冬の時代と噂されるいまの相場ですが、連邦破産法第十一条(Chapter 11)の申請によるFTXの破産、そしてその中で発生したFTXアドレスのハッキング、FTXCEOの辞任、ここ1週間で起こった出来事はLUNAショックのそれを超えるほどのものになっており、暗号資産と伝統的な金融の間にさらなる規制の強化を要請する未来が色濃いものになってきました。
この事件はまだその終息がついておらず、これから多くの構造的変化が生じていくと思われます。
一つだけいえることは、暗号資産というものが非常に早く情勢が変化し、これまでの金融よりも高速にことが進展していくことでしょう。ここ一年で起こった様々な暗号資産関連の事件は、ここ1世紀あたりに人類が起こしてきた金融ショックのほとんどのケースで見られたことのように思えます。
※LUNAショックを超えるとのことですが、実際のところ破産が及ぼす影響はLUNA暴落よりは小規模だとの意見もあります。
この一連の破綻を一言で表すならば、衝撃的との単語だけで十分といえそうです。Coindeskが明らかにしたところによればこの破綻の前、FTXのバランスシートには146億のうちの50億ドルほどがFTTかその担保であったことがわかりました。
2022年の前半に詐欺的プロジェクトとして崩壊した3ACやLUNAに対して、FTXは無事に生き残ることができました。そのうえ、SBF氏はBlockFiやVoyerger、LayerzeroやAptosなどに対して資金調達や貸し付けなどを行い、米国SECに対して暗号資産をアピールし業界全体の救世主ではないかという見方がありました。
そのようなカリスマ的リーダー率いるFTXが市場から消滅したことは非常に大きい意味をもち、リーマンショックの再来ともうわさされています。そして、この騒動の中で今後展開を見せそうな人物の一人がバイナンスのCEOであるCZ氏です。
両者はかねてから関係が良好とされてきましたが、FTXの危機を見抜いたCZ、バイナンス側は、Terraの事件を引き合いに出しFTTの売却やFTXの買収案を出した上に、それを撤回するということを行いました。
これはSBF氏からしたらもちろんのこと、米国のユーザーに対するバイナンスからの攻撃ともとらえることができます。このような事態が、今後バイナンスに波及し、最終的にはバイナンスも危機に陥るかもしれないことまで予測できます。
事態は破綻だけで終わらないというのが、現実のようです。事実は小説よりも奇なりということで、破綻後のFTXから多額の資金が流出していることが判明しました。
上記ツイートによればFTXがハッキングされたという情報もあります。これが本当ならばアプリケーション自体が危険なものということになります。そして、現在のところ、ハックされた多くのトークンは以下のアドレスなどに送られているようです。
上記を見ればわかるように突然0ドルだった残高から3億ドルほどの資金が流れ込んでいます。ただこのような事例は過去を見てもすぐに捕まっているとのことで、時間次第で詳細がわかるでしょう。
今回のFTX破綻は、リーマンショック時のようなインパクトを持っているとする見方があります。これからシンプルに言えることは現在のアメリカ合衆国の終焉が近いことかもしれません。もちろん、アメリカ大陸にあるアメリカ合衆国の終焉であり、それは形や名称を変えて再び隆盛することは考えられます。しかし、ここ20年ほどで勢いついてきたアメリカIT産業をはじめとするバブルがいよいよ終わりを迎えつつあるのかもしれません。
もちろん、これが終焉の契機かどうかは定かではないが、株価の下落状況やCPIの下落、ドルインデックスの市況などをみると、どこかで山を越えなければ不自然に思えていたことが、実際に山を越え始めたという現象が各所で見られています。
暗号化やピアツーピア取引、ブロックチェーンやトランザクションの高速化など多くの技術的側面が暗号資産を形つけてきましたが、コインやトークンの金銭的価値を抜けばその未来は非常に明るいと言えます。これからの10年において今のクリプト事件が意味するものは何なのでしょうか。以前このブログではSBF氏について最前線考察を行ったことがありました。そのころはまさにFTXにとっては上昇期であったようにも思えます。
悲劇的なことばかりが起きていますが、時間とともにそれらは変わっていき、やがては無視することのできない存在になっていくことは確実といえるでしょう。しかし、現在では暗号資産だけが苦戦し前進しようとしているわけではなく、多くのテクノロジーがさらなる進化をしようとしているのもあり、ブロックチェーンや暗号資産だけではないテックへの「長期的な」関心が重要になってくるのではないかと思いました。
一方で、アメリカの暗号資産市場の規制にまだ問題があることがこの破綻である程度裏付けられ、日本の暗号資産規制(Mt GOXなどで経験したこと)が生かせるのではないかという声とともに、日本の同業界に対してチャンスとの見方もあります。