9歳の時のクリスマス。
サンタクロースが、クリスマスプレゼントを持って来てくれた。
母親が、サンタクロースにクリスマスプレゼントを頼んだと言っていた。
俺は、この歳でもサンタクロースの事を信じていた。
この日は、丁度学校が冬休みに入った日。
冬休みになった喜びもあった。
更に、サンタクロースがプレゼントでを持って来てくれる。
その嬉しさが重なって、物凄くはしゃいでいた。
でも、もしかしたら親がサンタクロースかもしれないとふと感じた。
だったら、家の中にクリスマスプレゼントがあるに違いない。
そう思って、探してみたが見つからなかった。
これでやっぱりサンタクロースは、本当にいると俺は確信した。
そして、夕飯を食べてこの後サンタクロースが来るのを楽しみにしていた。
俺は、毎日夜8時半に寝る様に親に言われていた。
この習慣を続けていたから、もう夜8時半には眠くなる。
でも今日は、サンタクロースが来るので頑張って起きていようとした。
でも、やっぱり起きてはいられず夜9時過ぎにはねてしまった。
翌日。
俺は、母親に起こされた。
サンタクロースがプレゼントを持って来たと言われて目が覚めた。
ベランダにあるから見てきなと言うので、ワクワクしながら向かってみた。
そうしたら、当時流行っていた6段ギアの自転車がそこにあった。
昨日は、ベランダにこんな大きくて目立つ物はなかった。
でも突然ベランダにあるから、本当にサンタが持ってきたのだと確信した。
俺は、嬉しくて朝からさっそく乗り回す事にした。
この自転車で、当時住んでいた三郷団地中走り回りに行った。
途中、友達にも合い猛烈に自慢してやった。
俺は、自転車を貰えた事が物凄く嬉しかった。
今までは、歩くと遠くて行けなかった14街区まで行く事も楽にできた。
今までは、歩くと遠くて行けなかった三郷駅まで行ってこれた。
今までは、歩くと遠くて行けなかった蛇山1周走破も出来た。
そして何より、ギアを6段まで入れるとスピードが40㎞位まで出る。
この車と同じ速度で走れる事が嬉しくてたまらなかった。
車道を走り、前の車と同じ速度でついて行けた。
この自転車のお陰で、俺の行動範囲は物凄く広がった。
この後、友達と隣街の吉川までツーリングにも行ってきた。
友達は、前から6段ギアの自転車を持っていて色々な道を知っていた。
そのお陰で、様々な場所を探検できた。
やっぱり、自転車があると世界が変わる。
行動範囲が広がると、今まで見た事の無い物が沢山見れる。
俺は、この自転車のお陰で人生が変わった気がした。
それから1週間後。
冬休みも終わりそうな時期になり、友達と少し遠くに行く事にした。
そこは江戸川土手。
我々は、江戸川土手に行き、下の歩道を走り、隣町の金町まで行ってきた。
そして、夕方。
江戸川土手を後にして帰る時、土手の上から自転車で降りる事にした。
最初友達が自転車で土手を下って行き、後から俺が下って行った。
この時、俺は何を血迷ったのかノンブレーキで土手から下ってしまった。
物凄いスピードが出る。
そして、下の道路でブレーキを掛けた。
でも間に合わず向かいの歩道に前輪が引っ掛かり吹っ飛ばされてしまった。
この時俺は、空中で1回転して歩道の花壇に着陸した。
花壇がクッションになり痛みが無かったのでスグに立ち上がれた。
そして自転車を見たら、真ん中から真っ二つに曲がっている。
この1部始終を、目の前の家のおじさんが見ていて助けに来てくれた。
そのおじさんは、俺が無事なのを確認してホッとしていたようだった。
でも自転車は、もう乗れない状態。
これでは、親に叱られる。
俺は、おじさんに泣きながら、この自転車を直せないか頼んでみた。
そうしたらおじさんは、多分直せないだろうと言いっていた。
でも、とりあえず庭に自転車を持って行ってやるだけやって見る事にした。
やり方は、木材を真ん中の鉄のパイプの上に当て、そこをハンマーで叩く。
この方法で、何度か叩いてみたがびくともしない。
やはり、直す事は無理があったようだ。
仕方なく、おじさんが俺の家に電話してくれて迎えに来てもらう事にした。
そして母親が、車で迎えに来た。
事の1部始終を聞いていた母親は、俺より自転車を見て悲鳴を上げた。
その時発した言葉は「この自転車5万円もしたのに!」だった。
俺は、持ってきてくれたのは、サンタじゃなかったのかとガッカリした。
でも、母親はそれどころではない。
俺が、5万円の自転車を壊してしまった事に失神寸前だった。
この後、自転車を車に乗せて家に戻って行った。
そして夜、父親に猛烈に叱られる事となる。
この事が原因で、もう自転車を買ってくれなくなってしまった。
次の日、友達に何で土手を事故無く降りられたのか聞いてみた。
そうしたら、ブレーキを掛けながら降りて来たと言っていた。
俺は、そりゃそうだよなと、自分の馬鹿さ加減が悲しくなった。