さて、イラン×仮想通貨から見る中東シリーズも今日でいったん完結!
前回の読み逃した方も大丈夫、おさらい↓を読んで楽しんでね!
<おさらい>
このシリーズの大きな主題は"なぜイランは仮想通貨発行を国として検討しているのか?"です!
・イランとサウジアラビアは超仲悪い
・アメリカはイランに武器渡す代わりに石油の利権をむさぼっていた
・しかしイラン革命以降は手のひらクルー
・ついでにアメリカ、サウジアラビアと仲良しに
・革命以降、イランはどうやら核兵器を研究しているらしい?
・疑惑がでたのでアメリカ経済制裁発動!
・おかげでイランは経済難で国民が困窮。。
前回記事:アメリカの介入は中東に何をもたらしたか?
前回は、困窮するイランに転機が現れるところで終わりました。
そう、オバマ大統領の登場です。
経済制裁に苦しめられてきたイラン。
しかし、2015年に核開発を制限するなら経済制裁を解除するという国際的な合意、通称イラン・ディールが締結されました。
主導したのはオバマ大統領。
なぜオバマ大統領はこのイラン・ディールを実現したのでしょうか?
ノーベル平和賞を受賞しただけあって、イランの事を真剣に考える優しい方だったのでしょうか?
まさか。
オバマ大統領がイラン・ディールを実行した理由は色々あるのですが、彼またはアメリカの興味という意味ではおそらく2つの理由から
(1) レガシー作り
辞める前にいいことやって功績のこしておこう!ってやつですね。まぁ悪いことではないですが、若干焦って実行した感が残るのはこのせいでしょう。
(2) 中東そんな興味ないわ
え、、?あんなに介入していたのに?
はい、気が変わったんです。
なぜ気が変わったかというと、シェール革命がおこったからです。
シェール革命とは、技術革新によってアメリカ国内で石油、ガスが超簡単に掘り出せるようになったこと。
2017年、アメリカは世界の原油生産トップに躍り出ました。
中東に頼らなくても石油もガスもとれるようになったので、中東和平とか興味薄れてきたわ、じゃーね!ってことです。経済制裁解除してアメリカの企業もイランに投資できるならいいやん?
パニックになったのがサウジアラビア。
あんなに味方してくれてたのに、どういうこと!?
しかも、シェール革命でアメリカがじゃんじゃん石油を生産したため供給過多になり、世界の原油価格は崩壊。サウジアラビアも安くしか原油を輸出できなくなり、経済的に大打撃を受けてしまいます。もちろん他の産油国も。
困ったサウジアラビアはロシアに近づいていくのでした。。。
ところがところがーーー!
2016年、衝撃のニュースが世界を駆け巡ります。
トランプが大統領にw
オバマ大統領は民主党、トランプ大統領は共和党。
すこぶる評判の悪いトランプ大統領ですが、一つだけ素晴らしい点があるとすれば公約をきっちり守るところ。その公約がいいかはともかく。どんな困難があろうとガン無視して公約をひたすら実行していく姿には感銘を、、、うけはしませんが凄いとは思います。
さて、その公約の一つにあったのが
イラン・ディールの撤廃
なんですよねぇ。。。ははは。
調子づいたのがサウジアラビア。
サウジアラビアで次期国王候補といわれているのは若いMohammad Bin Salman Al Saud。略称はMBSです。MBSはお若いだけあって絵に描いたようなイケイケです。
どのくらいイケイケかというと、王族をリッツカールトンに閉じ込めて尋問してお金巻き上げるくらいイケイケです。アメリカの最近のサウジ支持もあり過激になりつつあります。
さてと、イケイケはおいといて。
トランプ大統領の行動原理は、
コアなサポーターから支持を得られるか?
の一点に集中しています。
アメリカには、イランを攻撃してくれるなら投票してやるって層が一定数います。トランプはここを絶対に外しません。
ちなみに、イラン・ディールを一方的に破棄するのは国際法違反。が、トランプにとっては国際法よりも次の選挙が大切。
ということでシリーズ冒頭に話した、経済制裁復活が出てくるんですよね。
現在、イランの通貨リアルは暴落中です。
やっと経済制裁の背景を書ききりました。
雰囲気伝わったでしょうか?
さて、ここで本題のイランの仮想通貨発行計画について。
まだ計画は明らかにされていない部分が多いのですが、発行したとしてイランにとってのメリットってどれほどあるんでしょうか?
何とも言えませんが、、、メリットがあるとすると以下3点でしょうか?
(1)キャピタルフライト抑止?
イランではビットコインへのキャピタルフライトが相次いでいます。これを国が発行する仮想通貨に換えられるなら、少しはキャピタルの流出が抑えられるのではないか?
(2)経済制裁回避?
USドルでの売買禁止を仮想通貨を使うことで回避?相手国の都合もあるし効果のほどはどこまであるんでしょうか。
(3)ICOによる資金調達?
経済制裁をうけて困るのは外貨がたりなくなること。ベネズエラのようにICOで一時的とはいえ外貨が獲得できるのは大きいでしょう。
しかし正直にいうと、よくわかりません。
国が仮想通貨を出すなんてナンセンスなのかもしれませんし、私自身も勉強中。
ぜひみなさんの意見を聞いてみたいところです。
アメリカによる経済制裁は予定では来週から。
イランは本当にやるならホルムズ海峡封鎖すると脅すし、トランプ大統領はサウジアラビア等ともっと軍事協力しようね、と言いつつイランとも直接対談しよっかな、なんて言っています。
どうなることやら。。
それにしても、ここまで情勢が荒れているのはアメリカの求心力が落ちていることの現れと言っていいでしょう。
第二次世界大戦後、アメリカが世界を牛耳ったのは、軍事、情報、そして通貨を抑えてこれたから。そしてこのアメリカ一強体制は、確かに世界の秩序維持に貢献してきました。
仮想通貨の登場は、この体制を更に弱める要因になるかもしれません。
世界の力が分散化した時、その秩序を維持する準備は私たちにあるのか?
新たな時代における世界の秩序とは何なのか?
その世界を生きる覚悟はあるのか?
イランの仮想通貨発行計画は、仮想通貨の未来を信じる私たちに大きな問いを投げかけている気がしてなりません。
というわけで!ここに完結!
随分と長くなってしまいましたがお楽しみいただけましたか?
イラン×仮想通貨は、まさに今起こっている話でありながら、歴史もある複雑な話題ですよね。
日本のことを本文に書き忘れました!
日本はアメリカの同盟国ではありますが、中東情勢については歴史的に少し距離をとっています。資源のない日本にとって、中東との関係維持は何よりも大切。しかもイランと日本は割と仲が良く、経済制裁中も関係は維持してきました。
こういった態度を、どっちつかず、石油乞食と揶揄する声もありますが、私としては正しい判断だと思っています。どちらかに味方できるほど中東情勢は単純ではありません。そして白黒つけることが良い結果を導くとも限らないのです。
アメリカ同盟国としての立場を守りながらも、中東に関しては中庸な立場を貫き続けてほしいと切に願っています。
MALIS
イラン×仮想通貨シリーズ