電子書籍『高級品で、これからの生き方を学ぶ』の「あとがき」です。
目次はこちらです。
よろしくお願い致します。
私の人生では既に、衰退する日本で生きている時間の方が長くなっています。
日本は何故、凋落したのでしょうか?
その理由は、インターネットが発明されて普及しインフラ化したことによるものです。
率直に申し上げて、これは「我々の持つ国民性が向いていなかった」という仕方がない面もあるでしょう。
日本がそれまで得意としていた「質の高い労働者が集団で一致団結して働く」という手法があまり役に立たなくなり、むしろ「意思決定が遅い」「革新的な発想が出にくい」などの欠点がより目立つようになってきました。
また、これまでの電話回線を使用したFAXなどの技術が足かせになりました。
逆にこれらの技術の導入の遅れていた新興国でリープフロッグ現象(蛙が跳ねるように一気に最先端の技術に到達する現象)が起き、激しい追い上げを受けました。
そして、むしろ客側のスキル、つまり働いた後に得られたお金を金融商品や自分に対して投資するというスキルを問われる時代となって、そのことに対応できない国民がたくさんいました。
さらに、自らの人生を楽しむことを犠牲にして働いてきたことで、お客さんが楽しいと思うことが何なのかもわからなくなり、お客さんの多様化にも対応できていません。
これも「一致団結して懸命に働くことが得意な日本人の国民性が、裏目に出た」ところでもあります。
我々の国民性は残念ながら「多様化の時代」には合っていませんが、逆にそのことがわかったのだから、これからそれに対応すれば良いだけの話です。
そう言えば、とある芸術関係のお仕事をされている方が、次のようなことを仰っていました。
「芸術とは、わからないものに対しては言及しないものである」
私はこの言葉にものすごく共感しました。
例えば音楽でも、クラシックに詳しい人もいれば日本の伝統的な雅楽に明るい人もいますし、ロックやポップスで自らもギターを演奏し玄人はだしの腕前、という人もいます。
もちろんこれらは好みのジャンルが違うだけであり、クラシック以外の音楽が劣っているということではありません。
好みではないからあまり知らないしわからない、わからないということは「褒めることも、貶すこともできない」はずです。
何故ならそれは、良いところも悪いところもわからないものだからです(当然ですが)。
そして優れた芸術品の中には、すぐには評価されず後になってから高い評価を受けるものもあります(「まえがき」で触れたゴッホの絵もその一例です)。
ところで、これまで私は以前から、日用品は「より良いものを、より安く、より多くの人へ」というもので、それに対して嗜好品とは「良いものを、相応の価格で、価値のわかる人へ」というものであると書き続けていましたが。
究極の嗜好品、すなわち「良いものを、相応の価格で、価値のわかる人へ」が最も顕著なものは芸術品です。
その芸術品が「わからないものに対しては言及しないもの」ですから、嗜好品とは全般的に「わからないものに対しては言及しないもの」なのではないでしょうか。
好みは人それぞれのものですから、その人にとっては良いものでしょう。
また、わからないものをわからないものとして言及しないことは、教養のある人の振舞いでもあります。
教養のある人とは、あらゆることを幅広く知っているが故に「無知の知」も知っている人であり、これを日本風に言えば「実るほど頭が下がる稲穂かな」という人だからです。
物事を知れば知るほど、自分の知らない分野が存在することもたくさんわかってきますので、物事を知れば知るほど逆に「如何に自分は物事を知らなかったのか」ということが、よりたくさんわかってくるからです。
今現在の日本では、世の中のシステムやテクノロジーの進歩により、たくさんのものが既に存在します。
あらゆる物やサービスが選び放題であり、これはつまり「物やサービスの選択肢が豊富になっている」とも言えるでしょう。
なのに何故、日本人の価値観だけが取り残されているのでしょうか。
日本人の価値観は相変わらず、従来の常識という一つだけのものに束縛されたままとなっています。
我々日本人が古代ギリシャ・ローマ時代における「(奴隷ではない)自由民」となるためには、常識という「束縛からの解放」から、まず始めなければなりません。
そしてこの日本人の古い常識の中には、日本人をどんどん貧乏になるように追いやっているものもあります。
例えば「額に汗して一所懸命に働くことが尊いことであり、それ以外の方法で苦労せずお金をかせぐことはけしからん」という考えとか。
実は、苦労するのかしないのかというのは重要なことではありません。
お金を得るためには「その時のお客さんが必要なもの、または欲しいものを生産し供給する(ことに貢献する)」ことが重要であり、その過程で苦労したかどうかは関係ないからです。
ものについては役に立つか立たないかだけで判断するのではなく、その人にとってどういうものなのかで判断すること。
それはとても大切なことなのだと、高級品を含む嗜好品が教えてくれます。
「その人にとって、大切な何か良いものがある」
「何か良いものは、人それぞれにたくさんある」
そのことを大切にして、考えが柔軟でかつ人には寛容な人が増えたら、我々はさらに幸せになることができるでしょう。
まずは私とこの電子書籍をお読み頂いた皆さんから、さらに幸せになりましょう。笑。
ここまでお付き合い頂きまして、本当にありがとうございました。
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