今年も暑い夏が盛りのお盆です。
そして夏、お盆といえば怪談!
僕の怪談のポリシーは「京都で怪談を実体験する!」です。
このポリシーにのっとり?、過去2回記事を書きました。
最初は、京都一の心霊スポットを言われる清滝トンネルを歩いてみたという記事。
ふたつ目は、冥界へ通じる井戸を京都東山・六道珍皇寺で見てきた記事。
なんだかデイリーポータルZっぽくもありますが、おかげさまでいずれも好評でした。
そして、今回は第三弾。
今回は趣向を変えて、食べてみた!実体験です。
合わせて、あの有名怪談マンガ・アニメ、「ゲゲゲの鬼太郎」の驚くべき秘密が明かされる!
ということで、気合が入っていますのでぜひお読みください。
なお、本記事はALIS恒例、怪談?部主催の「2020真夏の怪談フェス」参加記事です。
主催者のミカヅキカヅキさん、素敵な企画をありがとうございます。
有名な怪談の一つに「子育て幽霊」という話があります。
まずは、そのストーリーをお読みください。
ある夜、店じまいした飴屋の雨戸をたたく音がするので主人が出てみると、青白い顔をして髪をボサボサに乱した若い女が「飴を下さい」と一文銭を差し出した。主人は怪しんだが、女がいかにも悲しそうな小声で頼むので飴を売った。
翌晩、また女がやってきて「飴を下さい」と一文銭を差し出す。主人はまた飴を売るが、女は「どこに住んでいるのか」という主人の問いには答えず消えた。
その翌晩も翌々晩も同じように女は飴を買いに来たが、とうとう7日目の晩に「もうお金がないので、これで飴を売ってほしい」と女物の羽織を差し出した。主人は女を気の毒に思ったので、羽織と引き換えに飴を渡した。翌日、女が置いていった羽織を店先に干しておくと、通りがかりのお大尽(お金持ち)が店に入ってきて「この羽織は先日亡くなった自分の娘の棺桶に入れたものだが、どこで手に入れたのか」と聞くので、主人は女が飴を買いにきたいきさつを話した。
お大尽は大いに驚いて娘を葬った墓地へ行くと、新しい土饅頭の中から赤ん坊の泣き声が聞こえた。掘り起こしてみると娘の亡骸が生まれたばかりの赤ん坊を抱いており、娘の手に持たせた三途川渡し代の六文銭は無くなっていて、赤ん坊は主人が売った飴を食べていた。
お大尽は、「娘は墓の中で生まれた子を育てるために幽霊となったのだろう」と「この子はお前のかわりに必ず立派に育てる」と話しかけると、娘の亡骸は頷くように頭をがっくりと落とした。この子供は後に菩提寺に引き取られて高徳の名僧になったという。
出典 Wikipedia 子育て幽霊
この怪談は子を思う母の強い愛情を表したもので、美談でもあると思います。
実は、この怪談で幽霊が飴を買いに来た飴屋さんが京都に実在しているのです!
しかも、今でもその飴を買って舐めることもできるとのこと。
これは行かないと!
ということで、子育て幽霊の飴屋さんを訪ねました。
子育て幽霊の舞台は京都「六道の辻」です。
ここは、いわくつきの場所。
あの世とこの世を分ける境目なのです。
地図で見てみましょう。
昔、都で亡くなった人が埋葬される場所のひとつとして、鳥辺野という丘が京都盆地の東(地図の右側)にありました。
埋葬と言うか、その地名の通り鳥に遺骸を食べさせる鳥葬の場所だったんです。
京都の街中からその鳥辺野に行く間に、六道の辻があります。
亡くなった人を送るときには、この六道の辻を通るのです。
そして、六道の辻から先はあの世だったんですね。
だからここはあの世とこの世の境目。
そんな六道の辻には六道珍皇寺というお寺が建っており、冥土とつながる井戸があります。
お盆前に、この世に戻ってこられるご先祖様をお迎えするために六道まいりの行事がされており、この写真はその時の様子です。
ほら、ご先祖様の霊(お精霊さん)が見えますよね?
さて、幽霊が子供に食べさせた飴、いわゆる「幽霊子育飴」を売っている飴屋さんが、この六道珍皇寺から歩いて数分の場所に建っています。
飴屋さんがある六道の辻は、あの世とこの世を行き交う精霊・幽霊がよく通る場所です。
例えるなら霊界の渋谷スクランブル交差点と言っても過言ではないでしょう?
こちらが、幽霊子育飴の飴屋さん。
「みなとや幽霊子育飴本舗」です。
看板や提灯やのぼりにも「幽霊子育飴」とあります。
ここは、450年以上続く日本一歴史ある飴屋とのこと。
いかにも夜中に幽霊が飴を買いに来そうな店構え?が素敵な、昔ながらの飴屋さんですね。
こちらはお昼に撮った看板。
ちょっと入って飴を買うのも怖そうで、だんだん怪談っぽくなってきました。
夜になると、一段と子育て幽霊の怪談にマッチした雰囲気になるお店。
ガラス扉は開いているので、思い切って入りましょう。
そして、いよいよ幽霊の赤ちゃんが食べたことに由来する「幽霊子育飴」をゲットです!
