およそ5億4000年前、カンブリア紀を転換点とする生物の進化の歴史。
当時の生物は化石として発見されていますが、進化の過程を解き明かすにはまだ不十分とされています。
今回紹介するのは、そんな進化のミッシングリンクを埋めるかもしれない新しい化石についての話です。
2022年10月13日にScienceNewsに掲載された記事をまとめていきます。
参考記事)
This ancient worm might be an important evolutionary missing link
参考論文)
This ancient worm might be an important evolutionary missing link
Wufengella
中国で新たに発見された“Wufengella”は、5億2000年前にカンブリア紀を生きたワームの化石です。
遺伝子分析に基づいた調査から古生物学者のヤコブ・ヴィンサーらは、「この生物はおそらく、腕足類(BryozoansやPhoronid worms)を繋ぐ共通の祖先である」と見解を述べています。
コケ動物として知られるBryozoansは、サンゴのようなコロニーの中で生活した生物です。
Phoronid wormsは、柔らかいチューブ状のような構造を持つ生物です。
今回発見されたWufengellaは、上の二つの生物のどちらの門にも属していませんが、“非対称性、背中のプレート、ワームのような体、その体を囲む体毛”など似た特徴を持っています。
この発見によって、現在で見られるようなチューブを通して生活する生物はかつて、自ら海底を這い回って餌を探していた可能性があることを示唆しています。
一方、ハーバード大学の無脊椎動物学者のゴンサロ・ギリベットは、「Wufengellaの発見は素晴らしいことだがは長い間求められてきたミッシングリンクであることを確認してはいない」と述べています。
ミッシングリンクかそうでないかは別として、別の種類の生物同士の特徴を持った化石が発掘されたことは確かです。
ヴィンサーらはこういった化石が発見されることを望んでいましたが、実際に見つけることは不可能だろうと考えていました。
理由は、こういった生物が浅瀬で生活していた場合、化石になる確率が非常に低いからです。
浅瀬だと化石になりにくい理由は、大量の酸素にさらされることで、化石になる前に腐敗してしまうからです。
この頃に発見される化石は通常、生物が死んだ後の死骸が、酸素が少ない海底へと落ちていき、腐敗が起こる前に土が降り積もることで化石として保存されます。
Wufengellaは嵐など海流の流れに乗って、運良く死骸が海底まで流されたことで化石化したと考えられます。
化石にならなかった未だ未発見の生物は無数にいると考えられ、今回はほんの一部が露見したに過ぎません。
今回のWufengellaの例のような新種の化石が発見されることで、空白だった生物の進化のピースを埋められることが期待されています。
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