今から300年前、インドとイギリスは今とは全く違う関係性にあった。徐々にその勢いをつけるインドに対し、物価高や戦争で常に疲弊しているイギリスという構図はその時代には想像もできなかったはずである。
しかし、21世紀になってまったく想像もできなかった話が現実のものになろうとしている。こんな話をしても、イギリス人はインド人に何も思うことはないだろう。しかし、面白いと思わないだろうか?いままで完全に上位にあったような宗主国が、植民地であったインドと真逆の経済成長を見せているということにである。
確かに経済成長率や人口増加だけが全てではないが、英国の栄華はどこへ行ってしまったのか?と頭をひねる人も多いはずである。盛者必衰とはいうものの、ここまで世界共通でたけるものもいつかは衰えるとなると、逆に恐ろしい呪いでもあるのかと思うようになってくる。
日本も現在、絶頂期を抜け衰退期に入ったかのような世間認識があるが、イギリスをはじめとする欧州各国の衰退に、アメリカの治安悪化や財政問題の深刻化をみると、どれだけうまくやれた国でも、最終的には相対的にひどい国になってしまうと言い切ることができるのではないだろうか?
もちろん、それは悪夢の始まりではないが、「相対的に見れば」、明らかにひどい状態になることは避けられないものだということである。よく、パキスタンやインド北部などの大気汚染、レイプ天国、水質汚濁にまみれた地域の惨状を見ると「日本に生まれてよかった」などのコメントが見受けられるが、確かに日本に生まれてよかったのかもしれない。
しかし、それには一言抜けている。それは「今の日本に」である。今の日本ではなかったら、もしかしたら100年後の日本だったら、現在の英国のように電気代か食費を選ばなければ生活できない時代になっているかもしれないからだ。
そして、この英国がたどってきた問題というのはほとんどすべての成功国に当てはまっている。今考えれば、毎年通貨価値が下がり続けているトルコですら、昔はローマ帝国の中心であり、オスマン帝国など巨大な国があった地域である。しかし、今ではそこまでの影響はない。エジプトも、昔はすごかったのかもしれないが、いまではどちらかといえば後進国に入るような国だ。
人生は運ゲーという言葉があるものの、それは国にも当てはまり、なんと驚くことにこの世に二回覇権的役割をした国はない。確かに中国や欧州ではこれまで大量の国家が誕生してきており、それらを考慮すれば別段国が一度オワコンになっても新しい国家を同じ地域で上手く展開させることは可能だというかもしれない。
それは一理ある仮説だが、それらは大半が地域覇権的な役割を持ったミドルパワー国家レベルであることが多い。モンゴル帝国以降、この地球上ではナンバーワン的存在の国をほかのほとんどすべての地域が真似をするというスタイルを続いており、そのナンバーワンに君臨することで覇権国家の称号を得てきた。
現在はアメリカ、そして中国ともいわれているが、なんにせよ一度世界の見本になった国が再び栄えるのには非常に時間がかかる。そして、この覇権国家的役割を二度になった国は、これまでのところ出てきていない。
つまり何が言いたいのかといえば、イギリスはもう覇権国になることはない一方で、インドはその可能性が残されている、そして再びイギリスが成功するにはとてつもなく長い時間がかかる可能性が高いということだ。