これがその、幽霊子育飴。
大サイズが500円、小サイズが300円。
麦芽糖とザラメ糖を使用したシンプルな飴ですね。
金色に輝く様は黄金糖っぽいでしょうか?
味も想像通りのシンプルな甘さでした。
飴を食べるとやっぱり元気が出てきます。
これで赤ちゃんが生き延びたんだなぁと思いながら味わうと、美味しさとありがたさひとしおです。
もっとも伝説では飴は固形ではなくて水飴だったようなので、赤ちゃんでも舐められたのでしょう。
というか、飴の形状まで、怪談にしてはえらく具体的だな。
飴屋さんの向かいには、子育て地蔵さんが祀ってありました。
飴屋さんもそうですが、この雰囲気は幽霊がこのあたりをウロウロしていてもなんの違和感もないですよね。
さて、ここでこの子育て幽霊の怪談を読んでひとつ気になったことがありました。
生き残った赤ちゃんはその後どうなったんだろう?と。
これだけのすごい生い立ちの赤ちゃんなら、その後もすごいストーリーがあるはず。
でも、怪談では高僧になったと簡潔に書かれているくらいで、ぼやけています。
まずは高僧について調べてみると、この子育て幽霊の伝説は京都だけではなく各所にあり、その土地によってどのような高僧になったか違うようです。
京都の伝説では、先にあげた六道珍皇寺や近くの六波羅蜜寺の高僧になったという説がありますが、はっきりしません。
そもそも、この子育て幽霊の話は宋の時代の中国に「餅を買う女」の話があり、これが元になったのではという説もあります。
それよりも、いろいろ調べていたら面白いことがわかってきました。
どうも、とても有名な怪談漫画・アニメがこの子育て幽霊の子供の少年時代を描いた作品らしいということが…。
もう気づかれたと思いますが、その作品こそ「ゲゲゲの鬼太郎」!
えっ?
そう言われれば、ゲゲゲの鬼太郎では母親の岩子は鬼太郎を身ごもっているときに死んでしまい、鬼太郎は埋葬された母親の死体から生まれたとあります。
これって、子育て幽霊の話そのままじゃないですか!
それに確か、作者の水木しげる先生はこの京都の飴屋さんを訪ねて子育て幽霊の話を知り、それを元にゲゲゲの鬼太郎を描いたという話をどこかで見た記憶があるのですが、出典ははっきりしません。
子育て幽霊とゲゲゲの鬼太郎の関係がホントなのか、証拠があるのかどうかとネットで調べていても、案外このことについてきちんと検証しているサイトがないんです。
と思っていたら、ここに証拠がありました。
それは、幽霊子育飴の飴屋さんのガラス扉の貼り紙。
水木しげるさんの
ゲゲゲの鬼太郎
の元になった飴です
や、やっぱりゲゲゲの鬼太郎のルーツはここだったんだ!(これも出典ははっきりしないですけど)。
もう少し詳しく調べてみると、ゲゲゲの鬼太郎は「ハカバキタロー(墓場鬼太郎)」という紙芝居を元にしており、そのハカバキタローはこの子育て幽霊の怪談をもとに作られたということなので(Wikipedia)、やはりゲゲゲの鬼太郎のルーツは子育て幽霊なんだと思います。
ということで、子育て幽霊とゲゲゲの鬼太郎がこの飴屋さんでつながったのです。
鬼太郎の出生が子育て幽霊につながるとは、とても面白いですよね。
というか、そんな関係があるなら積極的に飴屋さんと京都の観光協会と水木プロダクションが手を組んで、観光キャンペーンをやったらいいのにと思うのです。
でも、京都にはこんな話がいっぱいありそうなので、貼り紙で終わっているのかもしれません。
さすが京都やで…。
帰り道の鴨川。
月明かりに照らされ、京の夏の風物詩である鴨川納涼床が出ています。
ここからもう少し下がる(南に行く)と六条河原。
六条河原は平安時代から江戸時代までの処刑場としてとても有名ですよね。
関ヶ原の戦いで負けた石田三成を始め多くの歴史上の人物が処刑された場所として、歴史の教科書にもよく出てきます。
となると、ここにもまた怪談スポットが!
京都って怪談のネタありすぎやろ。
六条河原は歴史を見ると全国最強のガチでやばいスポットで、今回はこれ以上憑かれると身体がもたないので、夜の六条河原には近寄らないようにしましょう。
あれっ?
でも、なんだか身体が六条河原に引き寄せられてゆくよー。
知らない間に足がふらふらと河原を南に向かってゆく。
なんでだろ?
あっ、ああ~~!!
このあと、闇の六条河原に消えた彼の姿を見た者はいないそうな。
めでたしめでたし(めでたくないやろ)。
ということで、怪談を調べてゆくといろいろと面白いことに出会いますね。
やっぱり怪談は奥深いなぁと思えた今回の経験でした。
Camera: PENTAX K100D Super & Xiaomi Mi Mix 2S
(本記事に掲載した写真は、投稿日の2020年より以前に撮影したものです。)
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というか、この魔道士アイコンの衣装がすでに怪談やん…。