垂岩」の写真です。)
琵琶湖の南のはしに位置する、滋賀県大津市石山寺にある石山寺には、比良明神影向石(ひらみょうじんようごうせき)という石があります。(この上の写真が、その「石山寺の比良明神影向石」です。)
この「石山寺の比良明神影向石」は、この下にある解説板にも書かれているとおり、「比良明神がその岩に座して、釣り糸を垂れていた」とされている岩です。つまり、さきほど紹介した、「白鬚神社の釣垂岩」や、「比叡山延暦寺の峰道の釣垂岩」とおなじ、釣垂岩と呼んでもさしつかえないとおもいます。
ここまで紹介してきたように、大昔の伝説のなかに登場する、「比良明神がその岩に座して、釣り糸を垂れていた」とされている「釣垂岩」は、白鬚神社や、比叡山延暦寺、石山寺の、それぞれの神社仏閣に、いまも現存しています(「現存している」ということになっています)。
大昔の伝説のなかに登場する「釣垂岩」が、いまも残っていて、それを実際に目にすることができる、というのは、なんだかロマンがあっていいなとおもいます。
あなたも、もし機会があれば、これら3つの「釣垂岩」をめぐってみるのも、おもしろいかもしれません。
ちなみに、冒頭でもお話したように、これら3つの「釣垂岩」にも関係があり、比良明神ゆかりの伝承がある、白鬚神社(比良山地)と、比叡山延暦寺(比叡山地)、石山寺(石山)の、3つの地域の関連については、下記のリンクに掲載している論文のなかでお話していますので、もし興味があれば、ご覧いただければとおもいます。
「これ好奇のかけらなり、となむ語り伝へたるとや。」