イギリス王室・ヘンリー王子と結婚された米国人元女優メーガン・マルクルさん(※)が、米国のインタビュー番組に出演しました。王子との結婚から王室離脱に至るまでのいきさつについて、夫とともに本人自らが語ったというだけあって、よくも悪くも話題になっています。
(※)王室を離脱したとのことなので、各種報道にある「メーガン妃」という表記を避けています。
マルクルさんはインタビューの中で、王室に嫁ぐ本質的な意味を分かっていなかったという説明から始まり、結婚後は慣れない宮廷のしきたりや文化の中で孤立感を深めていったこと、王室内で自分が米国人かつ有色人種の血を引くことから差別を受けていたこと、さらには王室からの発表も含め、各種報道には自身の名誉を貶めるためだけの欺瞞にあふれていたことなど、彼女なりの真実を伝えていました。
この内容を聞いて、筆者が思ったこと。それは、彼女が目の前で起きたことに対応することで精一杯で、その背景や理由に気を回せない余裕がなかったのだろうということでした。ありていに言えば、「視野が狭かった」ということです。
英国人を含む巷の人ほど、筆者はマルクルさんに対し嫌悪感は抱いていません。(自己主張が激しそうなので、勝手に苦手意識は持っていますが。。。)ただ、よく考えれば、これらのことは結婚前から想定で来ていたはずだと思えてならないのです。
現女王・エリザベス2世の叔父であり、先々代の君主であるエドワード8世は、1936年に即位し、一年もたたずに退位し、弟であるヨーク公アルバートに譲位することを選びました。当時不倫関係にあった米国人女性のウォリス・シンプソンのことがあきらめきれず、自ら身を引き、同じく夫との離婚が成立したウォリスとともに生きることを選んだためでした。
譲位を受け、即位した「ジョージ6世」は、もともと体が弱かったうえに、半ば強引に王位を継承せざるを得なかったこと、さらにナチスドイツの猛攻激しい第二次世界大戦中の君主として戦火を耐え抜き、激務が重なったためか、即位15年目、50代の若さで薨去します。その後、後継者であったエリザベス2世が女王として即位し、現在に至ります。
ジョージ6世の母メアリ、そして妻でありエリザベス2世の母である「エリザベス(クイーン・マザー)」は、夫が早くして世を去ることになった原因としてウォリスを憎み、存命中に彼女を王族として認めませんでした。ウォリスの晩年になると、ようやくエリザベス2世が和解に向けて尽力し、死去した時には王族の一員として弔われています。
これらは、今から60年ほど前という、そう遠くない昔の話。
当時をよく知るエリザベス2世が今も君主として健在である英王室にあってウォリス・シンプソンの遺恨、つまり米国人を王族として迎えることへのアレルギーが今も残っているであろう可能性は、想像に難くありません。
まして、かつては大英帝国として黄金時代を築き上げた英王室が、ただの金持ちセレブではなさそうなこと、さらにやがてその王位を継承する兄に持つ王子と交際するのであれば、覚悟や自覚が求められてもおかしくはないのです。
その点、マルクルさんは、よくあるセレブの一族に嫁ぐくらいのイメージしかもっておらず、結婚してみたら想像以上につらく堅苦しい生活を強いられて、不満を募らせてしまったのではないか、と筆者は推測しています。
もちろん、嫁いできたばかりのマルクルさんに、王室側が不親切で失礼な態度をとっていたのだとしたら、王室にも責任はあるでしょう。
とはいえ、しょせんは「世界一の家族喧嘩」でしかない一連の出来事。お金になるからと言ってビジネスにするのではなく、まずは家族同士で解決すべきであろうと個人的には思っています。