最近、大麻グミやそれらに含まれる成分(THCH)などで注目を浴びた大麻。
気分の高揚やリラックスなど様々な作用に加え、幻覚やめまいなどの副作用も無視できない課題として、規制の対象になっています。
実際のところ、長期的な大麻の使用が精神にどのような影響を及ぼすのかについては、明らかになっていないことがおおいです。
今回紹介するのは、そんな大麻の使用に関する大規模調査の一つです。
科学情報サイトScience Alertから引用してながらまとめていきます。
参考記事)
・Cannabis And Psychosis Are Linked, And This Could Be Why(2023/12/07)
参考研究)
大麻はときに、使用した人々に対し精神病のような症状を生み出すことが知られています。
多くの人がそういった経験をしているにも関わらず、大麻と精神病のリスクを増加させるかどうか、そして遺伝的素因が大麻使用と精神病経験の関係に影響を与えるかどうかについて分かっていることは多くありません。
メンタルヘルスセンター(CAMH)とキングス・カレッジ・ロンドンによる109,308人の英国バイオバンクを対象とした分析では、統合失調症の遺伝子リスクスコア(DNAの塩基配列に生じる違い)を基に、自己報告による大麻使用と精神病経験(聴覚幻覚、視覚的幻覚、迫害妄想、関係妄想)との関連性を調べました。
その結果、コホート(対象となった集団)全体では大麻の使用と4種類の精神病経験、特に迫害妄想との間に強い関係性を発見しました。
大麻使用の報告がないグループのうち、何らかの妄想または幻覚体験が示されていたのは 4 パーセント強でした。
一方、過去に大麻を使用したことがあると報告したグループでは、この数字は7%に跳ね上がりました。
少なくとも毎月大麻を使用したことがあると報告したグループでは8.4%の増加。
毎週大麻を使用したことがあると報告したグループでは8.8%増加。
毎日大麻を使用したことがあると報告したグループでは9.6%増加したことが示されました。
さらに詳しく調べると、統合失調症の遺伝子リスクスコアが高い人の場合、その増加が最も顕著でした。
また、大麻ユーザーの精神病経験は比較的早期に発症し、非ユーザーよりも大きな苦痛を引き起こす傾向がありますが、それに対し助けを求めるような行動にはつながりにくいことも分かりました。
統合失調症の遺伝子リスクスコアの高い参加者は、大麻の使用と聴覚幻覚、視覚的幻覚、関係妄想、および全体的な精神病の経験との間のより強い関連性を示しました。
こういった重度のうつ病、双極性障害、統合失調症の主要な症状である精神病は、大麻の活性化合物デルタ9-テトラヒドロカンナビノール(デルタ9-THC)を含む様々な精神活性物質によっても誘発される可能性があるとされています。
研究からも、大麻ユーザーとそうでない人と比較したところ、何らかの精神病を経験する可能性が4倍近く高いことが示唆されています。
メンタルヘルスセンターのウェインバーグ氏は、「遺伝的リスクスコアリングはまだ初期段階にあるため、大麻と精神病の関係に対する今回の発見よりもさらに大きいかもしれません」と潜在的な危険性を述べています。
今回の分析の母集団が、主に白人集団に焦点を当てることに偏っていることを考えると、一般的な主張をするにはまだ調査の余地があります。
記事の最後では、「大麻の合法化により、多くの区域でアルコールやタバコと同等の薬物が置かれているため、薬物やアルコールなどのリスクについてできるだけ多くのことを学ぶことが更に重要になっている」とまとめています。
この研究は“nature”にて詳細を確認することができます。