2018年3月、僕は精神科の閉鎖病棟に入院した。
入院の意思を告げた所から意識がなく、意識がある程度回復した時には、僕は病院の個室で寝ていた。
病院は安全だが、いま世界は人型ロボットが繁栄しており、それについて反対派と賛成派が争い、大変なことになっていると思っていた。
僕が人型ロボットを開発したことになっていると、なぜか思った。
入院してからの一週間はその妄想に囚われ、時折個室の窓から外を眺め、自分は狙われているのではないかと確認していた。
最初はテレビも禁止、スマホももちろん禁止されていた。
情報を遮断し、三色しっかり食べ、しっかり夜に寝るようにしたところ、次第に妄想が解けていった。
入院して2、3日後にテレビが解禁され、世の中の情報が入ってくるようになるとますます自分の妄想が間違いだということに気付かされ、さらに妄想が解けていった。
入院生活は概ね満喫していたように思う。家族や知り合いから本を届けてもらい、それをじっくり読む時間を得られた。
ただ、その環境が1ヶ月、2ヶ月と続いていくと、ここから早く抜け出したいと思う気持ちが強くなった。
もう妄想はとけたはずなのになぜ退院できないのだろう。行動も制限されて、スマホも制限されて、理不尽だなとそのときは思った。
担当医はいつ退院できるかの予定を言ってくれていたので、ただ我慢するしかないなと考えるに至った。
僕の病気の症状は妄想型の統合失調症だ。この病気は患者が病気であるのか、病気でないのか判断することが難しいと思われる。
自分で病気でないと思っていても、実は妄想に囚われていて病気である可能性がある。
また、医師が病気だと判断していても本人は実は正常である場合もあるだろう。
入院してしまったからには、この暇な時間を有効に活用して、自分のことや世の中のことについて考える時間にしようと思った。
今は全く交流がないが、同じ病棟の患者さんとお話しすることが多かった。書道家の人、哲学者っぽい人など話していると面白く(書道家の方は本当に書道が巧く、達人だった。仏教などの教えにも詳しい方だった。哲学者っぽい人は、本当のことを言わなくて良い、フェイクでいいんだ!というようなことを言っていて興味深かった(本当かなとは思ったが)。いろいろな哲学の本を知っていた。)、そして優しい看護師さんとも巡り合えた。
入院して3ヶ月程度で退院となった。しかし、この時はいまだに今後自分がどうすれば良いのか分かっていなかった。博士に進むのか、一般企業に就職するのか、何が幸せか、研究のモチベーションも落ちてしまっていて、何か他の楽しいことをやりたいということだけは考えていた。
ただ、それを見つけられずにいた。