ジンバブエ中央銀行が、金に裏付けられたデジタルトークンを発行し、5月8日から投資家に販売する予定であることが報じられました。このトークンは、個人には最低10ドル、企業やその他の団体には最低5,000ドルで販売されます。金に裏付けられたデジタル通貨は、米ドルと現地通貨の両方で販売されますが、現地通貨の価格はインターバンク・ミッドレートよりも20%高い価格設定となります。投資家は5月8日からオファーに参加することができます。
このような金に裏付けられたデジタル通貨は、金融市場におけるデジタル資産の新しい形態として注目を集めています。ジンバブエ中央銀行は、通貨のインフレーションや価値の低下に悩む同国において、このような新しい資産クラスを通じて、国内外の投資家から資金を誘致しようとしているとされています。
ただし、ジンバブエは過去に通貨のインフレーションや価値の低下に悩まされた経験があり、その経緯から、金に裏付けられた通貨を発行することで、インフレーションリスクを抑えることができるという期待があります。また、金は世界中で普及している保有資産の一つであり、その価値が安定していることから、金に裏付けられた通貨は、市場参加者から安全性の高い資産として認識されています。
今後、金に裏付けられたデジタル通貨が、他の国々でも注目される可能性があります。しかし、このような通貨は、金の価格変動リスクや通貨の価格変動リスクに依存することがあり、それらのリスクに対する適切な対処が必要とされます。
このデジタルトークンの導入は、ジンバブエの経済状況が依然として不安定であることを反映しています。ジンバブエでは、ハイパーインフレーションや外貨不足などの問題が続いており、現地通貨の価値が急落しています。このような状況下で、金に裏付けられたデジタル通貨を導入することで、ジンバブエ中央銀行は、通貨価値の安定化を目指し、現地通貨の信頼性を高めようとしています。
金に裏付けられたデジタル通貨は、その名の通り、金と同等の価値があるとされており、ジンバブエの経済状況の不安定さに対して、投資家からの需要が見込まれています。ただし、このトークンの販売価格は最低でも10ドルと高めに設定されており、一部の個人投資家にとっては手が届きにくい価格になっているため、注目されるのは大手企業や団体などの需要でしょう。
金に裏付けられたデジタル通貨の導入には、ジンバブエ政府や中央銀行の判断が重要な役割を果たしていますが、これには技術的な側面も関わっています。デジタル通貨の導入には、ブロックチェーン技術を用いることが一般的であり、この技術によって、トークンの所有権や取引履歴などが分散型の台帳に記録されることになります。これによって、トークンの透明性やセキュリティが向上し、不正な取引や二重取引の防止などが期待されます。
最近では、金やその他の貴金属に裏付けられたデジタルトークンの導入が世界中で注目されており、中央銀行がデジタル通貨を発行することも増えています。今後、ジンバブエの金に裏付けられたデジタル通貨の導入が、他の国々や地域でも広がる可能性があるため、注目していく必要があります。
ジンバブエの通貨であるZWLは、米ドルに対して1,001ZWLで取引されているが、同国のストリートでは一般的に1,750ZWLで交換されています。これは、ジンバブエが10年以上もの間通貨の不安定性と高いインフレ率と闘ってきたためです。
2000年代初頭から、ジンバブエはインフレに苦しんでおり、最終的に2008年には、日次のインフレ率が約80億%に達し、通貨の価値が急落しました。その後、2009年にジンバブエは米ドルを採用し、通貨の不安定性を解消することを目指しました。これにより、外貨準備が増加し、物価は安定しましたが、一方でジンバブエ経済は外貨に依存するようになり、貿易赤字を抱えるようになりました。
その後、2016年にジンバブエ政府は、独自の通貨である「ボンド・ノート」を導入し、米ドルと等価とされました。しかし、ボンド・ノートは実際には米ドルと同等の価値を持たず、通貨の価値は低下しました。その後、政府は2019年にジンバブエドルを再導入し、ボンド・ノートを廃止しました。しかし、昨年、政府は再び米ドル使用に回帰し、上昇する物価を抑制するために、通貨の流通量を制限するなどの対策を取りました。
このような経緯から、ジンバブエは通貨安と通貨価値の安定化を目指しており、金に裏付けられたデジタル通貨の導入が、通貨の価値の安定化につながると期待されています。