皆さまご無沙汰しております!
自主的ホリデーをとっていたMALISです。
えー早速ですが、皆様のニーズはよく分かりませんので好きなことを書こうと思います。
「MALISの好きなこと、なーんだ?」
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「エネルギー」
というわけで、イラン原油制裁のお話です。クリプトカテゴリー風な話も出てくるから安心して全部読むように!
11月初頭から開始されたイラン原油への経済制裁。
よくわからない人は
(1)イラン核開発の疑念あり
(2)世界各国からイランに経済制裁発動
(3)核開発は停止されたとして経済制裁停止
(4)トランプ「制裁停止はやっぱ停止!」
(5)トランプ「イランの原油も輸入禁止な!」
(6)イランぶち切れ←Now!
とだけ理解してください。
ここで少し過去を振り返りましょう(遠い目)。
オバマ大統領が決定した(3)の経済制裁の停止 以降、日本を含むたくさんの企業がイランに投資してきました。
イランは産油国ですが、石油採掘の技術を全部自前で持っているわけではありません。海外の大手企業からの投資、技術支援は石油増産に必須。一方の海外企業にとっても、イランは大切な石油輸入元であり投資先だったのです。
ちなみにですが、イランも石油だけに頼ってきたわけではありません。
卵は一つのカゴに盛るな、を過去の経済制裁で痛感したイランは、積極的に経済の多角化を進めてきました。
その成果もあり、現在はOPEC諸国で一番多様な産業を持った国になっています。この辺りの政策の違いは、ベネズエラと命運を分けていますね。
さすが中東覇権を狙う国というべきか。。。
そんな最中に始まった、トランプによる経済制裁復活。実は、みんなが思っていたよりもゆるーく始まりました。
というのも、イランからたくさん石油を輸入している日本、韓国、台湾、中国、イタリア、トルコ、インドは経済制裁の除外国になったからです。
ようは、「おい世界のみんな、イランから原油輸入すんなよ?」といいつつ、こっそり特定の国にはOKだしていたんですね。
そりゃそうです。
突然原油輸入を全面禁止したら、
原油価格高騰!
→世界経済大混乱!
→アメリカ経済大混乱!
→俺の大統領2期目当選が遠のく!となるのは必至。できるわけがありません。
とはいえ!今回の制裁はイランにとって痛手であることに違いはない。
EUは今回の決定に猛反発し、EU企業がアメリカの経済制裁に従わなくていいように様々な法案を用意しています。しかし実際のところ、シーメンスを含む多くのヨーロッパ企業は既に投資を引き揚げているのです。リスクが高まれば撤退する。残念ですが、企業としては自然な行動です。
また、今回は経済制裁から除外された国も、6か月後の制裁見直しタイミングで「やっぱお前ら石油買うな」と言われる可能性大です。つまり日本もね。
その影響は、イラン経済に顕著に表れます。
経済制裁が解除された2016-17年、イランのGDP成長率は4.6%、翌年の2017-18年は5.2%と順調に経済が成長してきていました。
今回の経済制裁により、来年度GDP成長率は
マイナス1.5%
と予測されています。
その影響をうけ、インフレ率も20%を超えるのでは?との予想も。
ベネズエラの例をみてもわかるように、市民生活を直撃するのはインフレ率、そしてマイナスの経済成長による失業率の上昇。
結局、真っ先に犠牲になるのは一般市民なんですよね。
では、経済制裁に対してとれる対策はあるのでしょうか?
現在のところ、2つの話がよく出てきます。
① 特別目的事業体の立ち上げ
これは何かというと、EU+ロシア、中国が中心となって立ち上げているエスクロー機関で、イランと取引を行う事業者に新たな決済手段を提供するもの。これがあれば石油の輸出入もできる、と踏んでいます。
が、、、実際に設立できるか、設立できても機能するかは怪しいところ。私が会う専門家は誰もが「EUも強気なこと言ってるが設立すら難しいのでは」と話していました。
② 仮想通貨
やっとカテゴリーにマッチする話がでてきた!
イランの経済制裁回避手段の1つとして仮想通貨の利用は考えられています。イランも国家として仮想通貨を発行する考えは持っていますよね。
ただ、仮想通貨の流通量を考えれば、回避できるのはごくごく一部でしょう。
先日、Eurasian Nexus Partnersのエコノミストにお話を伺う機会があったのですが、仮想通貨は「長期的には経済制裁の効果を減少させる要因にはなりうる。だが今回の経済制裁には無力だ」とお話されていました。
では、イランはどうなっていくのでしょうか?
希望を言うならば、イラン経済のさらなる多様化、そして富の再分配の加速によりイラン市民の経済が安定し、、、なのでしょうが、そんなにうまくいくでしょうか。
一番考えられるのは、
◆中国、ロシアの台頭
でしょう。ベネズエラへのアメリカ経済制裁の際も、この2か国は投資を強化していました。アメリカにとってはライバル国の台頭を許すことになります。なんという矛盾、、、
もう一つ、あまりに強硬な状況が続いた場合、
◆イランの核開発が再加速
する恐れは高いでしょう。こうなると、なんのために経済制裁しているのかわからなくなってきてしまいますね。
アメリカにとっても、あまりいい未来は描けないイラン経済制裁の復活。
なぜこんなことをトランプは開始したのか?宗教上の関係やら色々な話はあるのですが、突き詰めれば
彼の支持者にイラン嫌いが多いから
に尽きるでしょう。
(彼の行動原理についてはこちらを)
これが民主主義の行く末なのかーー。
暗澹たる気分にもなるイラン経済制裁。仮想通貨の使われ方も含め、今後も動向が見逃せません。
というわけで、イラン経済制裁のお話でした!
アメリカでは「現在のイラン政権の崩壊まで経済制裁は続けるべきだ」との声があります。
しかし、イラン国民もバカではありません。
圧力に屈して政権交代した他国が悲惨な末路を辿ったことを、彼らはよく知っています。何があっても、アメリカに屈して政権を変えてはいけないーー。そう思っている市民は多い。
一方のアメリカも、威勢よく振り上げた拳のおろし先は見えていないのではないでしょうか。
核開発、中東和平、世界経済の安定ーー。
様々な要因が絡んだイラン経済制裁。
このままアメリカお得意の泥沼に陥らないことを切に願います。
MALIS
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