今日(10/16)、国連環境計画のパートナー機関であるUNRP-DTU主催のWebセミナーが開催されました。
お題は“Blockchain and sustainable energy in development and cooperation.”
日本語だと「経済協力開発におけるブロックチェーンと持続可能なエネルギー」でしょうか。
登壇者一覧はこちら。
せっかく朝8時から参加したので、様子をお伝えします!
以前の記事でもお伝えしましたが、「持続可能なエネルギー」は、国連SDGsのテーマの一つ(SDG7)に取り上げられています。
エネルギー問題といえば、先日IPCCから衝撃的なレポートが出ていましたね。(日本で報道が少なく残念でした)
気候変動に対する世界的な枠組みといえば、直近では「パリ協定」なのですが、この協定は3.7度以上の上昇を阻止するために作られたもの。
今回のレポートでは、
- 2.6度上昇で壊滅的な被害が発生
- 経済被害総額 54兆円
- 気候変動難民 5000万人発生
と厳しい予測がされています。
持続可能なエネルギー利用を探り、気候変動を抑えていくのは人類共通の課題であり、アルマゲドンばりのプロジェクトでもあるのです。
今回のセミナーは、「持続可能なエネルギー」に向け、ブロックチェーンを活用した経済協力開発プロジェクトのショーケースを紹介するもの。
重要性、伝わったでしょうか???
では、最初の登壇者Gabriela Prata Diasさんから見ていきましょう!
トップバッターだからか、持続可能なエネルギーに関するプロジェクトの大きな俯瞰を提供してくれたプレゼンでした。
彼女は、
"気候変動対策に向け、電力P2P取引や省エネプロジェクトが多く立ち上がっている。しかし、共通してあげられる課題もある"
として5つの阻害要因を挙げていました。
特に今回フォーカスをあてていたのが2つ目のファイナンス。
実は、省エネ系事業って利益が出づらいのです。
なぜか?
省エネビジネスで提供できる価値って「コスト削減」に偏りがちですよね?
つまり「お客様がカットできたコストの中から〇%分の利益をいただきます」というビジネスモデルに陥りがちなんですね。うわー、儲からなさそう、、、と思った方多いのでは?
となると、必然的に
が課題にあがってきますよね?
さらに、小規模プロジェクトであるが故に
が大きくのしかかってくる。でかい組織だったら吸収できますが小さなビジネスでは辛い話。小規模商店でVISAの手数料支払えないのと同じような構造です。
これらが相まって、
即ちプロジェクトを大きくできない、という状況に陥ってしまいます。
こういった課題を解消するためにブロックチェーンが有効活用可能である!ということで期待を寄せるモデルを3つ紹介していました。
これ何かというと「電力会社に省エネの義務を負わせる制度」のこと。ヨーロッパのいくつかの国、あとオーストラリアでも導入されているようです。
この制度、電力会社は自分たちの顧客の省エネ推奨をしないといけないんですが、じゃあどの家庭がどれだけ達成できたの?全体ではどうなっているの?といった情報を随時集計しないといけません。もちろんスマートメーターの情報も必要です。
これ系は、とにかくトランザクション管理が面倒&手続きが面倒になりがち。この面倒なところを、ブロックチェーンで適切に管理していこうというもの。
そもそも業界内でも課題感の強いオペレーションですし、私も聞いていて理にかなっているなあと思いました。
ESCOってご存知ですか?
エネルギーサービスカンパニーの略称なんですが、省エネビジネスのど真ん中を突っ走るモデルでして「光熱費を削減してあげるから利益ぬかせて」ってやつです。
このビジネスモデルでは、光熱費削減に必要な設備やアプリケーションをESCO事業者が用意する必要があります。つまり初期投資として銀行からお金を借りないといけない。
しかし上でお伝えした通り、コスト削減分から利益を得るので利益率が低くなりがちです。
この問題を、ブロックチェーンを用いることでトランザクションフィーを低減。ビジネスを成立させようというもの。さらに初期費用にはクラウドファンディングを利用!?
むむ、、、もう少し詳しく聞きたいモデルでした。
以前、エネルギーの世界でも「分散化」がホットトピックとお伝えしました。
というのも、自宅にソーラーパネルやら、蓄電池、IoTやらが入ってきて、発電者と消費者の境があいまいになっているからです。
一方、北海道の地震発生時にも明らかになったように、電力は「発電する量」と「使う量」のバランスが取れていないと停電してしまいます。さらに、きまぐれ代表格の再生可能エネルギーが入ってきている今、この「需給調整」が重要視されています。
ここでいう「柔軟な需給調整モデル」とは、自宅にある色んな機器も含めて全体で電力需給を調整し、無駄なく使おう!そうしたらエネルギー消費を抑えられるし再エネもたくさん入れられる!、というもの。
そして、このモデルに必要となる大量のトランザクション管理と電気代/インセンティブ代の支払いをブロックチェーン上で行う、というもの。
ただ、Dias氏も仰っていましたが、そもそも電力網というのは国家を支えるインフラとしてごりっごりに中央集権型に作られているもの。さらに、電力需給調整情報は機密性が高いのでブロックチェーン上に載せるには工夫が必要。
3つのモデルの中で最も課題が大きそうだと仰っていました。
最後に、
“ブロックチェーンは生まれたばかりの技術で、(省エネ目指すプロジェクトに使うのに)電気を食うという矛盾もある。様々なブロックチェーンが導入され、どのように連携するのかインターフェースの問題も出てくるだろう。
そして、分散化vs規制という対立はエネルギー業界でブロックチェーンを適用する以上避けて通れない問題だ”
と締めくくられていました。
あれ、嬉々として書いていたら長くなりましたね(笑)
次回はもう少しサクサクと。
Power Ledgerも登場します!
MALIS
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