今回話すのはそんななる?
あぁ…そんな感じになるんですねって話です。
小学生低学年頃の話、記憶が朧げぇ〜な部分もありますが、思い出しながら書いてみようと思います。
小学生の頃、とにかく生徒たちを走らせるのがすごく多くないですか?
やれ短距離走だの長距離走だの……。
でも割と持久走は嫌いじゃありませんでしたよ。まぁこの話にはなんの関係もないんですがね(笑)
その日は、楽しく運動会のリレーの練習の日でした。おそらく、初夏だったでしょうか?いやそれとも夏の終わり頃?
小学生の頃の記憶なんてこんなものです。ジリジリと暑かった記憶はあまり無く、風が心地よかったような記憶も蘇ります。
ただ走るだけじゃなく、リレーと言うことで大事になってくるのがバトンパス。だいたい小学生なんかだとバトンパスがうまくいかなくてぽろっと落ちることが多いもんですから先生たちも気合が入るってもんです。
そんなこんなで、生徒2クラス分ほどの生徒を運動場に整列させ定番の体操座り。ひと学年6クラスから8クラスあるマンモス校でした。
堂々と前に現れたのは
パワフルおばちゃん先生
黒縁の度が強そうな眼鏡をかけていて、黒髪で肩ぐらいの長さ、体型は失礼かもしれませんが、よくあるおばちゃん体型。
THE 中肉中背
結構名物先生でした。
そんなおばちゃん先生がかなり熱を入れたバトンパスのお手本を見せてくれることになったのです。
「さぁ!皆さん!いいですか!?行きますよぉ〜!」
そうやって身振り手振りを大きくしてバトンを受ける前の状態を構えて見せてくれるおばちゃん先生。
「はい!こうやってェ〜受け取ったらァ!利き手に持ち替えながら…走り出すゥ!!」
このおばちゃん先生はとにかく元気はつらつで空回りしてる印象の先生。
元気すぎて生徒ですらついていけない。
置いてけぼり。
そうやって走り出したおばちゃん先生ですが、一歩目を踏み出した瞬間……。
どこからともなく
バチンッッッ!!!
と大きな音がしたんです。
そのおばちゃん先生を見ていた生徒たち大体60人から70人ぐらい生徒たちが、大きな音はどこからしたのか全然わかりません。
その大きな音と同時におばちゃん先生は「あ″ぐっっ!!」っとうめき声のような声を出しながら、「…ふぐぅ……」とその場になだれ込むように倒れました。
そう、おばちゃん先生のアキレス腱が派手にブチ切れたんです。
その大きな音と同時にその張り切っていたおばちゃん先生は、運動場の乾いた地面へと体を預けました。
そりゃもう、戸惑いますよね。
まず、そもそも小学校低学年の僕たちにとってアキレス腱って言うもの自体があまりなじみがないです。もちろん準備体操でアキレス腱伸ばしますよーなんて言って伸ばしてますけど、アキレスケンなのかアキレスとケンなのかすら曖昧ですし、そこまでアキレス腱に対して深く考える事って無いですよね。あぁ、この場所はアキレス腱って言うんだな〜ぐらいの認識。
どんな働きをする部位なのかなんて知ってるわけもなく、知ろうともしません。
なのでそのバチンッッッという大きな音と共に、うめき声を発しながら倒れていくおばちゃん先生の状態を見てもまずわからないんです。ああこの人はアキレス腱が切れて倒れているんだっという風にはならないもんです。
最初に僕たち生徒の間に流れるのは沈黙と蝉の鳴き声ぐらいなもんで。
誰1人としてそのうずくまるおばちゃん先生の下へ駆け寄った生徒はいなかったことを覚えています。
今考えると、僕たちもまず第一に先生が大丈夫かどうか?ではなくて、何が起こったかわからないというのが1番頭の中を占領してしまっているんですよね……。
何ならバチンッッッと言う大きな音とともに倒れ込んだものだからどこからともなく狙撃でもされたのか!?と思う少年少女たちです。
その後、そのおばちゃん先生は、もう1人の先生が駆け寄ってそのまま肩を貸されながら退場して行きました……。
おばちゃん先生にあの時何が起きたのか後で僕たち生徒は聞かされることになるんですが、そこで初めてアキレス腱が切れた。
あの先生は……いや、あの人間はアキレス腱が切れた人間だったんだと言うことを知るんです。
それ以降、身近でアキレス腱が切れる瞬間の人間を見ることなんでめったにありませんから、なかなかに衝撃的ですよね。おそらくあの場にいた生徒たち全員が初めて見るアキレス腱が切れた人間の映像なのですから。
この出来事を経験してから、頭の中に残っているのは人間ってアキレス腱が切れるとあんな風になるんだ……。
そしてあんな大きな音が鳴るんだ……。
というかそもそもアキレス腱って切れるんだ……。
(バチンッッッって、ルフィがゴムゴムのピストルってやったあと腕が戻ってきた時の音やんけ……。)
と、頭の中に叩き込まれたわけですから。
それ以来、準備体操のアキレス腱を伸ばす体操はすごく念入りにやるようになった覚えがあります。
どうしても、おばちゃん先生が鈍いうめき声と共になだれ落ちる映像が脳裏をよぎりますから……。