パリスの審判とトロイア戦争
前回紹介した十字架昇架&十字架降下に続き、ルーベンスの“パリスの審判”の紹介です。
絵画におけるパリスの審判は、ギリシャ神話のひとつであるトロイア戦争の冒頭部分のストーリーを絵にしたものがほとんどです。
今回は2記事に渡って、ストーリーとともにこの絵に触れていきたいと思います。
パリスの審判のストーリー
トロイアの王子であるパリスが生まれる直前、トロイアの王妃であるヘカベはある夢を見ました。
それは自らが燃える木を産み、その炎によってトロイアが滅ぶというものでした。
国の占い師はこれを不幸の暗示と捉え、産まれた直後のパリスを殺すよう指示しました。
トロイア王プリアモスはパリスをころすよう家来に命じましたが、家来は産まれたばかりの王子を殺すことが忍びなく山へ捨てることにします。
その後赤子のパリスは羊飼いに拾われ、成人するまで立派に育て上げられます。
彼自身羊飼いとなり、有意義な人生を送るかに思えました。
ある時彼のもとに黄金のリンゴが転がってきました。
ペレウスとテティスの結婚
所は変わって神々の住む天界へ。
そこでは英雄ペレウス(人間)と海の神テティスの婚礼の儀が執り行われていました。
多くの神々が招かれ、盛大な宴となりましたが、ある神だけは招待されませんでした。
争いと不和を司る神エリスです。
式に呼ばれなかったことに怒ったエリスは、宴の中に黄金のリンゴを投げ込みました。
黄金のリンゴにはこう書かれていました。
“最も美しいものに贈る”
……と。
式に参加していた美を司る神は三神います。
ゼウスの正妻であり権威を司る神々の女王ヘラ。
ゼウスの祖母ウラノスの男根と海の泡から生まれた愛と美と性を司る神アフロディーテ。
ゼウスの頭頂部より神具を身につけ生まれた戦いの神アテナ。
です。
この三神は誰が最も美しいかで揉めに揉めます。
ゼウスに審判を求めましたが、ゼウスも気乗りしません。
そんな時に白羽の矢が立ったのが当時羊飼いのパリスでした。
ゼウスは人間の中で最も美しい青年と言われているパリスに審判を委ねました。
その審判の様子を絵にしたのが今回のテーマである“パリスの審判”なのです。
(トロイア戦争の続きを知りたい方は↓の記事へ!)
次回に続く…。