Wiredの新刊である「As a TOOL vol.45」が今月発売されている。一通り目を通して思ったことは、ツールは手段であり、それは目的と不可分であるということだ。
個人的に目を引いたものはいくつかあるがそれに関して紹介していきたいと思う。
水もなし、電気もなし、配管工事もなくていいトイレといえば何か?それはボットントイレだろうというかもしれないが、惜しい。新しく生まれたコンポストトイレはバイオテクノロジーを利用しており、下に微生物を含んだチップ剤を入れるだけで完結する。なんと、トイレとしての要素はチップ剤だけであり、どこにどのくらいの大きさで設置してもいいという。
トイレという常識を破るこの新しいアプローチは、まさにツールとしてのトイレであり、レゴブロック的にコンポーザブルできる要素がある。
ゴミ箱はただのゴミ捨て場だとしか認識していなかったが、そうでもないらしい。ツールの最も面白い点は、いままで責任があった物質的な存在に対しても「自由」を保証する点だろう。冷蔵庫は冷えていてくれさえすればいいし、パソコンが踊りだしたら憤りを覚えるだろう。現代のほとんどすべての「道具」には責任があると思い込んでいる。そんな道具1.0から、道具2.0に昇華させるヒントをくれるのがこれだ。
このごみ箱は、バイオテクノロジーを利用したもので、生ごみを詰めてぼかしを入れるだけで、ごみを分解処理することができる。つまり、いちいちゴミ捨て場に足を運ばなくても、キッチンの2Lペットボトルほどの大きさの筒に詰め込むだけでいいということになる。そして、そのごみ箱から出てくる水はたい肥に与える飼料として機能する。
電気も労働もいらないこのCOOLなツールはとんでもない可能性を秘めている。
気候変動への絶望感はどのようにヘッジするべきなのかを述べている項目であり、ひとつには「都市のツール化」を挙げている。その例はいくつかあるが、水成都市、共生都市、遊牧都市、火成都市、時制都市、対話都市などを挙げている。
自然が織りなす循環をテクノロジーと迎合させることで、ダイナミックな都市を実現している。それは何かの目的に突き進ませるようなものであり、見たことなかった新世界を地球上に生み出している。
他にもVRをコミュニケーションツールとしてとらえていたり、フェムテックとして性行為をどう楽しむかというポイントに注力したラブツール、ニコチンフリーの健康なたばこ、吸水性と消臭性にすぐれた女性のための下着、ユニセックスな緩いシルクパンツなどがある。
電力が尽きて、インクが干上がり、鉛筆の芯がなくなって紙すら消滅した世界でも何かを書き残したいと思ったとき、どうやって世界に記録を残していくのか悩みは尽きないが、方法はある。そんなツールも紹介されている。
どれもこれもが人間に対象を当てており、最終的にはその眼先に「自由」という二文字が垣間見え、ツールが織りなす新地平を取り巻く。
自由を目指す人類がどこへ向かうのかは全く想像できないが、現代に頭角を現した「テクノロジー」という肥えきった巨人をツールというコンテキストで介抱し生分解していく様は見ていて痛快である。
ツールの存在意義は何を成し遂げるかの通過点にあることだろう。まるで目的と現在地をつなぐAPIのように機能し、それらはマイクロなものからマクロなものまでいろいろある。集団生活を考えるうえで目的を設定するならば「シティ as a TOOL」だろうが、「爪切り as a TOOL」ならば個人的な欲望だけしか目線にはない。
目的とは言ってもそれは別段大きなものではなく、小さなものもまた目的であり、そのようなマイクロパーパスへのアプローチにツールを使っていけばいいのではないかと思った。