ツクヨミ「ちょいとお主…」
「はっはい!」
ツクヨミ「お主は月の裏側を見たことがあるかの?」
「裏側……。あっ確か先ほども言いましたが先日、中国の探査機《嫦娥4号》が初めて到達し、画像を公開しましたよね?」
⬇︎月面着陸映像
https://youtu.be/GwDYN5J5chA
「画像でなら…見たことはありますね!」
「あれ?でも、ふとした時に月を見たら意識していないだけでその時が裏側ってこともありますよね?」
「……ん、でもそうなるとまず裏側という基準はどこから来ているんだろう?回っているなら表も裏もないですよね…」
ツクヨミ「ふふふ…お主たち地球人は、地球上におる限り肉眼で裏側を見ることは不可能なのじゃ」
「えっ…不可能?」
ツクヨミ「そうじゃ、月は常に地球に同じ面を向けながら、地球の周りを回っておるのじゃ」
「常に同じ面を?……では、月は地球の様に自転していないのですか?」
ツクヨミ「しっかりとしておるぞ、公転速度と完全同期しながらな」
「……完全同期」
ツクヨミ「うむ、お主たちが兎に見えると例えておる模様の見える側が表とするならば、常にそちら側を地球に向けた状態で地球の周りを回っておる」
ツクヨミ「じゃから、地球上からいつ見ても兎がおるのじゃ」
「すごい…自然物なのに公転速度と自転速度が完全に同期しているなんて……少しでもズレていたら、長い年月をかけて裏側が見えることになるのにそれもないなんて、精密すぎる!宇宙の神秘を感じます……高まるぅ!!」
ツクヨミ「……(こやつたまにテンションぶち上げてくるのう)」
「確か地球から月までの距離は、約38万4000kmでしたよね?」
ツクヨミ「ほう、正解じゃ よく知っておったのう」
「(ふふんっ)これぐらいは知ってますよ!」
ツクヨミ「では、どうやってお主たちはその距離を計測したのじゃ?」
「計測……確かにどうやったんでしょう?宇宙空間を?メジャーで?そんなまさかなぁ」
ツクヨミ「お主たちの言うところのアメリカの《アポロ計画》そしてソ連。今のロシアの《ルナ計画》この計画の中で月面に鏡が設置されたのじゃ」
「か…鏡」
ツクヨミ「うむ、いわゆる反射鏡じゃ、そこへ地球上からレーザー光線を発射し、計測しておるそうじゃ」
「なんとまぁ…ツクヨミ様は地球での事すらもご存知なんですね」
ツクヨミ「そうじゃろう、そうじゃろう!褒めても月の石ぐらいしか出ぬぞ」
「いや、割と欲しいですよそれ……」
ツクヨミ「地球から月までの距離といえば、昔は地球上から肉眼で見える月も現在よりも大きかったんじゃぞ」
「つまり、小さくなってると言うことですか?」
ツクヨミ「まぁそうとも言えるが、決して月自体が何かに削られて小さくなっておるわけではないのじゃ」
「なのに今は昔よりも小さく見える……」
ツクヨミ「現在、月は年間平均で3.8センチずつ地球から遠ざかっておる」
「ええ!?まさか…移動してる?」
ツクヨミ「ふふふ…自我を持って移動しておるわけではない」
ツクヨミ「月が地球の周りを回っておると言うことは、当然、遠心力というものが発生する、その他様々な要素により毎年月は地球から離れていっておるのじゃよ」
「で…では、いつかは月は……」
ツクヨミ「そうじゃな、いずれは地球とはおさらばせにゃならん時が来るかも知れぬのう」
ツクヨミ「まぁ…その頃にはお主たちも地球上にはおらぬじゃろうて…くふふ」
「(ごくり…)」
ツクヨミ「しかしまぁ、お主たちの科学力の発展も本当にめざましいものがあるのう」
「ありがとうございます!今回、嫦娥4号は裏月面へ着陸しただけでなく、探査機《玉兎》にじゃがいもの種子や蚕の卵なども乗せて着陸しています」
「しかも種子からはちゃんと芽が出たんです!あまり騒ぎになってませんが、これは偉業ですよ!月面で植物が芽吹いたのはおそらく初のことでしょう!!」
「高まるぅ!」
ツクヨミ「そ…そうじゃな…」
「しかもですよ!蚕が生まれ、地球に比べてうっすぅーーーい大気の中で呼吸し、その芽を食べる!そして成長するとなると、これはもう想像するだけで情熱が止まらないですよ!」
ツクヨミ「お主たち日本民族も負けておられぬな」
「もちろんです(フンスッ)」
ツクヨミ「やだ…なに鼻息すごい…」
ツクヨミ「では、最後に月の成り立ち、つまり誕生について話しておこう」
「わくわく」
ツクヨミ「率直にお主は、月はどうやって誕生したと思うておるのじゃ?」
「そうですね、まだ柔らかい地球だったときの地球の自転による遠心力でぶにゅと分離した説や…」
ツクヨミ「ぶにゅって…」
「月は地球とは全く別の時期と場所で誕生し、飛来して地球の引力に引き寄せられ今の位置に落ち着いたとする説もありますよね、個人的にはこの説のまるで自然物じゃないかのような動きをする月と辻褄があう感じがして面白くて好きです」
ツクヨミ「我もその説は誠に面白いと思うぞ、まるで地球を観察するための中継基地のような位置、そして自転と公転の完全同期、果たして本当に自然物なのじゃろうか?」
ツクヨミ「なぁ?そう思わんか?」
「エエ、イイセン イッテルト オモイマス」
「確かにそう考えると月って……えっ誰!?えっ!?」
ツクヨミ「どうかしたのか?」
「えっ…あれ誰か他にいた様な…」
ツクヨミ「まぁ現在、お主たちの研究じゃとジャイアントインパクト説いうのが有力なのだそうじゃ」
「くらえ!ジャイアントインパクトォオ!!」
ツクヨミ「そろそろ、その急にテンションぶち上げるのやめてたも、情緒おかしなるぞよ」
ツクヨミ「つまり、柔らかい頃の地球へ火星ほどの星(テイアという名前がついておる)が飛来し、斜めに地表を削ぐような角度で衝突、柔らかい地球は地球汁ブシャァァアじゃ」
「地球汁…」
ツクヨミ「その宇宙空間へと舞い散った地球汁が時間経過とともにまとまったものが《月》というわけじゃ」
「地球汁ブシャァァア……」
ツクヨミ「とまぁ、こんな感じかのう長々と語らせてもらい感謝するぞよ」
「ブシャァァア……」