春になると、思い出す光景が有ります。山の斜面一面に咲いた、カタクリの花
【ALIS】春のオカルトまつり開幕!4/6-21に、お婆ちゃんも参加します
これは、半世紀よりもっと、もっと、前のお話です。
お婆ちゃんは、まだまだ子供で、現世界と異世界を自由に行き来していました。
当時の私は、お母さんが仕事していたので、お婆ちゃんに育てられていましたからね~
お婆ちゃんには、不思議な力がありました。そのお話は、また今度ね!
私のお婆ちゃんは、春のこんな天気の良い日は、よく縁側で、ウトウト居眠りをしていました。
私は、お婆ちゃんの目を盗んでは、家を抜け出して、遊びに行きます。
近所にはお友達もいませんから、もっぱら、家の裏山が私の遊び場になっていました。
でも、なぜかお婆ちゃんに「裏山には入ってはいけないよ!」と言われていたんです。
私、「いけないよ!」と言われて、それを守るような大人しい子ではなかったので・・・いつも、裏山に行っていました。
そこには、私だけが知っている、秘密基地があるの!
春を迎えると、一斉に花が咲きだします。特に、大好きなカタクリの花が咲く時期には、もう毎日出かけていました。
カタクリの花が山の斜面を彩ります。それはそれは、綺麗で・・・私だけのお花畑になるんです。
そこで、女の子と遊ぶんです
花束を作ったり、花冠を作ったりします
その女の子は、いつも、かすりの着物を着ていました。ちょっと袖が擦り切れています。
女の子は「ここの物は、家に持ち帰らないでね!」って言ってました。
だから、私はいつも、摘んだ花を、小川にそっと置いて来るんです。
・・・・
でも、今日は、どうしても、カタクリの花束を家に飾りたくなってしまいました。そっと、隠し持って、家に持ち帰ってしまったのです。
家に帰ると、お婆ちゃんはもう起きていて、台所に立っていました。
「お帰り!・・・あれほど言ったのに、裏山には入っちゃいけないって!」
「えっ!」ばれてたんだ!
「お前は、お婆ちゃんの子供の頃と、同じだからさ!
カタクリの花、きれいだよね!
お前にも、あの子がみえるんだろ~・・・・・・」
「うん!お婆ちゃんも知ってるの?」
「そうさ!お前ぐらいの年頃までは、一緒に遊んでいたよ!」
そう言うお婆ちゃんは、何だか悲しそうに見えました。
私は、お婆ちゃんばかりか、あの子との約束まで破ってしまったのです。
それから、何日も雨が降りました。
春にしては、冷たい雨です。
やっと、晴れて、秘密基地に行ったけど、一面に咲いていた、カタクリの花はしおれていました。
そして、二度とあの女の子が現れる事はありませんでした。
次の春も、その次の春も、カタクリの花は咲いたけど、あの女の子は現れませんでした。
おしまい